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interview

編みものは
時間みたいなもの

ニットデザイナー
三國 万里子さん

冬は、編みものが活躍する季節。
自ら手を動かして編んでみたいと
考えている方もいるのでは‥‥。
ニットデザイナーの三國さんに
編みものの魅力を伺ってきた

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  • 祖母から教えてもらいました
    いちばん最初に、編み針をもらったのは祖母からです。3歳くらいのころでした。編みものはざっくり言うと、かぎ針と棒針がありまして、かぎ針のほうが簡単なんですね。最初は、そのかぎ針を祖母から教えてもらい、でも大人がやっているのは棒針で「私のと違うー」と言って、どちらも教えてもらいました。

    手を動かすことが好きでした
    小学生のときは、手を動かすことはなんでも好きだったんです。目から入ってくる情報を、手で出す。本を読んで自分でも文章を書くとか、編み図を見て再現するとか‥‥。特に編みものだけが好きだったわけではないんですけど、編みものをはじめると時間を忘れてしまうところがあって、親としては「もっと友だちと遊んでほしい」とか心配だったみたいです。

    編みもの専業で行くことに
    結婚して、主婦になって、私や私のまわりの人のために編んでいたんですが、妹の誘いで作品販売会をやることになって、編みもの以外のものもあったんですが、ミトンが人気でニットに特化していきました。ミトンからはじめて、帽子、マフラー、チョッキにセーターと編んで、編んで、喜ばれたら、また編んで‥‥。ついには編みもの専業で行くことになったのです。
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  • 時間を編むというんですかね
    人間国宝の先生が「編みものというのは一本の糸で進めるから心にいい」とおっしゃっていたそうです。編みものは少しずつです。編みものは時間みたいなもので、時間を編むというんですかね。自分だけの時間を自分のペースで過ごすための道具として‥‥自分として生きるということを、糸を通して経験するような時間じゃないかなと思うんですよ。

    たとえば、夫の話です
    夫が東日本大震災の後に会社がお休みになって「手持ち無沙汰だから編みものしたい」と言って。「最初だからミトンでも編む?」と聞いたら「僕はミトンだの帽子は身につけないから、セーターを編む」‥‥。「編んでいるとすごく落ち着いた」と言っていましたね。毎日、すごかったじゃないですか、あのときって。一か月くらい、編み続けたら、仕事が再開して、セーターも無事にできて、喜んでいましたね。

    最近は、忙しいですよね
    なにかをしながら、なにかをする。スポーツクラブでもモニターの画面を見ながら、走るみたいなことですよね。「ひとつのことだけに集中することは、心にはいいんだよ」と聞きますよね。編みものはメディテーションの効果があると言われていますね。なんかね、あまり効果で語るのは好きではないんだけれど「まぁ、あるんだろうね」とは思います。
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  • ひと冬に一枚のセーター
    編みもののいいところは「時間がかかるところだ」と思うんですよ。服って、そんなにたくさん増えても困るじゃないですか。自分が思うようなものをひと冬に一枚でも編めたら、それでいいんです。そして、編んだものって、何年も持つんですよー。

    20数年を経ても、着ています
    私が夫にはじめてプレゼントしたセーターって、結婚する前だったんですけど、20数年が経っても着ています。私がつくろったら永遠に着られる。編みものは、つくろいやすいんです。だって、ほどけますから、ほどくと、ずっと一本の毛糸に戻ります。今はそうでもないんですけど、昔のセーターはほどけるようにつくってあったんです。

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  • 編みものは慣れです
    お母さんが「子どもに編みものをさせたいんですけど、どうしたらいいでしょう」と聞かれることがあります。まず大前提として向き不向きがあります。手先の器用さではなく、そこへの興味でしょうかね。手を動かして、糸を使うことが好きだったら、その子どもは勝手に進んでいくと思うんです。器用や不器用は関係なくて、編みものは慣れです。慣れるものです。

    教えてくれる大人がいるといい
    大事なのは、まわりに褒めてくれる人がいること。そして、編みたいときに教えてあげる大人が近くにいたら、すごくいい。毛糸屋さんに行って教えてもらうとか‥‥。街のワークショップとかもいいかもしれない。きっと、年の離れた大人たちが喜んで教えてくれると思います。

    欲しいものをつくろう
    はじめたいときは、欲しいものをつくるのがいいですね。それが、いちばん心にいいと思います。道具と毛糸は、高くても、ちゃんとしたものがいいですね。尊い自分のエネルギーと時間を使うから‥‥。いいものを買ったら、完成させる責任が生まれますからね。
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  • 編みものをするのに、いい場所
    このモデルハウスの3階にある小さなワーキングスペースは、編みものするのにいいです。そこのキッチン横の小さなスペースもいいですね。こぢんまりしているのがいい‥‥。それに目を外にやれるのもいいですよね。四方を壁に囲まれているより、外に目を向けると気持ちがのびのびしますから。

    ひとりになれる場所がいいですね
    私は子どもの頃は縁側が近くにあるような日向の場所で編むのが好きでした。人の気配がしていて、ひとりになれる、そういうところです。そういう場所で、ひとりの時間を持てたことはよかったですね。

    撮影:ミサワホーム「CENTURY 蔵のある家」成増展示場
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profile

三國 万里子さん写真
三國 万里子さん
ニットデザイナー。1971年、新潟生まれ。3歳の時、祖母から教わったのが編みものとの出会い。早稲田大学第一文学部仏文科に通う頃には、洋書を紐解き、ニットに関する技術とデザインの研究を深め、創作に没頭。大学卒業後、いくつかの職業を経た後に、ニットデザイナーを本職とする。2009年、「編みものこもの」(文化出版局)を出版。以降、書籍や雑誌等で作品発表を続ける。2011年、糸井重里が主催するウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で、編みものキットやプロダクトデザインを手がけ、活動の幅をさらに広げる。2012年より「気仙沼ニッティング」のデザイナーを務める。著書に「編みものともだち」「アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行」(すべて文化出版局)、「うれしいセーター」(ほぼ日ブックス)などがある。

関連サイト
Miknits 2021三國万里子さんの編みもののお店

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ミクニッツ 大物編+小物編 2冊セット
ウェブサイト「ほぼ日」で人気を博している三國万里子さんの編みものキット「Miknits」待望の書籍化。「大物編」は、セーター、カーディガン、ベストなど、ウェアだけを、「小物編」は、ミトン、帽子、マフラー、靴下、ティーコージーなど、小物だけをセレクトし、著者自身によるスタイリングで全作品を撮り下ろしました。日本語の編み図に加え、セルフライナーノーツと英文パターンつき。文化出版局 (2020年10月発)