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ウォン・カーウァイ監督が世界に知られるきっかけとなった1994年の香港映画。前半と後半で別のストーリーが描かれ、映画を観ていくうちに、それぞれの登場人物が交錯し、二つの物語が同じ場所で同時に起きていることがわかる。本文では触れなかった前半は、金城武演じる失恋したばかりの青年とトレンチコートに身を包んだブリジット・リン演じる謎の美女の物語。
『恋する惑星』
監督:ウォン・カーウァイ
出演:トニー・レオン、フェイ・ウォン、金城武、ブリジット・リン
『恋する惑星』
価格 ¥3,990(税込)
発売元:アスミック・エース
販売元:角川書店
この映画が日本で公開されたのは1995年。渋谷のミニシアターで公開され、大ヒットしたのを懐かしく思い出す人もいるだろう。この作品を機に日本の若い人たちに熱狂的に受け入れられたウォン・カーウァイ監督は、当時30代。これまでの香港映画とは違う流れの、何とも似ていないこの作品は、監督が50代になった今観ても、いつでも新しく色褪せない。若い季節に誰もが味わう切なさやときめき…恋する感覚をこんなに新鮮なまま閉じ込めることに成功した映画は稀有だと思う。今観ても、そんな感覚が解凍されて、心が甘くつつかれる。
この映画を見て金城武のファンになった人も少なくないようだが、やはり鮮烈なのは、後半のヒロインを演じる香港のシンガー、フェイ・ウォンのかわいさだろう。ベリーショートの黒髪がよく似合う、ファストフード店で働くフェイは、トニー・レオン演じる警官に恋している。ひょんなことから彼のマンションの鍵を手に入れた彼女は、なんとその部屋にそっと忍び込んで、失恋したばかりの恋人の痕跡が残る彼の部屋を少しずつ変えていく。フェイ・ウォン自身が歌うクランベリーズのカバー曲「夢中人」をバックに、彼女がひとり踊るように模様替えをする場面は、映画史に残したい名シーン。この部屋が、この後半パートを担当したカメラマン、クリストファー・ドイルの部屋だというのは有名な話で、恋するフェイの視点から見たような、ふんわりとした昼の光に包まれた部屋は、窓際の白い鉄柵や、さっくりとしたグリーンの壁など、爽やかさと程よい生活感がミックスしていて何とも魅力的。映画を観た人の記憶の中に住み続ける部屋なのではないかと思う。あの名シーンのときめきと共に。
文◎多賀谷浩子(映画ライター)
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