主かずえ計町まち 金沢駅から南東へ、歩いて20分ほど、広く穏やかな浅野川に浮かぶように、京町家風の建物が肩を寄せ合い佇んでいます。対岸から眺めると、背丈を競うように瓦屋根が段々に連なって、なんとなく微笑んでしまいたくなる姿は、ひがし茶屋や、にし茶屋と並ぶ金沢茶屋街の三姉妹のひとつ、主計町です。 そこには、もう一つの顔があります。川沿いの遊歩道から一筋奥へ入ると、腕を広げれば両手が壁についてしまうほどの、仄暗い裏路地感を漂わせる小径が現れ、誘われるままに進めば、崖を登りあがる古びた石段に行きあたります。それは、丘の上の人々が暮らす現実世界と、夜の花街を結ぶ結界のようでもあります。 初見では読み方に戸惑う地名は、かつてここにあった屋敷の主の名前に由来しますが、昭和の町名改正によって一旦、その名は失われてしまいます。その後、地元の方々のはたらきかけによって復活を遂げたのだそうです。C-02金沢市金沢市●世界各地の伝統的建築とその集落を訪れ、多くのインスピレーションを受ける。現在は住宅地の計画や景観デザインのコンサルティングを通して、将来にわたり豊かで快適な暮らしと魅力あるまちなみ景観の創造に取り組む。大谷宗之ミサワホーム総合研究所一級建築士、土地区画整理士、インテリアコーディネーター主計町主計町石川県(石川県金沢市)13Vol.
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