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interview

“蔵”という空間は、
子どもの創造力を育む

ミサワホーム総合研究所
富田晃夫さん

居室とは別に設けられるミサワホームの大収納空間「蔵」。
「蔵」は単に便利な収納としてのみではなく、
子どものクリエイティビティを刺激し、そのリソースとなる空間だ。
季節のモノをしつらえ、四季を楽しむことによる感性を育む。
父母の愛着のモノにより、子どもの好奇心を刺激する。
「蔵」という大きな空間が、子どもの世界を広げていく。
その意味を、ミサワホーム総合研究所の富田さんに聞いた。

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  • リビング「蔵」は、子育て期に活躍する?
    子育て家族にとって、「蔵」があることで暮らしが大きく変化します。まず、子育て期の家族にとって大きな問題のひとつに、「増え続けるモノをどうするか?」ということがあります。とりわけ0~6歳児くらいの時期は、母親と子どもは離れられないので、リビングにはベビーベッドにオムツにオモチャと、子ども用品が増える一方です。コントロールできないほど散らかってしまいます。
    そもそもリビングというのは大人がくつろぐ場所で、子育てのスペースとしては想定されていません。ママにとっては子育てで忙しいのに、雑然としたリビングはストレスフル。それに、雑多なモノの散乱は、子どもたちに予想しないアクシデントやけがを引き起こします。私たちの調査では、家庭内の事故の約4割がリビングで発生していました。家族の成長に適した空間を保つためには、リビングにあふれるモノを退避させておく受け皿としての、“余白のスペース”が必要なのです。リビングに「蔵」があれば、子育て道具や子どものオモチャを片づけることができます。来客があっても、「えいやっ」としまえるのです。
  • 「蔵」があることで、子どもの感性が豊かになる?
    現代の住まいは一年を通して快適になっていますが、昔は気持ちよく過ごすために、季節ごとに建具も変えたりしていました。夏はすだれをはめ込んだ簾戸(すど)、冬は障子を両面に貼った太鼓障子などと使い分けていたのです。また、日本人は数寄屋建築に代表されるように、シンプルな住まいをつくりあげ、四季を愛でてきました。春夏秋冬を感じ、楽しむことで日本文化が熟成されたとも言えます。
    「蔵」を利用して、季節ごとにインテリアを変えていく。端午の節句やひな祭りなどの祭事を行う。時にはカーテンなどを掛け変えてみる。そんな暮らしのなかで親子が対話し、子どもの興味を広げていくことが、子どもたちの感性を豊かにします。また、モノを大事に使い続け、生活を楽しむことを身につけていくのです。
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  • 子どもたちの創造力の源となる「蔵」とは?
    「蔵」は、単に便利な収納というだけではありません。家族のつながりを豊かにする空間です。そこには親が大切に使ってきたモノ、たとえばギターや楽譜・書籍など、自分の由来・アイデンティティのよりどころとなるモノが収められています。子どもはそのモノを見て、親が音楽をやっていたのだと知る。同じ書籍を通して、こんな世界が好きだったのかと知る。そこに会話はありません。子どもたちは自ら発見し、興味を持ち、そのことに対し学ぶのです。父母が経験して培ってきた文化を共有し、継承していくのです。
    そして、そのことは家族のつながりを育んでいきます。日本には付喪神(ツクモガミ)といって、モノに魂が宿るという考え方があります。モノに精神性を認め、言葉ではなくモノを通じて理解を深めるという文化です。「蔵」に自分を支える思い出のモノを残しておくことで、そのモノたちが子どもたちのクリエイティビティのリソースとなるのです。
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  • 「蔵」が子どもたちのクリエイティビティを刺激する?
    「蔵」の天井高は1.1~1.4mです。リビングなどの天井を、通常の天井高に蔵の高さをプラスして高くすることができます。天井の高い開放的な空間は、住まいに「余白」をもたらしてくれます。昔の日本家屋では、電気のような明るい光源はなかったので、柱や梁の影になった見えない部分に恐れを抱き、物の怪の類がいるのではないかと想像力を逞しくしました。
    私たちが300人の政治家・財界人・作家・芸能人の生家を調べたところ、生家は共通して天井が高かったということがわかっています。余白が想像力や自由な発想を育むのかもしれません。また、人のクリエイティビティを発揮させるには、モードチェンジというのが重要で、たとえばミケランジェロなどは、こもり空間で思考し、開放的な空間で創作していたといいます。「蔵」のもたらす余白とこもりが、子どもたちのクリエイティビティを刺激します。
  • 「蔵」は今後、どのように進化するのでしょうか?
    1994年に「蔵」は、当時の役員の言葉をきっかけに生まれました。役員は陶芸を趣味としていて、所有する多くの作品をしまう納屋的な空間が欲しいということだったのです。蔵は趣味のため、暮らしのため、日本の文化を楽しむために、機能してきました。最近では、備蓄の目的という使われ方も増えています。江戸時代の長屋で暮らす人たちは、モノをあまり持たずに、大事なものは共有していました。それを支えたのが地域の共有財産としての「蔵」でした。
    これからはコミュニティで支え合っていく、共助という考え方も見直されるでしょう。「シェア」という考え方です。たとえば、バーベキューセットや餅つきの道具などはコミュニティで共有する。モノをシェアすることで、コミュニティがつながっていくのです。そうすることでコミュニティが活性化し、人と人がつながり、元気に暮らせるのだと思います。

    ※蔵は居室として利用できません。
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富田晃夫さん
富田晃夫さん
(株)ミサワホーム総合研究所 フューチャーセンター 市場企画室室長、協創実験プロジェクトリーダー、ホームOS推進プロジェクトに所属。首都大学東京客員研究員。ミサワホーム商品企画部にてマーケティング及び商品企画を担当し、ミサワホーム「4つの育む」の骨子をまとめ、世代の学び空間手法「ホームコモンズ設計」の企画開発などを手掛ける。書籍「HEART and EARTH 未来の選び方」(著:ミサワホーム“MISAWAデザイン未来塾委員会”)に携わる。



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