相続した不動産の売却にかかる税金|譲渡所得・取得費加算・控除の全体像
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相続した実家や土地を売ると、利益が出た場合に税金がかかります。「相続税を払ったのに、売ったらまた税金がかかるの?」と驚かれる方も多いのですが、相続にかかる税金と、売却にかかる税金は別のものです。
一方で、相続した不動産の売却には負担を軽くできる特例がいくつか用意されています。とくに相続財産を売ったときの取得費加算の特例と相続した空き家の3,000万円特別控除は、使えるかどうかで手取りが大きく変わる可能性があります。本記事では、相続した不動産の売却にかかる税金を全体像から整理し、どの特例を検討すべきかまでを解説します。
この記事の結論(先に要点)
相続した不動産を売って利益(譲渡所得)が出たときに所得税・住民税がかかります。税率は所有期間で変わり、相続の場合は亡くなった方の所有期間を引き継ぐため多くは長期(所得税15%+住民税5%)です。負担を軽くする主な特例は①取得費加算と②空き家の3,000万円特別控除で、この2つは重ねて使えません。どちらが有利かを含め、適用判断は必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。実家をどうするか全体像から知りたい方は「親の家をどうする?実家の片づけ・処分・活用の選択肢と進め方」もあわせてご覧ください。
この記事でわかること(目次)
1. 相続の税金と売却の税金は別物
まず整理しておきたいのが、この2つの違いです。
| 税金 | かかる場面 | 納める人 |
|---|---|---|
| 相続税 | 財産を相続したとき(基礎控除を超える場合) | 財産を相続した人 |
| 譲渡所得税(所得税・住民税) | 相続した不動産を売って利益が出たとき | 売却した人 |
相続税を払ったかどうかにかかわらず、売って利益が出れば譲渡所得税がかかります。逆に言えば、利益が出なければ原則として課税されません。まずは「いくらの利益が出るのか」を計算することが出発点になります。
2. 売却でかかる税金・費用の一覧
売却の場面で発生する主な税金と費用を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所得税・住民税 | 譲渡所得(売却の利益)に対してかかる。利益が出なければ原則かからない |
| 復興特別所得税 | 令和19年までは基準所得税額の2.1%が加算される |
| 印紙税 | 売買契約書に貼る。売買価格に応じた額 |
| 登録免許税 | 相続登記(名義変更)や、住宅ローンが残っていた場合の抵当権抹消にかかる |
| 仲介手数料 | 仲介で売却した場合に不動産会社へ支払う。宅地建物取引業法による上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」(売買価格400万円超の場合)。 ただし売買価格800万円以下の物件については、通常の計算による上限を超えて、税込33万円まで受け取れる特例があります(空き家の流通を促すための制度で、令和6年7月に見直されました)。相続した実家はこの価格帯に入ることも多いため、実際の金額は媒介契約の前に不動産会社にご確認ください |
売却にかかる費用の全体像は「不動産売却にかかる税金を完全ガイド」でも解説しています。ここからは、相続した不動産に特有の論点に絞って見ていきます。
3. 譲渡所得の計算方法
税金の対象となる譲渡所得は、次の式で計算します。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却代金 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
取得費=その不動産を買ったときの価格や購入時の費用(建物は減価償却後の金額)/譲渡費用=仲介手数料・印紙税・取り壊し費用など、売るために直接かかった費用
3-1. 相続で見落とされがちな「取得費」の考え方
相続した不動産の取得費は、相続したときの評価額ではなく、亡くなった方が買ったときの価格を引き継ぎます。ここを誤解していると、税額の見込みが大きくずれてしまいます。
注意:取得費が分からない場合は税負担が重くなりやすい
親が何十年も前に購入した実家では、購入時の契約書が見つからないことが少なくありません。取得費が不明な場合、売却代金の5%を取得費とみなす方法があります。この場合、売却代金のほとんどが利益として計算されるため、税負担が大きくなりやすい点に注意が必要です。だからこそ、次章以降の特例が使えるかどうかが重要になります。
まずは実家に購入時の売買契約書・領収書・登記関係の書類が残っていないか探してみましょう。
4. 税率は所有期間で決まる(相続は期間を引き継ぐ)
譲渡所得の税率は、売った年の1月1日時点での所有期間によって2段階に分かれます。
| 区分 | 所有期間(売った年の1月1日時点) | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 15% | 5% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
※上記のほか、令和19年までは復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加算されます。
ここで重要なのが、相続で取得した不動産は、原則として亡くなった方が所有していた期間を引き継いで判定するという点です。相続してすぐに売っても、親が長く所有していた実家であれば長期譲渡所得として扱われるのが一般的です。「相続直後に売ると税率が高くなるのでは」と心配される方がいますが、その必要はないケースが多いといえます。
5. 特例① 相続財産を売ったときの取得費加算
相続税を納めた方が使える可能性があるのが、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算)です。支払った相続税のうち、売却した不動産に対応する部分を取得費に加算できる制度です。取得費が増えれば譲渡所得が圧縮され、結果として税負担が軽くなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な要件 | ①相続または遺贈により財産を取得した人であること ②その人に相続税が課税されていること ③期限内に譲渡すること(下記) |
| 期限 | 相続の開始があった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡すること |
| 加算額 | その人が納めた相続税額のうち、売却した不動産に対応する部分を加算します。 おおまかには「相続税額 ×(譲渡した資産の相続税評価額 ÷ その人が相続などで取得した財産の価額)」という考え方です。 ※特例を適用しないで計算した譲渡益が上限 ※実際の算式の分母は、取得財産の価額に相続時精算課税適用財産の価額・暦年課税分の贈与財産の価額を加えたものとされています。正確な計算は税理士または所轄の税務署にご確認ください。 |
相続税の申告期限は原則として被相続人の死亡から10か月です。したがって、この特例の期限はおおむね相続開始から3年10か月ほどと考えるとイメージしやすくなります。
ポイント:相続税を払っていないと使えません
この特例は相続税が課税されていることが前提です。相続税には基礎控除があり、財産が基礎控除の範囲内であれば相続税はかかりません。その場合、この特例は使えないため、次章の空き家の3,000万円特別控除が使えるかを検討することになります。
6. 特例② 相続した空き家の3,000万円特別控除
相続した実家が空き家だった場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特別控除の特例」といいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除額 | 最高3,000万円(この特例の適用を受ける相続人が3人以上の場合、令和6年1月1日以後の譲渡については最高2,000万円) |
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること |
| 売却代金 | 1億円以下であること |
| 売却の期限 | 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 制度の期限 | 平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象 |
| 家屋の状態 | 一定の耐震基準を満たすか、取り壊して敷地を売ること |
このほかにも、相続の直前に被相続人が一人で住んでいたこと、相続後に賃貸や居住の用に使っていないことなどの要件があります。要件の詳細は「相続した空き家の3,000万円特別控除」でくわしく解説しています。
7. 2つの特例はどちらを選ぶ?
ここが重要なポイントです。取得費加算の特例と、空き家の3,000万円特別控除は、重ねて適用することができません。どちらか有利なほうを選ぶことになります。
| 取得費加算 | 空き家の3,000万円控除 | |
|---|---|---|
| 前提 | 相続税を納めていること | 相続税の納付は要件ではない |
| 建物の要件 | なし | 昭和56年5月31日以前の建築/耐震基準または取り壊し |
| 売却代金の上限 | なし | 1億円以下 |
| 期限 | 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(制度の期限もあり) |
| 効果の傾向 | 納めた相続税額が大きいほど効果が大きい | 利益が大きいほど効果が大きい(最高3,000万円) |
一般的には、相続税を多く納めた場合は取得費加算、相続税がかからず利益が大きい場合は空き家の3,000万円控除が候補になりますが、実際にどちらが有利かは売却価格・取得費・納めた相続税額によって変わります。両方の要件を確認したうえでの比較が必要になるため、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。
8. 確定申告の要否と期限
売却によって譲渡所得が生じた場合は、原則として確定申告が必要です。
- 申告の時期:売却した年の翌年2月16日から3月15日まで(住民税は申告内容に基づいて後日通知されます)
- 特例を使う場合も申告が必要:特例によって結果的に税額がゼロになる場合でも、その特例の適用を受けるには確定申告が必要です。申告をしないと特例が使えません。
- 主な必要書類:売買契約書の写し、取得費・譲渡費用が分かる書類、登記事項証明書など。特例を使う場合は、それぞれの特例に応じた書類(自治体が発行する被相続人居住用家屋等確認書など)が必要になります。
「税金がかからないから申告不要」ではありません
特例を使って税額がゼロになるケースでも、申告して初めて特例が適用されます。うっかり申告を忘れると、本来なら払わずに済んだ税金を求められることがあります。売却した翌年には必ず手続きが必要になると考えておきましょう。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 相続した不動産を売ると、どんな税金がかかりますか?
売却によって利益(譲渡所得)が出た場合に、所得税・住民税がかかります。譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算し、利益が出なければ原則として課税されません。このほか、売買契約書に貼る印紙税や、相続登記・抵当権抹消にかかる登録免許税などの費用も発生します。なお、相続そのものにかかる相続税は、売却時の所得税・住民税とは別の税金です。税額の計算は他の所得や控除の状況によっても変わるため、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
Q2. 相続した不動産の譲渡所得の税率はどれくらいですか?
売った年の1月1日時点での所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となり、所得税15%・住民税5%です。5年以下の場合は短期譲渡所得となり、所得税30%・住民税9%です。これらに加えて、令和19年までは復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加算されます。相続で取得した不動産は、原則として亡くなった方が所有していた期間を引き継いで判定するため、多くの場合は長期譲渡所得に該当します。実際の税額は個別の事情により異なるため、税理士または税務署にご確認ください。
Q3. 取得費加算の特例とはどんな制度ですか?
相続や遺贈で取得した財産を売却した場合に、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例です。取得費が増えることで譲渡所得が圧縮され、結果として所得税・住民税の負担を軽くできます。適用には、相続または遺贈により財産を取得した人であること、その人に相続税が課税されていること、そして相続の開始があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡することが必要です。相続税の申告期限は原則として被相続人の死亡から10か月です。適用の可否や計算は税理士または税務署にご確認ください。
Q4. 相続した不動産を売ったら確定申告は必要ですか?
売却によって譲渡所得が生じた場合は、原則として確定申告が必要です。申告と納税は、売却した年の翌年2月16日から3月15日までの期間に行います。また、譲渡所得が特例によって結果的にゼロになる場合でも、その特例の適用を受けるためには確定申告が必要です。申告をしないと特例が使えず、本来より税負担が重くなることがあります。売却の翌年に必ず手続きが必要になると考えておきましょう。申告が必要かどうかの判断や書類の準備は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
10. 相談先を選ぶときの3つの視点
相続した不動産の税金は、「いつ売るか」で使える特例が変わるという特徴があります。税務の判断と不動産の実務がかみ合って初めて、特例を活かせます。
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視点① 特例の期限を意識して売却の段取りを組んでくれるか
取得費加算も空き家の3,000万円控除も、期限内の売却が要件です。買主を探す期間や、取り壊し・耐震改修が必要な場合の工期を織り込んで逆算してもらえるかどうかで、間に合うかが変わります。
👉 適用の可否そのものの判断は税理士または税務署が行います。不動産会社には「期限に間に合うスケジュール」を一緒に組んでもらいましょう。
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視点② 建物の価値まで評価できる査定手法を持っているか
築年数のみで判断するのではなく、建物の性能や維持管理の履歴も踏まえて評価できるかどうかで、長く大切にされてきた実家の査定額の納得感は変わります。
👉 一例として、ミサワホームを含む大手ハウスメーカー10社が設立した「一般社団法人 優良ストック住宅推進協議会」の評価基準に基づく査定では、築年数に加えて建物の性能や維持管理の履歴なども評価の対象とされています。※この評価基準は、協議会に加盟する大手ハウスメーカー10社が手がけた建物を対象としています。
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視点③ 税理士・司法書士と連携して進められるか
税の特例は税理士や税務署、相続登記は司法書士と、関わる専門家が分かれます。自分で一つひとつ探して調整するのは負担が大きいため、まとめて相談できる相手だと安心です。
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11. まとめ:特例の期限から逆算する
相続した不動産を売って利益が出た場合に、所得税・住民税がかかります。税率は所有期間で決まり、相続では亡くなった方の所有期間を引き継ぐため、多くの場合は長期譲渡所得(所得税15%+住民税5%)です。
負担を軽くする主な特例は①取得費加算と②空き家の3,000万円特別控除の2つで、重ねて使うことはできません。どちらにも期限があり、売却には買主を探す期間もかかるため、期限から逆算して動くことが何より大切です。
まずは実家が今いくらで売れそうかを把握しましょう。売却価格の見込みがわかれば、どの特例が有利かの検討にも進めます。MISAWA RELAY では、実家の無料査定から、期限を意識した売却スケジュールのご提案、必要に応じた専門家との連携まで、家活コンシェルジュがワンストップでサポートします。なお、税額の計算や特例の適用判断は、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。
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※本記事は情報提供を目的とした一般的な解説であり、特定の不動産取引や個別の判断に関する助言ではありません。具体的なご判断は、宅地建物取引士・税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。
※本記事で解説する税率・特例の要件・控除額・適用期限は一般的な目安であり、適用の可否や実際の税額は個別の事情によって異なります。計算・適用判断は、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。
※税制は改正される場合があります。記載内容は2026年8月時点の情報に基づいており、最新の情報は国税庁ホームページや所轄の税務署でご確認ください。
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