長期にわたる賃貸経営の安定性を確保するため、変動金利と固定金利をどのように考え、どのような視点で融資を選べばよいのか。
今回は、長期固定金利の賃貸住宅融資を扱う住宅金融支援機構に話を聞きました。
これまでは、借入時点の金利の低さから、変動金利を中心に検討するケースも少なくありませんでした。しかし、金利が上昇しはじめ、融資選びでは「いま低いかどうか」だけではなく、「将来の返済額をどこまで見通せるか」という視点が重要になっています。
特に賃貸住宅は、個人の住まいであるマイホームとは異なり、長期にわたって運営していく事業です。毎月の返済額は賃料収入や空室率、修繕費、税金などとともに、事業収支を左右する極めて重要な要素になります。
では、金利上昇局面において、賃貸住宅融資はどのように選べばよいのでしょうか。まずは、金利タイプごとの本質的な特徴を整理しておきましょう。
変動金利か固定金利か。
金利タイプの特徴を知る
金利タイプの特徴を知る
変動金利型は、借入期間中に定期的に金利が見直されるタイプです。借入時点の金利が低ければ、初期の金利を低く抑えやすいのが最大のメリットですが、返済期間中に市中金利が上昇すれば、それに連動して返済額が増加するリスクをはらんでいます。 借入時点では将来の総返済額が確定しないため、資金計画に不透明さが残るのが難点です。
次に固定金利期間選択型は、当初5年や10年といった一定期間のみ金利を固定するタイプです。 期間終了後はその時点の金利で再設定されるため、金利上昇リスクは依然として残ります。
そして、全期間固定金利型は、借入時に決まった金利が返済期間を通じて変わらないタイプです。借入後に市中金利が上昇しても返済額は変わらないため、長期の返済計画を立てやすいのが大きな利点です。一方で、市中金利が低下しても返済額は減少しません。
ここで重要なのは、賃貸住宅融資は事業のための融資であるという視点です。金利タイプの選択は、単なる金利の比較ではなく、どのようなリスクを許容し、どのように事業を安定させるかを考える出発点でもあるのです。
融資を通じて
良質な賃貸住宅を支える住宅金融支援機構
良質な賃貸住宅を支える住宅金融支援機構
「住宅金融支援機構は、独立行政法人という国の政策実施機関です。政策上重要で、民間金融機関だけでは十分な対応が困難な分野に限定して融資業務を行っており、金融サービスを通じて住生活の向上に貢献することを目的としています」と、同機構まちづくり融資部の担当者様は説明します。
その役割は、日本の住宅史とともに少しずつ変化してきました。
「住宅金融公庫が発足した1950年代には、戦後復興に伴う住宅の量的な供給を支え、その後、高度経済成⾧下の住宅需要を支える役割も担いました。2000年代以降は、特に、子育て世帯向けに十分な住宅の広さや一定の省エネルギー性能を有する賃貸住宅の普及を支援しています」(同機構担当者様)。
住宅金融支援機構は、時代ごとに求められる『良質な住まい』の普及を、融資の面から後押しし続けているのです。
選択肢と可能性を広げる
【機構 すまい・る賃貸ローン】
【機構 すまい・る賃貸ローン】
第一に、長期固定金利(希望に合わせて金利の固定期間を35年または15年から選択可能)で返済額を見通しやすいこと。第二に、耐火構造だけでなく、木造の賃貸住宅でも準耐火構造であれば、返済期間を最長40年まで設定でき、毎月の返済額を抑えやすいこと。第三に、65歳以上の方でも、65歳未満の事業後継者と連名で申込みが可能であること。そして第四に、建設地が現在の居住地から離れていても申込みが可能であることです。
「賃貸住宅は長く運営していく事業だからこそ、固定金利であれば、将来の返済額を見通しやすく、長期運営を前提とした資金計画を立てやすいという安心感があります。また、土地活用では、親世代が土地を所有し、子世代が将来の事業承継を担うケースも少なくなくありません。さらに親御さんから相続した土地や、以前から所有している土地が自宅から離れている場合もあります。こうしたオーナーさまそれぞれの実情に対応しやすい設計になっている点が、【機構 すまい・る賃貸ローン】の特徴です」。
省エネ・子育て
金利引き下げ制度で推進
金利引き下げ制度で推進
ひとつは、子育てや省エネ性能に配慮した住宅を対象とする「子育て省エネ型」です。一定の住戸面積や省エネルギー性能などの基準を満たす賃貸住宅を対象とし、質の高い住まいの普及を後押しします。
一方の「まちづくり型」は、密集市街地の改善や防災性の向上など、地域課題の解決を目的とした建て替えなどを支援する制度です。例えば、古い建物を撤去して新しい賃貸住宅へ建て替えるケースや、地域の都市計画・地区計画に合わせた賃貸住宅の建て替えなどが対象になります。
これらの融資メニューの背景にあるのは、国が推進する住まいにおける省エネ化や子育て支援といった政策の方向性です。
例えば省エネについては、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、住宅分野でもエネルギー性能の向上が求められています。子育て支援についても、「こども未来戦略」といった政策目標があり、安心して子育てできる住環境の整備は重要な課題です。
【機構 すまい・る賃貸ローン】では、長期優良住宅やZEH–Mの基準を満たす賃貸住宅、子育て配慮賃貸住宅などをより多く供給できるよう、同機構の定める基準を満たす賃貸住宅を対象に「金利引き下げ制度」が設けられています(図3)。
「具体的に長期優良住宅であれば、当初15年間は年0.3%、ZEH–Mの基準を満たす賃貸住宅や子育てに配慮した賃貸住宅に対しては、それぞれ年0.2%の金利引き下げを行っています。複数の要件を満たす場合は、最大で年0.5%の引き下げが適用されます。
建物の質や性能を高めることにより、省エネや入居者さまにとっての住みやすさが向上することで、入居の安定につながり、オーナーさまの安定した賃貸経営にも寄与すると考えています」(同機構担当者様)。
ただし、長期固定金利型であっても、申込み時点の金利水準は市場環境によって変わります。同機構担当者様によると、繰上返済制限制度を利用する場合の【機構 すまい・る賃貸ローン】の参考金利は、令和8年1月時点では35年固定金利が1.95%、15年固定金利が1.54%でしたが、令和8年6月時点では35年固定金利が3.94%、15年固定金利が3.19%と上昇傾向にあります(図4)。
オーナーさまが、賃貸住宅を建築・運営されるうえで、金利引下げ制度を伴う長期固定金利型を融資選びの選択肢に加えることは、非常に重要なポイントになると考えられます。
※「金利引き下げ期間」は、いずれも当初15年間です。
※1 参考金利は、前月下旬の金融情勢などに基づき、金利を決定したと想定した場合の参考金利です。実際のお借入金利は、申込受付月の約2か月後の月末に、
住宅金融支援機構債券の利回りその他のコストを勘案して決定する金利が適用されます。また、金融情勢の変化などによって上記の参考金利と異なることがあります。
※2【機構 すまい・る賃貸ローン】まちづくり型で保証人が不要となる場合(機構所定のマンション等売却事業で、建物更新を行うもの)は、金利が異なります。
詳細につきましては、機構窓口にお問い合わせください。
※3「繰上返済制限制度」を利用しない場合は、金利が異なります。詳細につきましては、機構窓口にお問い合わせください。
国の補助金制度を
併用できる可能性も
併用できる可能性も
現在、国土交通省と環境省が合同で実施する「みらいエコ住宅2026事業」では、省エネルギー性の高い賃貸住宅や子育て世帯に配慮した賃貸住宅に対する支援が行われています。
「この補助金の基準と、【機構 すまい・る賃貸ローン】の基準は一部で共通しています。これらを上手に併用することで、建築費高騰という課題を緩和しつつ、次世代に誇れる質の高い賃貸住宅を供給することが可能になります。建築計画を立てる際には、ぜひハウスメーカーのご担当者さまと、これらの制度をどう組み合わせるのが最適か、しっかりと話し合っていただきたいですね」と同機構担当者様はアドバイスします。
金利を読むのではなく、
自身の経営方針から選ぶ
自身の経営方針から選ぶ
「日銀が2024年3月にマイナス金利の解除を決定して以降、今後の金利については、政策金利は上がっていくというのが一般的な論調だと理解しています。
しかし、金利の先行きを正確に予測することは非常に困難です。予測できないからこそ、目先の水準だけで判断するのではなく、建物の質や性能、将来の継承問題など、今まで以上に長期的な目線での計画が必要とされ、数あるバリエーションの中からご自身の経営方針に最適な融資を選ぶことが大切です。
金利上昇局面における選び方とは、単に『変動金利か固定金利か』の二択ではなく、安定して経営を続けるための『リスク設計』をすることなのではないかと思います」。
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