ミサワオーナーズマガジン 2020秋冬号
2/36

 岐阜県のほぼ中央、長良川と吉田川が出合う三方を山に囲まれた郡上八幡は、江戸時代より城下町として発展し、今も当時の景観をとどめる「水のまち」として知られています。 清らかな湧き水を「水舟」と呼ばれる3段の水槽に導き、先ず飲み水として、次に食材の洗浄、3段目で食器を洗い、残ざん し滓はここに棲む鯉の餌となります。水は循環しながら浄化され、再び自然へと戻ってゆきます。 まちなみの特徴は、町屋の壁に付けられた「卯建」(うだつ)です。中世より日本各地に伝わるこの建築様式は、隣り合う建物の軒を伝って火災が広がることを防ぐ目的でつくられ、後に建物の品格を表す装飾として、さまざまな意匠が施されるようになります。そこには、周囲に迷惑をかけず自立していることを示す施主の意思が感じられます。 一つひとつが寄り添いながら、水の流れのように途切れることなくつながる風景には、人と自然を思いやる暮らしの作法が映し出されているようです。岐阜・郡上八幡07Vol. ミサワホーム総合研究所一級建築士、土地区画整理士、インテリアコーディネーター世界各地の伝統的建築とその集落を訪れ、多くのインスピレーションを受ける。現在は住宅地の計画や景観デザインのコンサルティングを通して、将来にわたり豊かで快適な暮らしと魅力あるまちなみ景観の創造に取り組む。大谷宗之◦郡上八幡岐阜県M-02

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る