M-12──ブラックホールの撮影に世界で初めて成功した研究チームで、本間教授は日本側の代表を務められました。所属する国立天文台水沢VLBI観測所は、どんな役割を果たしたのでしょうか。本間 最も力を注いだのは、画像の解析です。地球サイズの仮想望遠鏡で撮影したデータから、いかに良質な画像を得るかが、プロジェクトの肝でもありました。今回使われた3つの解析方法のうちの1つが、日本チームでつくった解析ソフトです。これが一番大きな貢献といえますね。──プロジェクトは200人以上の大所帯。ご苦労もあったかと思います。本間 互いの連携には信頼関係が大事です。加えて、人類が誰も見たことのないブラックホールをこの目で見たい! 皆がその一心で、夢を共有していたことが成功へと導いてくれました。一番の功労者は、ブラックホール自身です。私たち研究者を惹きつけてやまないブラックホールの重力が、研究チームを飲み込んでしまったといえますね(笑)。──現在も水沢に単身赴任で激務をこなしていらっしゃいますが、ご自宅ではどのように過ごされているのでしょう。「家族と住まいがあるからこそ 落ち着いて研究ができるのです」世界初の巨大ブラックホール撮影成功に貢献国立天文台・本間希樹教授世界が注目する巨大ブラックホールの撮影発表されたブラックホールの画像(上:EHT Collaboration)と、ブラックホールの周辺のイメージ図(下:Jordy Davelaar et al./Radboud University/BlackHoleCam)。 強烈な重力によって、物質はおろか、光さえも飲み込んでしまう謎の天体「ブラックホール」。2019年4月10日、電波望遠鏡によって巨大ブラックホールの撮影に初めて成功したことが発表されました。成功したのは、世界中から集まった206名の研究者による研究チーム「イベント・ホライズ スペシャル・インタビューン・テレスコープ(EHT)プロジェクト」。本間希樹教授によると、「5500万光年もの距離にあるブラックホールの撮影は、たとえるなら、月面に置いた野球のボールを地球から撮ろうというもの。世界6カ国、8カ所の電波望遠鏡をつないで地球サイズの仮想望遠鏡を構成し、撮影したのです」とのこと。「その撮影データを画像として処理するには、各地の撮影タイミングに10兆分の1秒という厳密さが求められるなど、気の遠くなるような作業の積み重ねがありました」。 プロジェクトのスタートから、今回の発表までにかかった歳月は10年以上に及び、研究者たちの「情熱」があってこそ、この快挙を成し遂げたといえます。記者会見で成果を発表する本間教授。写真提供:The Asahi Shimbun本間希樹(ほんま・まれき) 1971年生まれ。理学博士。自然科学研究機構 国立天文台水沢VLBI観測所 教授/所長。専門は超高分解能電波観測による銀河系天文学。ブラックホールの研究のほか、「天の川の地図」をつくる研究なども行っている。⃝世界初の快挙と研究⃝仕事と家庭のオンとオフ
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