トップ - 暮らしのプロたち - 馬場純さん

interview

カメラを持って、旅に出る。
そして、建築をデザインする。

CDOシニアデザイナー
馬場 純さん

旅とカメラが趣味の建築家、馬場純さん。
毎年、ヨーロッパに建築を鑑賞する旅に出かける。
美しい建築があると知れば、電車やバスを乗り継ぎ、どこまでも行く。
馬場さんは、センチュリーデザインオフィス(CDO)※のシニアデザイナー。
2013年にはリゾートホテルの設計でグッドデザインを受賞するなど、
住宅だけでなく、活躍の場を広げている。
今回は馬場さんの自宅に伺い、美しい住まいの意味を聞いた。

※「世紀を超えて愛されるデザイン住宅」をテーマに掲げるミサワホームの精鋭デザイナー集団。

  • 写真2

    2015年/下のリフォーム当時と比べても変わりない美しい住まいが維持されている

  • 趣味の旅とカメラについて、お聞かせください。
    2002年からですかね。住宅の設計を始めて、しばらくして建築を実際に見たくて、ヨーロッパを中心に建築を鑑賞する旅に出かけるようになりました。計画していると、見てみたい建築が増えてしまい、スケジュールは分刻みです。ショッピングの時間が削られるので、いつも一緒に出かける妻からは不満が出ますね。美しい建築があると知れば、どこにでも出かけています。
    アルプスを一望する丘の上にある聖ベネディクト教会(Peter Zumthor作)は、電車やバスを乗り継ぎ、そこから山を一時間ほど登っていきました。そこには、写真集では伝わらない美しい建築が持つ想いが待ってくれていました。美しい建築には、想いが込められています。テクニックとかではなく、想いを感じることが旅の目的です。そして、できればそれをカメラで切りとりたい。そう思って、撮影しています。そうして、毎年10日ほど旅をしてきました。ヨーロッパの国は、ほとんど訪れました。しかし、一度見たとしても、再び見たくなります。ある建築を見て、なにも感じなかったとしても、仕事しているときなどに、ふと「こういう意味かな」とよぎってしまいます。そうなると、再び旅に出るのです。
  • 写真3

    2005年/リフォーム当時

  • 旅する経験と建築デザインの関係は、どういうものでしょうか?
    美しい建築は、時代を超えて愛され続けています。そういう建築を見ていて思うのは、シンプル・イズ・ベスト。飾りを削り、常識を削って、シンプルにすることで、その建築に込められた想いを際立たせていく。過去の建築家は、そういう作業を続けてきたのだと思います。
    最近では、ベルリンのバウムシューレンヴェク・クレマトリウムが記憶に刻まれています。円柱の柱が並び立ち、円柱の周りから光が差し込み、荘厳な空間の斎場です。私も住まいをデザインするときには、想いを込めることを大切にしています。そうしてシンプルにデザインしていくことで、想いを強くするのです。そういう考えは、旅とカメラと仕事が混在して巡ることで、強くなってきましたね。
  • 写真4

  • 10年前にリフォームした自宅へ込めた想いは、どういうものですか?
    モノを足していくのは簡単ですが、あるモノを無くすのは簡単ではありません。常識として存在するものを削るというのは、思索が必要です。とことん考えて、やっと答えを絞り出していきます。
    この自宅をデザインしたときは、シンプルの実験でした。たとえば、壁に収納を設えているのですが、取手などをつけずになるべく線を減らしました。取手があるのが常識だけど、収納の下に空間を設けることで、取手がなくても開けられる。そうやって空間から、ひとつずつ常識を削っていく作業でした。
    マンション特有の梁も出ていたのですが、それも収納の壁面のなかに取り込み、空間の凹凸を減らし、空間の線を減らしていきました。ダイニングテーブルの上の梁は、ステンレスを貼り、微妙な映り込みにより圧迫感を無くしました。そうやって、シンプルな白の空間を創っていきました。ここに込めた想いは、程よい緊張感です。緊張感があることで、モノを出さずにいつも片付いた暮らしをしたいと考えました。暮らし始めて約10年、その緊張感は続いています。
  • 写真5

  • これから住まいを建てようとする子育て世代の人に、メッセージをお願いします。
    私たち建築家は住み手の想いを受け止めて、その家のあるべき姿を突き詰めていきます。家族はそれぞれですし、住まいへの想いもそれぞれです。部屋数や大きさなどではなく、「家族のコミュニケーションを大切にしたい」というように、一番大切なモノが何かを考えていくことが大事です。それから優先順位を考えて、デザインしていくのです。そして建築家は、その想いを深く理解し、そのメッセージが伝わる住まいを考えるべきです。
    住まいのデザインには、家族の気持ちを変える力を持っています。たとえば白い床や壁なら、塵や汚れが目立ちやすいので、自然にきれいにする気持ちが強くなるでしょう。子育て世代の方であれば、子どもにどんな大人へと育ってほしいか、どんな家族でありたいか。そんな想いを込めて、住まいをオーダーしていただきたいと思います。
  • 写真6

    4つのユニットで構成された畳スペースは、引き違い戸を閉じれば独立した空間に。寝室、収納など多機能を担う。一畳ごとに可動し、ベンチとしても利用できる。

profile

馬場 純さん
馬場 純さん
ミサワホーム(株)センチュリーデザインオフィス シニアデザイナー。「banhaus」「つくし野の家」といった一般住宅を手掛ける一方で、住育や食育の視点に基づく保育施設「コビープリスクールあたご」、越後湯沢ならではの自然環境に適合するデザイン建築「四季 Four Seasons YUZAWA クワトロQUATTRO」を手掛ける。「四季 Four Seasons YUZAWA クワトロQUATTRO」は、2013年グッドデザイン賞を受賞した。

WEBサイト
ミサワホーム デザイナーズ住宅



住まい実例