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『オールド・ボーイ』で世界に衝撃をもたらした韓国の鬼才パク・チャヌクがハリウッドで手がけたサスペンス。父親が急死した18歳の少女とその母のもとに、長年、行方不明だった叔父が現れる。その日から、二人の周囲では、謎めいた事件が起こりはじめる。長年、海外を旅していたという叔父だが、果たして、その正体とは――?
『イノセント・ガーデン』
監督:パク・チャヌク
出演:ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン、マシュー・グードほか
『イノセント・ガーデン』
発売・販売元:20世紀フォックスホーム
エンターテイメント
DVD 3,800円(税別)
かわいらしさの反面、どこかに怖さを秘めた「不思議の国のアリス」。映画『イノセント・ガーデン』は、そんなアリスのダークサイドを思わせるような美しいサスペンスだ。
主人公は、五感が敏感すぎることから、不安定な揺らぎと孤独を抱える少女・インディア。18歳の誕生日に、大好きだった父が急死し、音信不通だった叔父が現れたことから、物語がはじまる。
父と不仲だった母は、喪が明けぬうちに叔父と仲良くなり、インディアは母への不信感を募らせる。一方で、美しく謎めいた叔父に、どこかで惹かれている。二人が一緒にピアノを奏でる場面が美しい。共に敏感すぎる五感をもつ彼女と叔父は、互いに共鳴するものを感じ合う。そんな三人の関係が魅惑的な手触りで描かれる。
美しく研ぎ澄まされた映像は、視覚と聴覚の冴えわたるインディアが感じる世界。小さな音も拡大され、鮮やかすぎる世界が彼女の神経を尖らせる。彼女が世界に抱く恐れを、らせん階段が印象的な大きな邸宅のペールグリーンの壁が象徴しているかのよう。
やがて、母娘の周りでは、ひとり、またひとり人が消えていく。その謎を解くひとつの鍵が、毎年、彼女の誕生日に届く靴の贈り物。それが並ぶベッドに彼女が横たわる場面の美しさ。そんな映像の妙が、この映画には溢れている。
アリスのワンシーンのような、白と黒の市松模様の床のダイニングキッチンも面白い。奇しくも、インディアを演じるのは『アリス・イン・ワンダーランド』でアリス役を演じたミア・ワシコウスカ。まだ世界を知らない、そして自分を知らない敏感な少女が辿り着いた結末とは――? ラストまで観ると、ファーストシーンがまったく違って見えてくる。
文◎多賀谷浩子(映画ライター)