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interview

日本の伝統と
幼少期に出逢う

株式会社和える 代表取締役
矢島 里佳さん

日本の伝統を次世代につなぎたい―
自らが魅せられた、日本の伝統の職人さんが生み出すものを、
自然と暮らしの中で活かしていきたい。
「和える」代表の矢島さんは、
そう考えて、“0から6歳の伝統ブランドaeru”をスタートさせた。

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  • 日本には、先人の智慧が宿る伝統が残っています
    職人さんの仕事を拝見すると、「どのようにして、この美しい色を出すのだろう?」「なぜこの道具を使うのだろう?」と、製作工程の一つひとつに驚きがあります。伝統は衣食住、つまり暮らしと深く結びついていて、何百年もの歴史を経て、試行錯誤の末に生まれた先人の智慧の蓄積。日本の宝です。しかし、産業としては規模が縮小を続け、職人さんの平均年齢も高く、今こそ、私たちが伝統を次の世代に伝えていかなくてはいけない時だと感じました。

    その智慧を次世代に引き継ぐ仕組みをつくりたい
    私たちは、社会の求めに応じて、その伝統に宿る智慧を活かしていきたい。和えるは、“先人の智慧” と “現代を生きる私たちの感性や感覚” を和えて、豊かな暮らしを次世代につなぐ仕組みをつくりたいと考えています。そして、まずはじめに、全国各地の職人さんと一緒に、幼少期から大人になっても一生暮らしに寄り添い続ける、オリジナル商品をお届けする“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げました。
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  • 「使ってほしい」をカタチに
    私たちは何が売れるかではなく、子どもたちに本当に使ってほしいもの、役に立てるものは何かを徹底的に考えます。たとえば、aeruの『こぼしにくいコップ』はあえて取っ手をつけず、子どもが両手で持ったときに支えやすく、落としにくいように段差をつけました。小さな両手でも包むように持つことができ、しっかりと支えられます。両手でモノを丁寧に扱うという、日本らしい美しい所作が自然と生まれるカタチです。

    コミュニケーションもデザインしました
    『こぼしくいコップ』は、たっぷりの量を飲めない子どもでもゴクゴクと飲み切ることができ、おかわりがしたくなるようなサイズにしました。「あとどれくらい飲める?」と聞いてあげれば、子どもは自分で考えて「いっぱい」とか「はんぶん」と答えます。そうした親子のコミュニケーションをデザインしたいという想いを込めました。

    日本各地の職人さんがつくっています
    『こぼしにくいコップ』は、青森の津軽塗り、沖縄の琉球ガラス、福岡の小石原焼でお作りしています。津軽塗りのコップは、漆の上に菜種でつけた模様が特徴的な「七々子塗り」という技法や、違う色の漆を塗り重ねて研ぎ出すことで生まれる模様の「唐塗り」の技法を用いています。琉球ガラスは、透き通った淡い色と、沖縄の海を思わせる細かい泡が見た目にも涼やか。どのコップも、それぞれの産地に受け継がれてきた伝統の技術と、職人さんの想いがこもった一品です。
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  • 子どもは直感的に本物を選びます
    「子どもが、そのおわんじゃなきゃ嫌だと言うんです」、「嫌いな野菜を食べるようになりました」などと、お客様からお声をいただくこともあります。赤ちゃんや子どもたちは、手で触れた時の心地よさを直感的に感じているようです。感性が豊かに育まれる幼少期にこそ、本物に触れて感性のスタンダードを育んでもらいたいと思っています。こだわりのないモノばかりに囲まれていると、扱いがいい加減になってしまうこともあるかもしれませんが、お気に入りのモノがあると大事にしようという心が自然と育まれるのではないでしょうか。

    長く暮らしに寄り添うためのお直し
    職人さんが丁寧に作ったものを、暮らしの中で長くお使いいただきたい。そのため、陶磁器・ガラスが欠けたり割れたりした際は金継ぎ・銀継ぎ、漆器は塗り直し・艶直し、『手漉き和紙のボール』は漉き直しという方法で、お直しを承っております。aeruのお直しを選択される方は、年々増えています。お直しをすることで、大人になってもずっと使い続けられることを知っていただけたら嬉しいです。

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    陶磁器やガラスは、金継ぎ・銀継ぎといった伝統的な技法でお直しします。長く暮らしに寄り添う愛着のある器であってほしいと思っています。

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    『こぼしにくい器』は、内側に”返し”があるので、柔らかいおかゆも、こまかく刻んだお野菜も、上手にすくえるカタチです。

  • 家族で、aeruのファンに
    赤ちゃん・子どもから大人も使えるデザインなので、ご家族みんなでお揃いで使うこともできます。実際に、コップや器などを使う子どもたちの様子を見て、ご家族の方もaeruの商品をお選びいただくこともあります。たとえば、それぞれが色違いのコップを使うと、食卓が鮮やかで楽しくなりますね。そうして、子どもから大人へ、贈った方から受け取った方へと、伝統の魅力が伝わる。そういった良い循環が動き出しています。

    ゆるやかな経済成長と心の豊かさのバランス
    私たちの世代は、必要なモノはほとんど揃っている時代に生まれ育ちました。そのため、モノへの執着が少なく、モノに込められた想いやストーリーを大切に考える方が多いと感じます。たくさんのモノよりも、自らが認めた心を豊かにしてくれるモノと暮らしたいという方が増えています。現在はまだ、経済成長を前提とした社会ですが、これからは、ゆるやかな経済成長と心の豊かさのバランスが必要だと考えています。和えるでは、300人を超える職人さんとのつながりと、先人の智慧を活かして、文化と経済両輪での成長を目指せる企業の在り方に挑戦し続けています。

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profile

矢島 里佳さん
矢島 里佳さん
株式会社和える代表取締役。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。大学4年時の2011年3月、「日本の伝統を次世代につなぐ」株式会社和えるを創業、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。日本全国の職人と共にオリジナル商品を生み出す“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げ、東京・京都に直営店を出店。その他、日本の伝統を暮らしの中で活かしながら次世代につなぐ様々な事業を展開している。

関連サイト
株式会社和える
0から6歳の伝統ブランドaeru

information

和える-aeru- 伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家
『和える-aeru- 伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家』
和える代表の矢島里佳さんの幼少期から、和えるを創業するまでの物語。当時19歳の矢島さんが職人さんとなぜ出逢い、なぜ大学4年生で和えるを生み出すことになったのか、和えるにかける想いをまとめた一冊。2014年7月発行(早川書房)



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