表紙の「倍数計算表」は、レオナルド・ダ・ヴィンチの直筆数字の宝庫です。まるで、私たちのカレンダーのために書き残してくれたような、味わいのある数字たちです。今回は、同時代の人に対し何世紀も先んじた能力と感性を備えた万有の天才(uomo universale)の、主に知られざる面に光をあて、ご紹介します。レオナルド・ダ・ヴィンチは非嫡子であったため、教育を受けられませんでしたが、14歳頃フィレンツェの工房に弟子入りさせられます。当時の工房は実践的な学校のようなもので、そこでは主にメディチ家からの注文を手がけ、絵画はもとより彫刻、家具調度、建築、音楽など、あらゆるジャンルのものをデザインし製作していました。レオナルドもここでいろいろな才能を開花させたことでしょう。30歳頃ミラノに行き、君主のおかかえ建築家、軍事技師、画家、遊戯係として仕えます。特筆すべきは、当時ペストが流行し、ミラノもその被害を受けていたのですが、レオナルドの描いた都市計画図は画期的なものでした。解剖学者、数学者、機械工学者、飛行学者、水利学者、発明家など、その才能の多岐にわたること枚挙にいとまがありません。
1月 | 愛の金言2小節 | レオナルドの作った言葉とメロディ。楽器も考案して手作りした。 |
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2月 | 老人と若者の横顔 | 対照させて描くことで、物語を際立たせよと教えている。 |
3月 | 教会建築のスケッチ | 建築のアイデアと理論を視覚化させる、重要な役割を果たしていた。 |
4月 | 少女と一角獣の習作 | オックスフォード・アッシュモレアン博物館所蔵の素描。 |
5月 | 光の効果と変化の証明 | 人の横顔を山のように見立て、顔にあたる光の効果と変化を描いている。 |
6月 | 鳥の飛翔 | 鳥に関する論文を4巻に分けて書いたとかなり自信を覗かせている。 |
7月 | 果物の聖母子 | 最も少ない線で、しあわせそうな聖母子を描くことに成功している。 |
8月 | 飛翔の力学 | 空への憧れは、思考を超え、実践へと進んでいく。 |
9月 | 特徴ある人々の頭部のスケッチ | こうした人物像を描く修練がやがて『最後の晩餐』へつながる。 |
10月 | 都市計画図 | ペストの流行は都市構造の欠陥によると考え、画期的な案を描いた。 |
11月 | 女性の頭部の習作 | レオナルド主導『岩窟の聖母』の天使のもととなるデッサンと考えられる。 |
12月 | 『最後の晩餐』のための習作 | ユダだけがテーブルの左手前側に座る、初期の習作。 |