習慣が片付け上手になる最強のヒント
ーー家事や収納をする際、大切にされていることや、みなさんへのアドバイスを教えてください。
おさよさん:私は「がんばらない」を大切にしています。みなさんにもそうお伝えしていますね。
みなさんから家事や収納のお悩みを聞かせていただくと、どちらも終わりがないから「ちょっとしんどい」と思われてしまうようです。そこをいかに「これなら、私にも続けられそう!」と感じていただけるかを考えながらアドバイスしています。私自身も、いかに楽ができるかばかり考えていますね。
ーー具体的にはどんなアドバイスをされるのでしょうか?
おさよさん:例えばダイニングテーブルの上に、ウエットティッシュやサプリメントなど……つい置きっぱなしにしがちな物ってあると思うのです。そういう物を「ダイニングテーブル(置きっぱなしの場所)を使って収納できないか」と考え、アドバイスしています。
例えばダイニングテーブルの横に突っ張り棒を渡して、掛ける収納を作ってみる……こちらは私も1年以上実践しています。「人から見えづらい場所」を狙って、収納を作っていくのがポイントですね。
ダイニングテーブルの裏側も見えにくいゾーンです。ダイニングテーブルの裏につけられる引き出し式の収納グッズを活用して、物の定位置を作ってもいいでしょう。
つい置きっぱなしにしてしまう「癖=習慣」は、勝手に体が動くから最強なので、その習慣を応用した収納をご提案しています。家族の普段の習慣に合った片付けや家事こそ、がんばらなくてもキレイが続く近道です。
ーーがんばらなくてもキレイが続くなんて、素敵ですね。我が家も実践してみます!
テーブルの側面に設置した、突っ張り棒。ティッシュや医薬品、サプリメントなどテーブル上に散らかりがちな物を散らかる場所の側に定位置を作ると片付けが継続しやすい。
使用頻度が高いものは使う場所に使う物の住所を作るのは鉄則。毎日計測する体温計、ハンドクリーム、目薬など、みんなが集まる場所にまとめています。
防災対策と快適な暮らしを実現したリフォーム
ーーご自宅をリフォームされようと思い立ったきっかけは、何でしたか?
おさよさん:コロナ禍になって、家での時間が増えたことがきっかけでした。仕事もほぼ在宅ワークになり、自然災害も増える中、防災のための備蓄やグッズの収納場所も確保したいと考えるようになったんです。
でも基本的には、家で過ごす時間が増えたのだから、もっと楽しく快適に過ごしたいと家族みんなの意見が一致してリフォームを決めました。
ーーリフォームをするうえで、絶対に改善したい点はありましたか?
おさよさん:「プライベートと仕事の空間を分けたい」が1番にありました。それまではワークスペースがなかったので、ダイニングテーブルで仕事をしていました。繁忙期は夕飯ギリギリまで、ダイニングテーブルが資料で溢れかえっていた状態。家族共有の場所なのに、私の仕事場のようになっていました。家族みんなが落ち着かない状況を絶対に改善したいと考えました。
正面には可動棚、机横の壁の一部にはマグネットボードを設置。左側の壁には吊る収納も設置した、狭くても機能的なワークスペース。
空間が限られた狭いデスクスペースになったのでマグネットボードや目の前に天井まである可動棚を設置。細かい文房具は全てマグネット式の小物入れにまとめたので机の上はスッキリ使えています。サッと掃除したいPCまわりのお掃除シートもマグネット式のケースを使用。
ミサワホームさんのモデルハウスも拝見させていただいたのですが…大収納空間「蔵」、スキップフロアのある空間を見て、羨ましいなと思っていたんです。
ライフスタイルやライフステージによって、住まいへの要望は変わってきます。蔵があることで、暮らしの変化に柔軟に対応できるところがいいなって。
私も収納は「1度決めたら、それがゴールではない」と思っていて、そうみなさんにお伝えしています。ライフスタイルやライフステージの変化に合わせて、もっと使いやすく手を加えていく。そういうことを大事にしたいですね。
ーーリフォームの計画を進行するうえで、理想としていたイメ―ジはありましたか?
おさよさん:仕事、家事、子育てを両立しながら、家族みんなでお家時間を満喫できる家です。
家を建てた当初はいいと思っていても、実際に10年住んでみると「もっと、こうすれば良かった」という気持ちが出てきます。リフォームはお悩みポイントを理解した上で解決できる、そういうメリットがありますね。
高天井を活用して、リビングに2つの空間をプラス。蔵は大容量の収納スペースとして活用でき、蔵上のスキップフロアは在宅ワークや趣味など多目的に利用できる。
「住所決め」は、スマホ撮影と4つのキーワードが鍵
ーー「家が散らからない」ための収納として、最も重要なポイントは?
おさよさん:物の住所決めです。住所決めは、まず現状を写真に撮り、観察するところから始めるといいと思います。何を誰がどこに散らかしているのか、人の動線を観察して物の住所を決めます。よく使う物は、取り出すまでの動作数「アクション数」を少なくすることも重要です。
また収納法には、立てる、寝かせる、掛ける、置くの4種類があります。使用頻度の高い物は、アクション数の少ない「掛ける収納」がおすすめです。掛ける収納は見せる収納。家族が物の位置を把握しやすいため、1人でがんばらない片付けの仕組みを整えるのに、効果的です。
ーーキーワードは「立てる、寝かせる、掛ける、置く」。私も意識してみます!
失敗しない収納の秘訣
ーー収納に関するよくある失敗事例を教えてください。
おさよさん:片付かないからと、収納グッズや家具を買い足すと失敗するケースが多いです。収納グッズがあれば、魔法のように片付くわけではなくて、整理収納には「整理、収納、整頓、片付け」と順番があります。整理から行い、必要に応じて収納ケースを検討しましょう。
ーーなるほど!ちなみに、おさよさんはリフォームの際、リビングに新たな収納を設けましたか?
おさよさん:災害時用の備蓄がしたくて、パントリーを追加しました。と言っても何でもそこに収納するわけではありません。集中収納と分散収納を大事にしていますね。
ーー集中収納と、分散収納。それぞれ、どのような家庭環境の方におすすめですか?
おさよさん:全てのご家庭に当てはまると思いますよ。例えば大容量のクローゼットに、日用品を収納すれば、買い物後が楽ですし在庫管理もしやすくなります。
でも使う場所は、それぞれ違いますよね。私は、家事を家族みんなで協力して行いたいので、集中収納に加え、分散収納もしています。それぞれのいい点を取り入れて収納を考えていくのが、おすすめですね。
ーーどちらがいいわけではなく、使い分けることが大切なんですね!
集中収納:季節用品やレジャー道具など使用頻度は低いが大切なものをまとめられる納戸や屋根裏収納は、棚や仕切りで無駄なく空間を活用し、取り出しやすい工夫をしておくとよい。
分散収納:食品ストックやごみ箱などをキッチン近くの壁面を利用して収納。扉があれば、来客時にすばやく隠せるので便利だ。
プロ直伝「リビング・キッチンの収納アドバイス」
ーーリビングのどこに収納を配置すべきか、アドバイスをお願いします。
おさよさん:まずは現状把握のため、スマホで撮影してみてください。もしリビングのカーペットに上着が脱ぎ捨てられていたら、どこからでもアクセスしやすい中央付近にハンガーで掛けられる収納があると便利です。
これからリフォームされる方は、ソファー付近の壁などに充電ステーションのような収納を作るのも、おすすめです。中にコンセントを設置すれば充電ができ、コード類の散らかり対策にもなります。
家族の日常使いしたいハサミ、ティッシュのストック、電池、ペットのお手入れ用品など普段使いの必要なものは、みんながアクセスしやすいLDKの中央に、家族共有物専用の収納スペースを設けると、LDKの散らかりを予防できます。
コード収納専用に設置した棚。充電ケーブルやリモコンは散らかりやすいです。
ソファーの近くに専用の収納スペースがあれば充電しながらソファーでスマホを扱えたり、棚の中でイヤホンやスマートウォッチ、モバイルバッテリーなどを充電していても扉を閉めてしまえば、来客時もコードのごちゃつき感を感じさせません。
ーーではキッチン収納の配置のポイントを教えてください。
おさよさん:キッチン収納は「火のゾーン」「水のゾーン」「ゴールデンゾーン(※胸から腰程の高さのこと)」「キッチン以外のゾーン」の、4つのゾーンを意識して配置を決めましょう。
火のゾーンは、コンロの周辺になります。動線を考慮しつつ、何を配置するか考えていきます。調味料やフライパン、鍋などのキッチンツールを置くのがベストですね。
水のゾーンは、シンクの周辺です。包丁やボール、まな板などを収納するといいでしょう。とくにおすすめなのがシンクの近くに、ゴミ箱置き場を設けることです。家事がとても楽になりますよ。
ゴールデンゾーンは、最も確認しやすく取り出しやすい場所です。どんな物の収納に向いていると思いますか?
ーーよく取り出すお箸やコップでしょうか?
おさよさん:それもいいですね!ちなみに私のおすすめは、乾物です。賞味期限内に使い切るためにゴールデンゾーンを利用しています。
最後のキッチン以外のゾーンは、もしキッチンに入りきらないなら、使用頻度の低い物はキッチン以外の収納を活用しましょうとお伝えしています。「キッチンで完結しないと!」は、思い込みですから。
キッチンの収納は、作業動線と使用頻度を意識して配置決めを。
飲料水やお酒などの重たいものは下へ収納、キャスター付きの荷台を使用すれば移動する時の身体の負担を減らせます。
ーー思い込みを取り除くと、新たな収納場所が見つかり、生活の便利さが広がりますね。
プロ直伝「各年代別、収納アドバイス」
ーー各年代に適したリビングの収納方法があれば、教えてください。まずは、50〜60代のみなさま、子どもが自立した世帯ではいかがでしょうか?
おさよさん:お子さんが自立後も、お子さんの物がリビングに置いてあるご家庭もあるかと思います。それらの片付けは自分たちだけでがんばらず、お子さんが難しければ、業者の方に依頼して手伝ってもらいましょう。
50代以上の方で1番多い事故は転倒です。しかも転倒事故が起こる場所は、8割以上が家の中と言われています。家電やスマホなどが置かれているリビングは、コード類が散乱しやすく転倒を招く危険性がある場所の1つ。ピンフックや粘着フックを利用して、家電のコード類を浮かせる収納にしておくと転倒のリスクが軽減できて安心です。
またよく使う物はゴールデンゾーンに配置すると、しゃがまずに済み、身体の負担を減らせるのでおすすめですね。
ーーリラックスできる家の中での事故、しっかり収納をして未然に防ぎたいですね。
おさよさん:そうなんです。あとは腰などに負担がかからないようにキャスター付きの収納を取り入れると、重たい物を移動するときに便利です。粘着テープ式のキャスターもあるので、活用してみてください。
ごちゃごちゃしがちなコード類は、ピン・粘着フックなどを活用して床への散乱を防止することができる。掃除のしやすさも収納とセットで考えてみてください。
靴下などはぽいぽい収納もオススメ。衣類が散らかるご家庭の共通点は衣類小物が多すぎること。「このケースに入るまで持つ」と決めておくのもオススメです。
ーーありがとうございます。では30〜40代の、子どもがいる共働き世帯へのリビング収納に関するアドバイスはいかがでしょう?
おさよさん:忙しい世代なので、家族みんなを巻き込んで家事や整理収納をする仕組みを作っていくといいと思います。例えばお子さんがリビングの床にカバンを置いてしまうのでしたら、その場所に収納ラックやフックを設置してみる。家族の日常を観察して、協力してもらえそうなヒントを考えてみてください。
よく「お母さんは整理収納をがんばっているのに、旦那さんが散らかしてイライラする」というお悩みをいただきます。興味のない人に興味を持ってもらうのは、大変です。そこに注力するよりも、例えばインテリアにマッチするような旦那さん専用の「ぽいぽいボックス」を、リビングに用意してあげるくらいがいいと思います。片付けを強要されない方が、お互いに気持ちも楽ですから。
ご本人が整理収納を楽しめるようになって部屋をキレイにしていくうちに、今まで興味がなかったご家族まで整理を始めるようになった、という話も耳にします。キレイな空間はいい伝染をします。まずは、自分がやりやすい場所の片付けに集中し、家族は「自然にやってくれるようになればいいな」くらいの気持ちだと楽にできるはずです。
ーーとにかく、がんばらずに実践できることから始めて、やり続ける。それがキレイなリビングを作るコツなのでしょうか?
おさよさん:そうですね。続けられることを試してみる。苦手な家事や収納でも、必ずその方に合った方法があります。ぜひこの機会に、片付けに向き合ってみてください。
ーーそういう意味でも「がんばらない」が、キーワード?
おさよさん:その通りです。例えば洗濯を畳むのが苦手なら、シワの寄りにくい下着などは畳まずに「ぽいぽい収納」がおすすめです。靴下も同じ種類、同じカラーの物を揃えてぽいぽい収納にすると、片方だけにならずに済みます。買い方を変えて、苦手な収納が楽になる工夫をしてみるのもいいですね。
苦手なら、がんばらなくても片付くやり方は必ずあります!
ーー私もがんばらずにできることから、やってみたいと思いました。ありがとうございました。
がんばらなくても、キレイな空間は作れます。ちょっとの工夫でイライラせずに家事や片付けができれば、家族みんなにとってもうれしいはず。
ずっと快適に暮らすために、がんばらない家事や片付けを始めてみてください。
きっと、明日が今よりもっと心地よく感じられるはずです!
整理収納アドバイザー、整理収納教育士、掃除技能検定士、片づけ遊び指導士認定講師。
福岡県在住。中学2年生の長男、小学5年生の長女の母。
近著『スッキリ公式本 収納のおさよさんが教えるキレイが続く片づけ』(セブン&アイ出版)
『おさよさん流 がんばらなくてもキレイが続く家事の工夫』(SBクリエイティブ株式会社)整理や収納、掃除などの独自の方法を紹介したInstagramが話題。テレビや雑誌などでも活躍中。
2000年、東洋英和女学院大学卒業後、共同テレビに入社。
フジテレビアナウンス室に出向し、「プロ野球ニュース」「すぽると!」「ゴルフ中継番組」などスポーツ番組を中心に担当。
06年より米女子ゴルフツアーに挑戦する宮里藍の密着取材を開始し、著書「最高の涙ー宮里藍との一四〇六日」(幻冬舎)を出版。
08年に共同テレビを退社し、フリーアナウンサーに。現在、テレビやラジオなど様々なメディアで活躍。