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interview

“もしも”に備える、
“いつも”美しい住まい

ミサワホーム MISAWA-LCPプロジェクト担当
佐藤 悦子さん

日本の自然災害リスクは、世界でもまれに見る高さだ。
地震だけでなく、巨大台風やゲリラ豪雨、活発化する火山活動など、
その脅威は多岐にわたっている。
ミサワホームでは、東日本大震災を機に、
トータルな防災・減災ソリューションの開発を続けてきた。
そして、2016年6月に「GENIUS 蔵のある家 防災・減災デザイン」を発表。
プロジェクトの一員である佐藤さんに、その魅力をインタビューした。

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  • なぜ、安心・安全な住まいを考えるべきなのでしょう?
    私たちは2008年から、50年後の「住まいと暮らしの在り方」を考察してきました。そのなかで、多方面の識者の方と協働しながら耐震や耐火、耐風などの研究を重ねています。この取り組みのなかで、東日本大震災を契機として、被災された方からのヒアリングや各種の被災調査結果を集め、日本の自然災害リスクを大きな視点で捉え直し、単に強い建物を追求するのではなく、トータルな防災・減災ソリューションの開発を行いました。
    たとえば、かつては年間10cmだった太平洋プレートの移動スピードが、今では年間30cmの速さで日本の下に沈み込んでいると言われています。地球規模で海面水温も上がっていて、2014年の台風12号のように、勢力を維持したまま日本に上陸するなどの影響が出ています。こうした日本の置かれている状況を把握し、今後も地震や津波といった災害を前提とした社会システムが必要と考えたのです。そのインフラの中でも暮らしに最も密着しているのが、住まいです。“もしも”の時に何が必要で、何ができるのかを知ることがまず大切だと考えたのです。
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  • “もしも”に備えた住まいとは、どのようなものでしょうか?
    防災・減災のために必要な仕様や性能を研究開発した結果、もし災害が発生しても、安心して自宅での生活継続を目指すことを考えました。災害が起きたら避難所に行くのではなく、自宅で避難する。自宅なら、避難所での集団生活にストレスを感じたり、ペットと離れることもありません。その自宅生活継続を可能にするのが「備える」「守る」「支える」というコンセプトです。
    特に注力したのは、水。復旧までに時間がかかるインフラは、阪神・淡路大震災時には水道が90日、電気が7日でした(※)。 電気は太陽光発電でつくれても、水は貯めるか蓄えるしかありません。4人家族で一週間に必要な生活用水は約290リットル。それに対し、雨水利用システムで200~300リットル、エコキュートから最大約460リットルを生活用水として利用できます。さらに、今回開発した水道配管に直結した飲料水貯留システムでは、常に水が入れ替わりながら衛生的に、約24リットル(飲料水3日分)を貯留します。

    ※出典/兵庫県「阪神・淡路大震災の支援・復旧状況」
  • 写真5 【雨水利用システム】“もしも”のための生活用水が自然に貯まる「雨水利用システム」 【飲料水貯留システム】約24リットルを貯められる床下設置「飲料水貯留システム」 【PV】停電時でも電気が使える「太陽光発電システム」 【シャッター】スイッチひとつで一括操作が可能な「電動シャッター」

  • “もしも”に備えた、新しい住まいについてお聞かせください。
    「GENIUS 蔵のある家 防災・減災デザイン」は、“もしも”の時にも、自宅で生活継続ができるように設計されています。「蔵」や小屋KURAで、家族4人が14日間の避難生活ができる備蓄が可能です。また、1.5階にリビングを設けて、ゲリラ豪雨などがもたらす床上浸水へも対応。暴風などにも、ひとつのスイッチを押せば、すべてのシャッターが閉まるような仕様を採用しました。
    いろいろと最新の技術や設備を揃えていますが、それ以前に「美しい住まいは、もしもの時にも安全な住まいであるべき」というコンセプトで開発しています。安全で頑丈なだけの家では、豊かに暮らせない。“もしも”のために、“いつも”を我慢するのでは本末転倒です。強い家であることはもちろん、その前提として住み心地のよい、美しい家であること。見たり、触れたりする部分を美しく納めるにはどうすればよいか、日常を暮らしやすくするためにどんなつくりがよいかを、考え抜きました。
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  • 今すぐにできる安心・安全の工夫を教えてください。
    “もしも”に備えた暮らしは、現在のお住まいでも取り入れられる部分があります。玄関が通行不能になるケースを考えて、複数の避難経路を想定しておくことも一つですし、台風が来たときには飛来物があるかも知れないので、窓際は危ないと知っておくことも大切です。水や食料の備蓄はすでに取り入れているご家庭も多いかと思いますが、ただストックするだけではいけません。非常食を日常のサイクルにとり入れ、定期的に消費して買い足すことで、自然と備蓄品を新しい状態に保つことができます。新しい住まいでは、「ローリングストック収納」として提案していますが、こうした取り組みは、今のご家庭でも取り入れることができるでしょう。
    大切なのは、“もしも”を特別なことにしないこと。備えることは、手間のかかる大変なことではなく、日常の生活に密着しているのだと知ってほしいと思います。そして、いざという時にも住まいが家族を守り、日常に近い生活を支える備えがあれば、“もしも”の不安を感じずに、“いつも”快適な暮らしを楽しむことができると思います。
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profile

佐藤悦子さん
佐藤 悦子さん
ミサワホーム(株)商品開発部 MISAWA-LCPプロジェクト担当。これまでに、子育て住宅の企画開発や、忙しい女性目線での新商品企画などを担当。技術開発や実施・設計などを中心として、今回の「MISAWA-LCP」をはじめ同社の新商品の開発に携わる。

WEBサイト
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