北米大陸の西端、アメリカ合衆国と接するカナダ、ブリティッシュコロンビア州に属するバンクーバーは、およそ150年前、ゴールドラッシュの時代にヨーロッパからの移民によって誕生しました。それまでは林業を生業とする開拓者の暮らす“グランビル”という村があったそうです。 その入江にある先住民の漁場だった場所を埋め立てた人工の島が、今回ご紹介するグランビル・アイランドです。はじめは工業地区として栄えますが、第2次世界大戦の終結とともに衰退。廃墟と化したこの地を再生するため、1970年代にパブリックマーケットや美術学校、ギャラリー、カフェなどが誘致され、魅力的なウォーターフロントとして蘇りました。工場の建屋をセンス良くリメイクしたまちなみは、北米で最も優れた公共空間と評されています。 1世紀前の往時の面影を残しながら、海峡に向かい合って建ち並ぶ高層ビルの台地と、それを繋ぐグランビル・ストリート・ブリッジを見上げる風景には、どこか懐かしい下町風情があります。グランビル・アイランド(カナダ)09Vol. ミサワホーム総合研究所一級建築士、土地区画整理士、インテリアコーディネイター世界各地の伝統的建築とその集落を訪れ、多くのインスピレーションを受ける。現在は住宅地の計画や景観デザインのコンサルティングを通して、将来にわたり豊かで快適な暮らしと魅力あるまちなみ景観の創造に取り組む。大谷宗之 バンクーバー バンクーバー◦アメリカカナダアラスカM-02
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