プロフィール
今井紀子さん
有料老人ホーム・介護情報館館長、ニュー・ライフ・フロンティア取締役。医療機関の副事務長、有料老人ホームの施設長、老人保健施設の事務長などを経て現職。高齢者向けの住まい・施設を探す人や、自宅に住み続けるか住み替えるか悩む人、住み替えに不安を感じる人などから寄せられる多くの相談に応じている。
セカンドライフコラム 第4回
今井紀子さんは、有料老人ホーム・介護情報館の館長として、多くのシニア世代の相談に乗ってきました。「セカンドライフを考えるうえで、『お金』の備えは避けて通れない」という有料老人ホーム・介護情報館館長の今井さんに、資金計画の立て方について聞きました。
プロフィール
有料老人ホーム・介護情報館館長、ニュー・ライフ・フロンティア取締役。医療機関の副事務長、有料老人ホームの施設長、老人保健施設の事務長などを経て現職。高齢者向けの住まい・施設を探す人や、自宅に住み続けるか住み替えるか悩む人、住み替えに不安を感じる人などから寄せられる多くの相談に応じている。
私は多くの方から、セカンドライフの住まいやお金に関する相談をお受けしていますが、そもそも40代、50代は資金計画について「考えていない」という人が多いように感じます。それががらりと変わるのは、自分の親の介護に直面した時です。思った以上にお金がかかることに驚き、不安になるようです。
ただ、何から考えたらよいのか迷うと思います。
高齢期の暮らし方は大きく4つのパターンに分けられるので、これらを念頭に置いて「どんな暮らし方をしたいか」を考えると、将来どんなお金が必要になるのか、整理しやすくなります。
可能な限り自宅で過ごし、それが難しくなったら特養ホーム(特別養護老人ホーム)に住み替えるというものです。特養ホームは一般的に、24時間介護が受けられるうえ、公的施設なので費用が安いのが特徴です。しかし、人気が高いため入りにくく、入居まで数年待つこともざらです。多くの人がイメージする「老後」はこのパターンだと思いますが、実はそう簡単には実現できません。
パターン1と似ていますが、介護が必要になったときに、特養ホームではなく、民間の介護型ホームに住み替えます。
早いうちにセカンドライフに備えたリフォームを行い、介護が必要になったら、さまざまな在宅介護サービスを受けながら、最後まで自宅で過ごします。
元気なうちにサービス付き高齢者向け住宅や自立型ホームに住み替えて、介護が必要になった場合はそのホームの介護室に移動するか、そのホームの同系列または別企業の介護型ホームへ転居します
高齢期の暮らし方は、「どこで」「誰と」「お金をいくらかけて」を想像し、「自宅で暮らすか、施設で暮らすか」によって資金計画が変わります。
まず特別養護老人ホームは、入居一時金がかからず、利用料も支払い能力に応じて設定されるため、月額10万円以下で済むこともあります。しかし、前述の通り人気が高く、入居は順番待ちになるため、希望した時すぐには入居できないことがほとんどです。
民間の介護付きの施設(介護型ホーム)は、1,000万円前後の入居一時金のほか、月額15~25万円程度かかります。自立型ホームはそれ以上に高額で、入居一時金が3,000万円以上というところもざらです。
住み替える費用が高額になればなるほど、ご家族間のトラブルが多くなります。特に、かかわる家族の人数が多くなると、いざという時にお金の管理を誰に任せるかがトラブルの「火種」になります。昨今では、将来の”争族”を避けるために、『家族信託』を資産管理として利用する方が増えてきています。
都心の介護型ホームの場合、例えば貯金2,000万円と年金収入といった予算だと、お金が足りなくなってしまうこともあります。もちろん地方には比較的費用が低額なところもありますが、年金だけで入れる低額なホームは「手厚い対応」がなかなか期待できない場合もあります。
自宅の場合は、エリア、生活水準や暮らし方によって変わるため、ここで試算することは難しいですが、月額の固定費がある施設に比べると支出のコントロールがしやすくなります。資金面を考えると、家族や縁者などのサポートが可能ならば、できるだけ自宅で暮らすのが理想的です。
生活費以外に、月5~8万円程度の介護費用も想定しておく必要があります。自宅で介護を行う場合、手厚い対応を希望する人は介護保険サービス以外に「保険外サービス」の費用、そして歳を重ねると医療費も増えていきますので、介護費用や医療費は、多めに見積もっておきましょう。
それでは、できるだけ長く自宅で生活するためには、何が必要なのでしょうか。
一番重要なのは、「ケガをせず、健康に暮らせる住まいづくり」です。
国民生活センターの調べによると、高齢者の事故の77.1%が、住宅の中で発生しています。その半数が転落や転倒です。高齢になると、ちょっとしたケガが入院につながり、入院をきっかけに介護が必要な状態になることが多いです。安全な住まいは、健康で自立した生活を長く続けることにつながります。
高齢期を健康に暮らすためにバリアフリーとあわせて考えたいのが「温度差の解消」です。
これには辛い経験があります。2年ほど前に、同居していた母が、入浴中に意識を失い救急搬送され、そのまま亡くなったのです。がんの治療は受けていましたが、体は元気だったので本当に驚きました。その時検死をした医師には、「居間と風呂場の温度差によるヒートショックが原因だろう」と言われました。
たしかに以前から「うちのお風呂は寒いね」と言っていたのですが、それほど深刻とは思っていませんでした。でも、高齢者の体には響いていたのでしょう。「もっと早くリフォームを真剣に考えていれば」と後悔しました。
高齢になってからのリフォームは、資金的に厳しくなり選択肢も狭まるうえ、決断力も落ちて難しくなります。40~50代であれば、資金の余裕もまだありますし、情報を収集して将来を想像しながら決断する力もある。自宅で暮らし続けたいと思うのであれば、ぜひ、「ケガをしない、長く健康でいるための住まいづくり」を早めにお考えいただきたいです。
セカンドライフの備えについては、まずは知り合いに相談したくなると思いますが、たいていそれは失敗のもとです。
お金や介護、住まいなどのプロではない、知り合いのアドバイスは、その方の限られた経験をもとにしたものでしかありません。自分の条件や思いに合った結果が得られず不満が残ったり、トラブルにつながったりすることもあります。
資金や住まいの状況、健康状態、希望する暮らし方は、人によって異なります。専門知識を持ち、ご自身の状況や思いを何でも話せる、信頼できる人に相談するのが理想的です。私たちがご提供する「住まいと介護の総合相談センター」では、介護の経験や終活相談の専門資格を持つスタッフが、セカンドライフに関するごさまざまな相談をお受けしていますので、こうした窓口を活用するのも一つの方法です。
セカンドライフの資金計画というと、難しそうでつい後回しにしてしまうかと思いますが、そんなことはありません。4つのパターンを念頭に置いて考えれば、それほど難しくはありません。むしろ、後回しにする方がリスクは大きい。ぜひ早めに備え、今を楽しみながら豊かなセカンドライフを実現していただきたいと思います。
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