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Special Interview

自然災害と感染症に対応しながら
多世代が安心して暮らせる社会へ

#健康・リラクゼーション#防災・減災住宅

日本の住宅政策の指針となる「住生活基本計画」の見直しが実施され、閣議決定された。
これからの住まいの選び方にも密接に関係するその内容について、専門家にお話しをうかがった。

住生活基本法はどんな法律?

 一度手に入れたら、何十年もの長きにわたって住むことが少なくないマイホーム。それだけに、将来的にも安心・快適である住まいを選びたい。では、どんな住まいを選べばいいのだろう。実はその指針となる法律がある。それが「住生活基本法」だ。法律というと難しく感じるかもしれないが、ひと言でいえば、豊かな住生活をめざし、そのための施策などを決めるための法律だ。「具体的な住まいの基準を決めるものではありません。ですが、建築基準法などの住まいに関連する法律は、すべてがこの住生活基本法に紐付けられて決められます。これからの住まいがどうあるべきか、その基本となる方向性を決めるのが住生活基本法なのです」そう語ってくださったのは、東京工業大学の中井教授だ。ちなみに住生活基本法では、方向性を決めるための「住生活基本計画(全国)」が策定され、一定期間ごとに見直される。中井教授は、今回の見直しに際して、その議論を行う社会資本整備審議会・住宅宅地分科会の文科会長を務めている。
「今回の見直しでは、いくつもの大きなテーマがありましたが、その一つが激甚化する自然災害への対応です。とりわけ、近年頻発している水害については活発に議論しました。新しく住まいを選ぶなら、水害リスクの少ない場所を選ぶことが一番ですが、日本は地形的に河川の下流に大都市が形成されており、水害リスクゼロの場所で暮らすというのは、現実的に難しいでしょう。大事なのは、その場所にどんなリスクがあるかを認識し、どうすれば安全に暮らせるかを考えることですね。

住まいの選択がより良い社会を

新型コロナウイルスなどの感染症リスクも、見直しのための議論の大きなテーマになったという。 「新型コロナウイルスが終息しても、新たな感染症が発生する可能性は十分に考えられます。今をしのげればいいという考えではなく、将来的なリスクを認識しておくことも大事です。また、感染症のリスクが暮らしにどのような影響を与えるかも重要なテーマでした。たとえば、リモートワークの増加といった働き方の変化や、住まいのワークスペースの必要性が高まっていることなども、影響の一つといえます」 デジタル技術への対応も、今回の見直しの重要なポイントだ。 「住まいにおけるAI技術の活用も、これからの住まいの大切な要素です。たとえば感染症対策としても有効な室内換気も、AIと組み合わせることで、より効率的なコントロールが可能です。こうした技術をいち早く導入した住まいや、在宅ワークスペースを備えた住宅は、すでに一部の住宅メーカーが手掛け始めています。社会のニーズや自分たちのライフスタイルに合った住まいを選択できること、つまり、住まいの選択肢が増えることは、消費者にとって歓迎すべきことですし、住生活基本法の観点からも、そうあるべきだと考えます」
自然災害や感染症だけでなく、人口減少、少子高齢化、空き家の増加など、日本の住まいを取り巻く環境には課題が山積みだ。それらの課題を解決しながら、より豊かな暮らしを実現できる住まいのあり方を示すこと。それが住生活基本法の最大の目的だ。そして、そこで示された住まいのあり方は、これからの住まいづくりで私たちが大切にすべきことそのものであるといえる。 「消費者一人ひとりが、そうした住まいを選択することが、課題の解決につながり、暮らしを豊かにしていきます。マイホームを手に入れようと考えている方は、住宅メーカーのアドバイスを受けながら、価値ある選択をしていただきたいと思います」
これからの住まいづくりが、より大事になることがわかるだろう。

東京工業大学 環境・社会理工学院
教授 中井検裕


なかい・のりひろ 1958年大阪府生まれ。工学博士。都市計画や土地利用計画を専門に研究。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス地理学科助手、東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授などを経て、2002年より教授。公益社団法人日本都市計画学会元会長。公益社団法人日本不動産学会副会長。その他、国土交通省社会資本整備審議会都市計画部会長や東京都景観審議会会長なども歴任。