住宅におけるデザインの本質とは。

安藤編集長(以下、安藤):私はデザインを「アイデアや方向性を指し示すもの」、つまり、飾り立て加えるのではなく、ものの本質を突き詰める行為だと思っています。となれば、住宅におけるデザインとは、住まう人が心地よく快適に暮らせる場所の創造であると考えていますが、白浜さんはどうお考えですか。

白浜商品開発部長(以下、白浜):まさにその通りです。デザイン=意匠や造形ではない。デザインとは設計そのものであり、意匠と機能の双方をバランスよく形にし、「快適」という方向に向かって示していく行為だと思います。

安藤:デザインといってもさまざまで、たとえばファッションは春夏と秋冬の年2回の発表機会があり、極端にいえば半年間飽きられないデザインであればいい。対して住宅は人が生活する基盤となる場所で、その寿命はきわめて長い。白浜さんもそうした未来を見据えてデザインをされているのですか。

白浜:もちろんです。ただ、未来に目を向けすぎると、現在の生活に馴染まないことも多い。建築には数百年単位で愛されるものがあり、私たちに多くの発想や教訓を与えてくれます。そんな過去の伝統、現代の技術、そして未来の要素を、「過去5:現在3:未来2」程度の割合で融合していくイメージですね。

「THE CENTURY」インテリア / 「ECO Flagship Model」インテリア

  • 「THE CENTURY」インテリア
  • 「ECO Flagship Model」インテリア
  • 「THE CENTURY」外観
  • 「ECO Flagship Model」外観

安藤:今回訪れた住まいのテーマパーク「ミサワパーク東京」(高井戸)には、築20年を経ていまなおモダンな雰囲気の「THE CENTURY」や、環境配慮型住宅の「Eco Flagship Model」など、多彩なモデルが展示されていますが、それらのコンセプトや方向性はどうやってつくられるのですか。

白浜:まず、時代に即したコンセプトワークを行い、それに応じたデザインや機能を付加していきます。その核となるのが、暮らす人、家族のストーリーです。「Eco Flagship Model」で想定したのは、環境配慮や健康意識の高い家族。たとえば、朝は早起きしてジョギングなどの運動を欠かさず、食べる野菜は有機栽培もの、自宅でも家庭菜園を実践しているなど、詳細な家族像をつくり込んでいくのです。

「THE CENTURY」外観 /「ECO Flagship Model」外観

安藤:なるほど、まずは住まう家族ありき。住宅デザインは家族のためにあるものであると。

白浜:そうです。冒頭でおっしゃった、住む人が快適に暮らせて、心身ともに元気となってもらえることが第一です。住宅という「モノ」ではなく、快適な暮らしという「コト」が住宅デザインの本質だと考えています。