乾燥野菜を始めよう

「野菜を干す」ことは現代の私たちにはなじみが薄く、縁遠いと思われるかもしれません。でも簡単な上に野菜がおいしくなる魔法のようなワザなのです。

Point1

干すと旨味が凝縮

廣田さんの干し野菜作りの始まりは、ほんの小さなきっかけだった。ある農家さんのお手伝いをして、食べきれないほどのミニトマトを収穫。どうやって保存するのかを考え、思いついたのはオイル煮、ジャム。けれど、甘いのも脂っこいのも好きじゃない。
そこで何気なく干してみることに。「試しに朝ミニトマトを半分に切って、ざるに広げておきました。夕方味見した時のおいしいこと!あの衝撃は忘れられません」
そこからどっぷりとはまった干し野菜作り。特に廣田さんが推奨しているのはセミドライ。半日から1日干すだけの手軽さながら、生野菜とはまったく別物のおいしさに。野菜の甘みが強くなり味が濃くなる他にも、調理する時に火の通りが早くなる。大根などは干してから煮物にすると、煮崩れをしにくくなるとだとか。
「旨味がぎゅっと詰まった干し野菜なら、出汁や調味料がほとんど必要ありません。干し野菜で料理を始めてから、料理が上手になったと言われるようになりました」
特に最近注目されているのが低カロリーでヘルシーなエノキタケ。干すことで旨味が増すものの中ではトップクラスだとか。2〜3日干して保存しておけば、干しエノキ自体を出汁として使うことができる。もちろん、そのまま具材としてもおいしく食べられる。
「まとめて切って干して保存をしておけば、料理作りに包丁を使うことがぐっと少なくなるんです。毎日の食事作りがとても楽なんですよ。おいしくなって楽できるんだから、最高です」

干し野菜は難しくない。実は干すスペースもそんなに必要がない。もっとも廣田さん自身も、東京都内のベランダで干し野菜を作っているのだ。 「朝干しておいて、帰ってから取り込めばいいんです。仕事している間に、おいしくなるんだから、忙しく働いている人にこそおすすめしたいですね」 都会で暮らしていると、毎日の天気予報も気にしなくなるもの。 「干し野菜を始めてからは、空を見上げるようになりましたね。それに風も感じるようになりました。干し野菜には太陽と風が必要ですからね」 いいこと尽くめの干し野菜、ぜひトライしてみて。

Point2

乾燥野菜の作り方。

干す場所や時間は?

日光が当たる、風通しの良い場所に干しましょう。数時間から半日干して様子を見て、足りない場合は1〜2日ほど追加して。皮にしわが寄っている、白い粉がふいている、しんなりしている、などが取り込む目安。カビの原因になるので夜は室内に入れましょう。

どうやって干す?

干しかごやざるなど、風をよく通すものに野菜を置いて。洗濯用のピンチに留めたり、ケーキクーラーに置いてもよいでしょう。皮のある野菜は、皮を下にして置いて。乾燥しにくくなるのでキッチンペーパーや新聞紙などは下に敷きません。

下処理は?

野菜をよく洗い、水分をしっかりと拭き取りましょう。厚みや切り方はお好みで、皮はむかずにそのままで。用途が決まっていない場合は、厚めに切っておくとよいでしょう。新鮮な野菜を使うとより一層おいしくなります。

保存方法は?

セミドライの場合は保存袋に入れて冷蔵庫で保存し、3〜4日で使い切りましょう。冷凍すれば長く使えます。からからに干した場合は、瓶や保存袋に入れ、乾燥剤を入れて常温保存を。心配な場合は冷凍すると安心です。

乾燥野菜に挑戦!

○きゅうり
きゅうりを干すと青臭さが取れ、ぽりぽりとおやつのように食べられます。干すことで加熱調理向きの食材に変身!

●切り方/8mmぐらいの厚めのスライス、3〜5mmの薄めのスライス、輪切り、拍子切りなど。日差しや風が強い日は、縦半分がおすすめ。
●干し時間/数時間から1日で半生に。
●目安/表面がしんなりするまで。

○にんじん
皮をむかずに切って干して。干すことで甘みが倍増! 完全に干したにんじんの戻し汁は、まるでジュースのよう。

●切り方/3〜5mmの千切り、1cm程度の厚めの輪切り、乱切り、太目の拍子木切りなど。
●干し時間/数時間〜1日。
●目安/千切りはふにゃっとするまで。他は白っぽくなるまで。

○トマト
ミニトマトだけでなく、普通のトマトもドライにできる。種を取り除き、水分を拭いてから干そう。煮込み料理の出汁に。

●切り方/ミニトマトは半分にカットし、普通のトマトは6〜8等分ぐらいのくし切りにする。
●干し時間/数時間〜2日。
●目安/表面がしわしわになるまで。 
※すぐに使わない場合は冷凍保存がおすすめ。

○だいこん
だいこんのクセがすっかり消えて、食べやすくなる。皮付きのまま干すと、たくあんのような歯ごたえが楽しめる。

●切り方/1〜2cmの厚切り、1cmほどの拍子木切り、千切り。葉っぱはそのまま。
●干し時間/数時間〜2日。厚切りは半日〜2日。切り干し大根は2〜4日。
●目安/しんなりするまで。切り干し大根は完全に乾くまで。

○きのこ類
旨みと香りが凝縮され、出汁としても使えるきのこ。干し野菜ビギナーにおすすめ。洗わずに干して。

●切り方/しいたけは丸干しかスライス、しめじやまいたけ、エノキタケは小房に分けて、エリンギは縦に割く。
●干し時間/数時間〜2日。
●目安/しんなりとするまで。カラカラになるまで干せば、常温で長期保存可能。

○くだもの
野菜だけでなく、ドライフルーツのもチャレンジ! 生で食べて甘み足りないと感じた時に干してみて。

●切り方/キウイ、リンゴ、バナナなどを5〜8mmにスライスする。
●干し時間/皮を下にして、半日〜3日。
●目安/完全に乾燥するまで。※完全に乾燥すれば、常温で保存可。りんごは冷凍するとおいしい!

Point3

干し野菜のレシピ

冷蔵庫に干し野菜があるだけで、ぱぱっとご飯が作れて便利。廣田さんのとっておきレシピをご紹介。


きゅうりのツナ玉炒め

きゅうりの常識をくつがえす、干しきゅうり。干すと炒めものに抜群に合うんです。

[材料]
きゅうり…2本
卵…1個
ツナ缶…1缶
削り節…1つまみ
しょう油…適宜
塩…適宜
炒め油…適宜

[作り方]
1.きゅうりを1cmぐらいの輪切りにし、セミドライにする。
2.温めたフライパンに油を引き、きゅうりを焼く(焼き目をつけたいので、いじらないでじっくり焼いてください)
3.きゅうりの両面に焼き目が付いたら、ツナを入れひと混ぜする
4.ツナが香ばしくなってきたら、塩で味付けし、溶き卵をまわし入れてふんわりまぜる。鍋肌からしょうゆを少々入れ、火を止める
5.かつおぶしを入れて完成。お好みで一味や酢を少々入れても美味しいです


ラタトゥイユ

菜から出る旨味が調味料!ほとんど味付けなしでびっくりするほどおいしい。

[材料]
トマト…2個
きゅうり…1本分
なす…1個分
パプリカ(赤・黄)…各1/2個分
玉ねぎ…1/2個
にんにく…1/2片
酢…小さじ1
塩…適量
タイム…適量
オリーブ油…大さじ1

[作り方]
1.トマトは1cmのくし切り、きゅうりは輪切り、なすとパプリカは乱切りにしてセミドライする。
2.玉ねぎはスライスに、にんにくはみじん切りにする。
3.フライパンに、にんにくとオリーブ油を入れ、火にかける。
4.香りが出たら、1を入れ、塩とタイム、大さじ1の水(分量外)を入れ、弱火で蓋をして煮込む。
5.野菜に火が通ったら、酢を入れ、さっと炒めて火を止める。


きのこのスープ

干しきのこを冷凍しておけば、すぐできる。肌寒くなる季節に、ほっとするスープ。

[材 料]
好みの干しきのこ…50g
(セミドライ) にんにく…1片
豆乳…3/4カップ 水…1カップ
コンソメ(顆粒)…小さじ1と1/2
塩・こしょう…少々バター…5〜10g
塩・こしょう…少々
パセリ…適宜

[作り方]
1.熱した鍋にバターとにんにくを入れる。
2.香りがたったらきのこを入れて炒め、水とコンソメを加えて弱火で煮る。
3.ツきのこがやわらかくなったら豆乳を加え、塩、こしょうで味を整える。
4.仕上げにパセリを散らす

[教えてくれた人]
廣田友希さん
干し野菜研究家、フードコーディネーター。料理道具の店『つきじ常陸屋』三代目。2011年には常陸屋アメリカ・ロサンゼルス店をオープン。日米を行き来しながら、干し野菜の講座や、都会と農業をつなぐ活動を展開している。