ミサワオーナーズマガジン2023秋冬号(マンション版)
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 本州の西端にあり、様々な文化や物資が行き交う関門海峡を擁する長府は、古くより海の要衝でした。江戸時代には、長府藩の城下町として、海峡防衛の役割を担うこととなります。 武家屋敷が建ち並ぶ「古江小路」の呼称は、かつてこの辺りが入江であったことを指す「古い江」に由来するとされています。 風景の特徴は、通りの両側に築かれた土塀の肌合でしょう。武家屋敷の塀といえば、漆喰などで平滑に整然と仕上げられたものが主流ですが、古江小路のそれは「練塀」と呼ばれ、簡素な中塗りをそのまま仕上げとする、防御と実戦を目的に築かれたところに特徴があります。その趣から、「切通し」の別名を持ち、丘を開削した道の両側に立ち上がる大地の断面を彷彿とさせます。 一風変わったこの練塀は、京都の龍安寺方丈の枯山水庭園を囲む油土塀のようでもあり、武家の威厳を表すものというより、むしろ簡素さゆえの深い精神性を感じさせる佇まいとなっているようです。C-02世界各地の伝統的建築とその集落を訪れ、多くのインスピレーションを受ける。現在は住宅地の計画や景観デザインのコンサルティングを通して、将来にわたり豊かで快適な暮らしと魅力あるまちなみ景観の創造に取り組む。大谷宗之ミサワホーム総合研究所一級建築士、土地区画整理士、インテリアコーディネーター●●山口県下関市◦下関市◦長府長府◦山口市12Vol. 古江小路(山口県下関市長府)

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