
福岡県 Mさま邸
急傾斜の坂道に伸びる水平ライン
坂道の特性を活かした美しい住まい
オーナーさまがもともと所有していたのは、この土地の南側半分でした。そこに建つ旧宅で
暮らしていましたが、敷地の北側部分を新たに購入したことで、今回の建替え計画が始まりました。
設計の課題はいくつもありました。たとえば、最大5mにもなる前面道路との高低差を、いかに道路面と馴染ませるか。オーナーさまはクルマが趣味で車高の低いスポーツカーも所有しており、道路からガレージまでのアプローチがなだらかである必要がありました。その他、建物の設定G.L※をどの位置にとるかも重要な課題。これも坂道に面した敷地の難しさの一つで、G.Lを高くすると見た目の悪い腰高なデザインとなり、隣地の陽当たりを阻害し、周囲への圧迫感も生じさせてしまいます。逆に低くするほど、構造体の一部が地中に埋もれてしまうことになります。
そこで、地階(ガレージとエントランスホール)を鉄筋コンクリート造に、上階が木質パネル接着工法という、工業化住宅では難易度の高い混構造を提案。結果、エントランスに6m以上、上階のリビングでも5m以上の高さの吹き抜け空間を実現するなど、敷地の高低差を住まいのポテンシャルとして活かすことに成功しました。また、建物を西側前面道路から最高5mセットバックすることで、北側隣地の採光を確保しながら、ガレージまでのなだらかなアプローチも実現。加えて、地階と上階の境に水平ラインを強調した庇を設けることで、混構造という特殊性を、周辺環境にも調和する美しいデザインへと昇華させました。デザイナーの石竹さんは「周辺環境への心配りを感じさせるデザインは、オーナーさまの人柄そのもの。オーナーさまとデザイナーが一緒につくり上げた住まいです」と語ります。
※G.L:地盤面の高さ