ミサワオーナーズマガジン 2018 Spring&Summer
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M-05富田 本日は、建築やまちづくりから地球環境に至るまで多彩な研究をされている門内先生に、未来を見据えた社会についてお話いただき、これからどんな暮らしが訪れ、ミサワホームに何ができるのかを考えてみたいと思いますので、よろしくお願いいたします。門内 ミサワホームがこれからどんな方向へ向かうのか、僕も興味があります(笑)。富田 ありがとうございます(笑)。先生は、今の時代をどう捉えていらっしゃいますか。門内 ものづくりという物理的な「フィジカル」と、コンピュータやネットワークといった情報空間である「サイバー」が融合しつつある時代といえますね。住宅や都市もサイバーとフィジカルを一緒に考えようという動きがあって、そうなると、まったく新しい空間や都市づくりが出現する可能性があります。たとえば、「クラウドソーシング」を活用すれば、どこにいても仕事ができる。医療でも、医薬品や遠隔画像診断の機材を車に積んで「移動病院」として巡回すれば、遠くの病院からネットで指示が出されて、軽度な病気はそこで処置が可能になります。これは大震災のあった東北ですでに実現しています。富田 暮らしも変化しますね。門内 すでにAIやIoTなど、サイバーなものが住まいに入り込んでいます。そのなかで未来の暮らしを考えるには、原点に戻って人間はどんな存在なのかを掘り下げることが大切だと思います。そもそも人間は一人では生きられない。家族や地域のコミュニティが大事になります。未来の鍵はこのコミュニティにあると、僕は思っています。僕が子どもの頃はやんちゃをすると近所の人たちに怒られたものですが、戦後、日本はそうしたコミュニティを失ってきました。「昔のように」とは言いませんが、もう少し、人と人とのつSession for Future京都大学名誉教授大阪芸術大学 建築学科長ミサワホーム総合研究所フューチャーセンター市場企画室室長門内輝行富田晃夫もんない・てるゆき(写真右) 工学博士、一級建築士。早稲田大学理工学部教授、京都大学大学院工学研究科建築学専攻教授を経て、2016年より大阪芸術大学建築学科教授、京都大学名誉教授。京都市立芸術大学客員教授。専門は建築・都市記号論、デザイン方法論。人間と環境の関係を解読し、豊かな生命を育む生活世界をデザインする理論と実践に注力。『デザイン学概論』『建築・都市計画のための空間計画学』など著書多数。作品に「京都大学デザインイノベーション拠点」「京都市立洛央小学校ブックワールド」などがある。とみた・あきお(写真左) (株)ミサワホーム総合研究所 フューチャーセンター 市場企画室室長、かぐやプロジェクト、ホームOS推進プロジェクトに所属。首都大学東京、立命館大学客員研究員。ミサワホーム㈱商品企画部にてマーケティングおよび商品企画を担当後、現職に至る。書籍『HEART and EARTH 未来の選び方』(ミサワホーム“MISAWAデザイン未来塾委員会”)に携わる。

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