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interview

木の美しさを
感じて暮らす

寄木細工職人
露木 清高さん

多種多様な木材の天然色を活かし、
木の美しさを、より美しく引き出していく「寄木細工」。
今回は、「寄木細工」の技巧を磨き、
生活道具にまで領域を広げている
露木清高さんに、木の魅力を聞いた。

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  • 寄木細工の魅力は、どういうものでしょうか?
    箱根山系は、樹種の豊富な場所として日本でも屈指の地域です。古くは1200年以上も前、平安の時代から木工が盛んで、お椀などの挽き物は箱根・小田原が本拠地と言われています。寄木細工は江戸末期に生まれた技法で、天然の木の色をそのまま活かして、細やかなデザインを創ります。たまに、作品を目にした方から「プリントしているのですか?」と言われることもありますが、全て自然の木から出る色です。どの木も表面上は茶色い樹皮に覆われていますが、木を割ると、個性豊かで鮮やかな色が現れます。たとえば、苦木(ニガキ)や漆は黄色や金色、水木は白、桂神代・欅(けやき)神代なら黒、朴(ほう)の木なら緑といった具合です。赤楠やアフリカ産のパドックといった木では赤色が出ます。同じ種類の木でも一本一本、木目や色など質感は異なるのが、楽しいですね。
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  • 最近、注力している活動について教えてください。
    伝統工芸というのは、生活文化の創造でもあります。私は伝統的な寄木細工のほかに、新しい手法や素材を活かした現代的なクラフト作品を手掛けています。たとえば、第5回の全国「木のクラフトコンペ」(2008年)で大賞をいただいた抹茶椀は、縞寄木という手法の作品です。暗い色味の木材に大胆な厚みをもたせ、重厚感や存在感を表現しました。そこに明るい木を差し色として使い、アクセントをつけています。シンプルに素材の美しさを表現しました。
    伝統や匠の技を受け継いでいくことはもちろん、大切です。一方で、必要とされ、使われることで文化は残っていきます。あくまで道具ですから、使って心地よいか、そのときの生活スタイルに合ったデザインかを、突きつめることが必要です。そのために、さまざまなアートに触れたり、きれいなモノを見て、なぜ美しいかを考えるようにしています。職人の世界では10年で一人前と言われますが、木という自然を相手にしていると、同じアプローチでも良いものができるとは限りません。自由に木を寄せては経験を重ね、技の熟練度を上げながら、自問自答を繰り返す毎日です。
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  • 手仕事の道具は暮らしにどのような変化をもたらしますか?
    寄木細工は伝統工芸品です。伝統工芸品の基準のひとつは、「日用品であること」と規定されています。日常の生活に結びついたモノなら、使う人がその肌触りや色合いなどを気に入って、「使いたい」と感じるモノでなければいけません。そして、使われ方は自由です。ビアカップをペン立てとして使ったり、マウスパッドを花台にしているという方もいました。
    寄木細工は丈夫にできているので、一生かけて使うことができます。眺めたり、手に取ったりして気持ちよく使ってもらえるモノは、暮らしを楽しく、そして心を豊かにしてくれます。日用品だからこそ100円ショップなどで簡単に手に入るモノもありますが、毎日見たり、触れたりするモノにこそこだわって、身近に置いて癒されてほしいですね。
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  • 暮らしに木を取り入れることの価値についてお聞かせください。
    日本の伝統的な住まいが木の家であるように、日本人は木を素材にしたモノに囲まれて生活してきました。日常的に見たり、触れたり、使うことで、木の文化が残ってきました。だから、生活の中に木のぬくもりや柔らかな質感があると、安心します。美しい木を見ていると、癒されます。寄木細工の素材に神代(じんだい)という木材があります。埋もれ木のことで、桂や欅などが土中に埋もれることで独特の美しい色合いになるのですが、そうした絶妙な色合いの機微を美しいと感じるのも、日本人ならではの美意識です。
    子どもの頃から私の身近には、寄木細工がありました。当たり前のように美しい木に触れて育つことで、それが無くなることは残念に思えて、職人になりました。価値観や文化は研ぎ澄まされ、洗練されて、変わりながらも残っていきます。これからも、木を感じる暮らしを発信していきたいですね。
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profile

露木 清高さん
露木 清高さん
1979年、小田原市生まれ。1926年創業・露木木工所の四代目。箱根寄木細工の伝統・匠の技を受け継ぎながら、シンプルでモダンなデザインの作品を発表している。新時代の寄木細工を模索する注目の若手職人。全国『木のクラフトコンペ』大賞(2008)・金賞(2010)をはじめ2012年・第52回『日本クラフト展』招待審査員賞(唐澤昌宏賞)受賞など、受賞作品多数。

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