トップ - 暮らしのプロたち - 佐々木 俊尚さん

interview

横へ横へ、コミュニティで
つながる暮らしを楽しむ

ジャーナリスト
佐々木 俊尚さん

会社や地域などの共同体が
失われていくなかで
新たな暮らし方が生まれています。
「広く弱くつながって生きる」の著者であり、
横へ横へとつながりを広げられている
佐々木さんに楽しみ方を聞いた。

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  • 社会のつながりが失われています
    終身雇用が崩壊し、企業の倒産や地方消滅と言われる不安定な時代です。産業革命以降、農村などの村落共同体を離れ、会社へと人が帰属するように共同体は変わりました。しかし、こうしたポストモダンなつながりさえも解体され始めた社会では、将来的な不安が解消されることはありません。

    もっとフラットなコミュニティに
    そういう時代においては、人と人のつながりが大切です。未来が見えないからこそ、人はつながりを強く求めていくのだと思います。これまでの人間関係は、村の中央にある広場へ集まるような、ひとつの場を中心としたつながりでした。そうした強いコミュニティでは簡単に同調圧力が生まれ、人間関係が面倒になったり、息苦しさを感じてしまいます。しかし、SNSなどが生まれたことにより、横へ横へと広がるコミュニティになっていくでしょう。
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  • シェアハウスという共同体
    最近ではシェアハウスに代表されるような、新しい共同体が増えています。シェアハウスが選ばれる理由には、家賃負担を軽くしながら広い家に住めるというのがありますが、人気のひとつにキッチンが大きいことが挙げられます。みんなで使いやすく、料理が楽しいことに加えて、イベントスペースとしても使われることで、ゆるやかな人間関係が生まれているのを目にします。シェアハウスに暮らす私の友人の一人は、「外に出ると一人だから、家にいるときくらいは誰かとつながっていたい」と話しています。

    支えあって暮らす
    別の友人は、結婚はしたくないけれど子どもは欲しいと望んでシングルマザーになりました。すると、彼女が住む長屋に友人たちが集まって、みんなで育児や家事を分担して、助け合って共同生活するようになったのです。今の20代・30代の人たちは、そうした人のつながり方や生き方をしなやかに選んでいます。
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  • つながりやすい時代です
    これまで人と人を結びつける場は、お店などのリアルな空間でした。今は、やりたいことを目的に場を共有するようなコミュニティが次々に生まれています。フェイスブックやツイッターなどが接点となり、気軽に人とつながることができます。さまざまなコミュニティがあるので、自分の知らない世界へと自由につながりを広げていくことができます。

    気持ちのいい関係に
    人間関係をうまく広げていくうえでは、短期的な利害関係で考えるのではなく、長い目でみたほうが人間関係はうまく続きます。そして、自分の周りを気持ちのいい人間関係にしておくことが大切ですね。そのためのポイントは、年齢にこだわらないこと、相手との上下関係を決めようとしないこと、自分の価値観を押し付けないことですね。
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  • 知らない世界で、暮らしを楽しむ
    私が参加しているコミュニティの一つに、罠シェアリングがあります。猟師が使う罠は高額なので、都会の人たちが費用を分担して、管理を地元の猟師に任せる。そして獲物が獲れると肉をシェアしてもらうという仕組みです。私は冬になると毎週あきる野へ出かけて行って、一緒に鹿の解体や精肉、持ち帰ってジビエ料理をつくっています。そこでつながった猟師の人たちは30代。世代も業界も違いますが、知識も経験もない世界の人たちとつながることは、自分の地平線を広げてくれます。それに、知らないことを知ることは純粋に楽しいですね。

    暮らしの裾野を広げたい
    私自身、松浦弥太郎さんたちと一緒に「SUSONO(すその)」というコミュニティをスタートさせました。ゆるやかなつながりの中で、毎月テーマを決めてトークイベントをしたり、登山や映画、料理など同じような趣向を持った仲間が集まって自発的にグループ活動を楽しんでいます。そうやって、暮らしをより楽しむための場として利用することで、山の裾野が広がっていくように新しい文化圏が生まれるのではないかと考えています。
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    SUSONO各種ワークショップの様子

  • ゆるやかにつながって、人生を楽しむ
    今はもう場所や距離にかかわらず、誰かとつながりを築ける時代です。いい人間関係を広く持続しておくことは、人生を豊かにするきっかけを与えてくれることでしょう。そして、横へ横へとゆるやかなつながりを広げておくことは、これからの時代を生きていくうえでの楽しみになると思います。

    住まいは開かれていきます
    近代の住まいは、家の内も外も壁や扉で仕切ってプライバシー空間をつくってきました。しかし、人との結びつき方が変わることで、住まいのあり方が変わっていくでしょう。縁側や上がり框のように誰でも入れて、ゆるやかにつながる中間領域が見直されています。これからは、寝室など最低限プライベートな部分をのぞいて、生活のあらゆる部分がオープンな共有空間となって、住まいは開かれていくでしょう。そうして、新しい暮らしが生まれていくと思います。
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profile

佐々木 俊尚さん
佐々木 俊尚さん
ジャーナリスト。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍。社会、政治、料理などあらゆるジャンルでの取材・執筆、トークイベントへの出演を重ねるほか、心地よい暮らしを楽しむためのコミュニティ「SUSONO」の運営に携わる。

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佐々木俊尚

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広く弱くつながって生きる
広く弱くつながって生きる
人とのつながり方を変えたことによって、世代を超えて友達ができ、小さい仕事が沢山舞い込むようになったという佐々木さん。働き方や暮らし方などが多様化した社会で、人間関係の築き方にヒントを与えてくれる一冊。2018年3月(幻冬舎)



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