ゆるぎない「シンプル・イズ・ベスト」の基本理念。

安藤:御社が“デザインのミサワホーム”と称される背景には、グッドデザイン賞を1990年から30年連続して受賞しているという、群を抜く受賞歴が挙げられると思います。そもそも御社には、デザインを重視する文化や社風、あるいはデザイナーが社の意向を牽引する風土などがあったのですか。

白浜:創業時からしてデザインに高い意識をもっており、そうした文化は全社員に受け継がれています。その結果として、30年連続、計128点がグッドデザインに選ばれたことはうれしい限りですね。

安藤:“デザインのミサワホーム”の根底には「シンプル・イズ・ベスト」というテーマがあると聞きます。四半世紀にわたりグッドデザインに選ばれたその背景には、時代が変わろうとも「シンプル・イズ・ベスト」の基本理念がすべてのモデルにしっかりと宿っているからなのではないでしょうか。

白浜:住宅デザインで最も重要なことは、いかに永く暮らしていただけるかということです。もちろん、時間の経過とともに住む人の好みや趣向、さらには住む人自体も変わっていきます。その時に間取りやしつらえが変えられるなど、融通の利く空間であったほうが都合がいい。となれば、基本となる空間はシンプルであるべきで、家族がそのときに必要な要素を「足し引き」できるほうがベター。弊社としては、各モデルでコンセプトは違えども、基本の器はシンプルで美しいものを提供しようと。そこをご評価いただいているのかもしれません。

「ECO Flagship Model」蔵

  • 「ECO Flagship Model」蔵
  • 「ECO Flagship Model」蔵
  • 「GENIUS 蔵のある家」外観
  • 大収納空間「蔵」

安藤:96年には「GENIUS 蔵のある家」で、住宅メーカー初となるグッドデザイン賞のグランプリを受賞されました。その後、「蔵のある家」シリーズは累計6万棟以上を販売し、ミサワホームを代表するヒット商品に。本来は屋外にある蔵を、屋内空間として配置した発想はどうやって生まれたのですか。

「GENIUS 蔵のある家」外観 / 大収納空間「蔵」

白浜:当時の役員の言葉をきっかけに生まれました。役員は陶芸を趣味としていて、所有する多くの作品をしまう納屋的な空間が欲しいと。そこで試行錯誤を繰り返し、1階と2階の間に高さ1.4mまでの半階の空間を設け、風呂やトイレの上は収納スペースとし、リビングはそのまま吹き抜けにする構造に着地しました。やはり大きな収納はニーズがあり、また、グッドデザイン賞の後押しもあって、現在は「GENIUS」のみならず、他のモデルにも蔵を設けるなど多彩に展開しています。

安藤:しかも「蔵」は、デザインや機能のみならず、国から容積率の緩和(※)を受けた建築基準法においてもエポックメイキングなプランであり、構造であったと伺いました。

白浜:当時の建築基準法では、蔵のスペースを面積算入されると違法になってしまう。そこで、国に対し「天井高3.2mの開放的な空間をつくりたい。すべてを3.2mにはせず余った場所を収納とするが、そこは容積率の面積算入から外してほしい」と要望しました。実は当時、国が住宅空間を広く快適にしていこうという動きもあり、認定をいただくことができました。その後、このルールはオープン化され、他メーカーさんも共有できるようになりました。そういう意味では、有意義な提案だったかなと思いますね。

※自治体により、床面積として算入している場合もあります。また、居室としての使用はできません。