今からおよそ100年前、成城学園がこの地に移転したことをきっかけに鉄道の駅が開業し、その後映画の撮影所が建設されるなど、成城は文化の薫るまちとして発展してきました。駅前から少し歩くと、閑静な邸宅街の景観が広がる中に、周囲の建物とは趣を異にする一角が現れます。樹高が従えたその建物は、アメリカでの創作活動を終えて帰国した画家のために、1961年にコンクリート・ブロックでつくられたアトリエ兼住居です。それは、外壁も内装もただ一種類の素材ですべての機能を満たす画期的な構法でした。ビルや倉庫などで多く使われましたが、無機質なテクスチャーゆえに、一部の地域を除いて戸建住宅での前例はほとんどありませんでした。美術家として海外で感性を磨いた施主は、この素材が自らの美意識に叶うものとして、異端ともいえる構法で自邸の建設を決断したのです。2000年に亡くなるまで創作活動の場であった建物は、現在、世田谷美術館分館清川泰次記念ギャラリーとなり、文化活動の場として市民に親しまれています。 ● 世田谷区M-02大 谷 宗 之成城学園前成城学園前東京都世田谷美術館分館 清川泰次記念ギャラリーでは、2026年3月15日(日)まで展覧会「清川泰次 デザインの仕事ー生活に息づく美」を開催中ミサワホーム総合研究所一級建築士、土地区画整理士、インテリアコーディネーター世界各地の伝統的建築とその集落を訪れ、多くのインスピレーションを受ける。現在は住宅地の計画や景観デザインのコンサルティングを通して、将来にわたり豊かで快適な暮らしと魅力あるまちなみ景観の創造に取り組む。世 田 谷 美 術 館 分 館 清 川 泰 次 記 念 ギャラリー( 東 京 都 世 田 谷 区 成 城 )家のある風景10メートルに届きそうな赤松の門番を15Vol.
元のページ ../index.html#2