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『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』や『ダージリン急行』など、黄味がかったおしゃれな映像と独自のセンスで、ユーモラスな世界を描いてきたウェス・アンダーソン監督の作品。ブルース・ウィリスやエドワード・ノートン、ビル・マーレイほかハリウッドの豪華俳優陣が結集し、12歳のカケオチを見守る小さな島の騒動が愛しくユーモアたっぷりに描かれる。
『ムーンライズ・キングダム』
監督:ウェス・アンダーソン
出演:ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイほか
『ムーンライズ・キングダム』
8月2日(金)発売 DVD 4,095円
発売・販売元:ハピネット
オープニングは、子どもが描いたような、個性的でかわいい家の絵。そのままカメラが横にスライドしていくと、楽しいインテリアの部屋が実写で現れ、さらに横に移動すると、また別の部屋が、その横にもまた部屋が…一体どこまで続いているの?という具合に、奇想天外なアイディアのミッドセンチュリーモダン風の部屋が次々とスクリーンに現れる。
忍者屋敷のごとく、観る人をあっと楽しませる遊びが随所にちりばめられたこの家は、実際に考えるとありえない間取りも手伝って、どこかマンガの世界のよう。ハリウッドで活躍する豪華俳優陣が演じる登場人物たちも皆、ほのかにユーモラスで、センスよく実写化されたマンガの世界にやってきたような気分になる。
舞台となっているのは、1965年。アメリカ・ニューイングランド沖の小さな島。事件は、12歳のサムがボーイスカウトを脱走したことから始まる。目的は、なんとカケオチ。相手は、1年前に出会った同じ年の少女・スージー。高嶺の花という風情の美少女・スージーが最初からスクリーンに登場しているのに対し、サムはなかなか現れない。脱走したサムを探して、演技派エドワード・ノートン演じるおかしな隊長や、ブルース・ウィリス扮する味わい深い警官など、島の人たちが騒ぎ出した頃、いよいよ本人登場──と現れたサムは、丸メガネを鼻にかけたのび太くん≠ンたいな少年。これって、のび太くんとしずかちゃんだ!と、ドラえもんの世界に迷い込んだような楽しさにワクワクする。二人のカケオチをめぐって、島の人たちが巻き起こすおかしな騒動の結末は? 楽しく、かわいく、センスよく。どこか子ども時代の哀感を漂わせたキングダム>氛泱イの王国が、広がっている。
文◎多賀谷浩子(映画ライター)