特集

賃貸経営等の所得分散を考える Part2

あたりまえの法律・税金

増税傾向が続くなか、所得税に関しても増税されています。
賃貸経営等における節税を考えた所得分散について特集します。

この記事は資産活用情報誌「GOOD OWNER」2020年2月号掲載記事をWeb用に再編集した内容となっています。掲載内容は本誌発刊当時のものとなります。

『青色申告』でここまで節税できる

個人事業の確定申告には、白色と青色があります。一定以上の事業規模であれば、青色申告にすることでさまざまなメリットが受けられます。
所得分散を中心にそのメリットを知っておきましょう。

青色申告には特別控除や専従者給与などのメリットが

事業的規模に該当する不動産所得の確定申告を青色申告で行うメリットとしては、白色申告に比べて、詳細な記帳により、より多くの必要経費が認められること、所得控除額を増やせること、さらに青色事業専従者給与を支払うことができることです。つまり申告所得から差し引くことができる額が増えるため、節税につながります。
特別控除と専従者給与については、次項目に詳しく説明を掲載しますが、その他さまざまな特典があります。
例えば不動産所得が赤字になった場合、3年間であれば赤字分を繰り越し、黒字になった年にその課税所得から繰り越した赤字分を差し引く繰越控除を受けられること。30万円未満の資産であれば、減価償却を業務の用に供される期間の費用として配分せず取得した年に全額経費にすることが可能になる特例などがあります。 

特別控除所得税計算に大きな影響が

青色申告では帳簿記帳のレベルを高めることにより、特別控除の55万円が受けられます。さらに「電磁的記録の備え付けおよび保存をしている場合」か「e-Taxにより電子申告をしている場合」に限り、青色申告特別控除は65万円になります。所得額が65万円よりも少ない場合は、所得額が控除の限度額となります。通常の青色申告の場合の控除額は10万円ですから、その差は大きいといえます。
所得税は累進課税ですから、例えば所得が330万円を超え、695万円以下の場合は、所得税率20%になります。この場合、65万円の特別控除が適用されると、下記図のように20万円近い節税が可能になります。
また65万円の控除があることで所得額が累進課税の分類で一段低くなるケースもあり、税率も低くなります。  

青色申告で所得分散を可能にする専従者給与

青色申告者と生計を共にする親子や夫婦など、親族が事業に従事している場合、家族従業員に給与を支払い、その支払った分を経費として計上できる、青色事業専従者給与という制度があります。
これにより所得の分散効果を期待することができます。所得税は累進課税で、所得が増えれば増えるほど負担する税も増加していきます。その所得を親族に分散することで節税につなげるのです。
例えば所得が1000万円ある場合、所得税率は33%になりますが、これを妻と子に195万円ずつ分散すると、オーナーさまは610万円の所得で20%の所得税率、妻と子はそれぞれ5%の所得税率になります。税額にすると77万円ほどの節税となる計算です。
また専従者給与を受ける配偶者や子に、他に収入がない場合は、年間100万円ほどまでは税金がかかりませんから、その枠を利用する方法もあります。
メリットの大きい所得分散を考える際は、税務上の複雑な計算が必要になります。税理士などの専門家に相談した上で、どの程度分散しておけばメリットになるのかを検討しましょう。

配偶者控除とのバランスを考えて分散する

注意しておきたいのは、オーナーさまが配偶者控除を受けている場合です。控除額として最大で38万円ありますが、青色事業専従者給与を支払うとその対象ではなくなります。年間の専従者給与が38万円以下だと、配偶者控除がなくなる分と相殺されて節税効果はなくなるということになります。
ただし税制改正により、高額所得者の場合は、配偶者控除が受けられなくなっていますので、青色事業専従者給与の節税メリットが大きくなっています。もしまだこの制度を採用していない場合は、前向きに検討することをお勧めします。

一括借上げの場合は、注意が必要

専従者給与としてどれくらい支払うかも大きな問題です。仕事に見合った給与なのかを、税務署は当然しっかりとチェックします。家賃収入と比べて、あまりに大きな金額だと問題になるケースもありますので、適正な給与額を専門家と協議することをお勧めします。
特に一括借上げの場合は、建物の清掃などを業者が行うケースが多いので、専従者の仕事があまりないと判断されることもあります。
この点についても、所轄の税務署などで見解が異なる場合がありますので、税理士に相談しましょう。

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