多彩なニーズに対応する自由なデザイン

安藤:「Pen」恒例の「住宅特集」を長年手がけてきて感じたことですが、以前は注文住宅といえば建築家に“作品”をつくってもらうという感覚でした。しかし現在は、情報量の拡大や好みの多様化などの影響で、施主側が自分たちの趣向を反映した物件を建築家に依頼する形へとシフトしています。ある種、施主の“わがまま”を聞かなければならない現在、工業化住宅を手がけるハウスメーカーはより大変なのではありませんか。

白浜:確かに、施主様それぞれに趣向や希望があり、高度経済成長期のような画一的なロールモデルが当てはまる時代ではありません。ただ、施主様のなかにはデザインと機能、そして品質が担保され、また、価格も通常の戸建住宅と変わらない、ハウスメーカーを好む方も多いのです。また、弊社でもそうした施主様のニーズに対応できる仕組みがすでに出来上がっています。

  • MISAWA DESIGNERS’ CODE「INTEGRITY」外観
  • MISAWA DESIGNERS’ CODE「INTEGRITY」インテリア

安藤:この春に発売された住宅「INTEGRITY(インテグリティ)」は、そのデザインの「範囲」をあらかじめ設定した、新たなデザイナーズ住宅づくりの提案ですね。

白浜:そのデザインの「範囲」のもととなるのが、弊社が培ってきたノウハウや設計思想をパッケージ化した「ミサワデザイナーズコード」です。外観デザインの基本となる「作法のコード」、質感や色合いの決め手となる「素材のコード」、アイテムなどディテールまでこだわる「造りのコード」の3つの「決めごと」を設定して、施主様の好みや要望に合わせ、デザインすることを可能としています。

安藤:いわば、(コース料理の)「プリフィックス」的にデザインを選べるわけですね。今回、「INTEGRITY(インテグリティ)」が2014年度グッドデザイン賞を受賞した理由も、そうしたデザインの自由度が評価されたのですか。

白浜:この商品は、玄関先に広い軒下を設け、敷地外からのアクセスが容易な中庭をつくったことで、近隣住民の方とのつながりを生む設計となっています。デザインに加え、そうした地域社会との交流を育む、ある種の“機能面”に対しても、ご評価いただいたようですね。