特集

賃貸経営等の所得分散を考える Part3

あたりまえの法律・税金

増税傾向が続くなか、所得税に関しても増税されています。
賃貸経営等における節税を考えた所得分散について特集します。

この記事は資産活用情報誌「GOOD OWNER」2020年2月号掲載記事をWeb用に再編集した内容となっています。掲載内容は本誌発刊当時のものとなります。

事業規模により法人化にメリットが

事業規模が大きい場合、賃貸経営を法人化することにメリットがあるケースがあります。その反面、経営の手間が増えるなどのデメリットも発生します。
メリット、デメリットをしっかりと把握して検討しましょう。

法人化するメリットはどのようなものがあるのか

賃貸経営の法人化には、おおまかに「不動産管理会社」と「不動産所有会社」に分けられますが、ここではメリットが大きくなる「不動産所有会社」で「建物所有会社」をご紹介します。 「建物の所有者が法人」なのが建物所有会社です。賃料等の収入はすべて会社の収入となります。この会社の役員としてオーナーさまや、その親族が給与・報酬を得るという仕組みになります。 メリットを下の表にまとめました。大きく分けて7つメリットがあります。やはり最も大きなメリットは、個人所得と法人所得の税率の差を利用すること、また所得を家族で分散することによる節税効果です。この2つは次ページで詳しく解説します。 一般的にこの2つがメリットとしてあげられますが、他にも経費の範囲が広くなることや、法人向けの保険や共済に入れること、退職金制度や福利厚生の活用、減価償却の計上で利益を調整できる法人税では任意償却などのメリットもあります。 ただし賃貸経営の法人化には、登記を行う上でのさまざまな準備やデメリットが発生するケースもあるので、より慎重に計画する必要があります。 その上でメリットが大きいと判断できる場合にはプロに相談しながら検討しましょう。

法人化するメリットはどれほどの事業規模か

適正規模を知る最も簡単な指標として、個人と法人の税率差が逆転する所得金額が法人化を検討するボーダーラインとなることでしょう。もちろん青色申告でも専従者給与を支払うことができますから、ある程度オーナーさまの所得を抑えることができますが、それにも限界があります。経費を除いた所得で1000万円を超えたあたりから検討することをおすすめします。
また事業規模だけでなく、親族の人数などでも法人化のメリットは大きく変わってきます。
つまり法人化した方が節税メリットがあるのか、現状のままでよいのかは、ケースバイケース。どの程度の事業規模(課税所得)があり、どの程度の所得分散をするかで効果は変わってきますので、長期の計画を立てて判断することが大切です。

個人所得と法人所得の税率の差を利用する

個人の所得税は、所得が大きくなるほど税率が高くなる累進課税方式です。家賃収入が増えていったり、他の仕事があり、その収入が多くなるにつれて税率が高くなっていきます。最高税率は住民税+所得税で55%です。
日本では法人税も累進課税ですが、個人の最高税率に比べると、実は低く設定されています。
例えば所得に合わせて企業が支払う主な税金(法人税・法人住民税・法人事業税)の負担割合である実効税率は、比較的利益が出ている中小企業でも30%を少し超える程度です。
この差を利用することで、最終的な納税額を減らすことが可能になります。法人に内部留保という形で資産を保存し、後から税率の低い退職金などで手元に戻すことも可能になります。

親族を役員にして給与を支給することで給与所得控除を利用できる

もう一つの大きなメリットが、所得の分散です。青色申告専従者給与は、税務署のチェックもあり、行う仕事の範囲や量に見合った給与しか支払うことができません。一方で法人の場合は、親族を役員にすることで役員報酬を支払います。この額は基本的に法人の任意になりますので、トータルにバランスをとった上で最適な所得分散を行うことが可能になります。
給与所得を他の会社から受け取っていない人を社員にすれば、個人としての給与所得控除も適用できるため、さらに税額を抑えることも可能です。

必要経費の範囲が個人事業より広くなる

個人と法人では、必要経費の扱いが大きく異なります。法人の方が必要経費の範囲が広く、大きな節税につながります。
法人の場合は、賃貸経営に直接関わる経費に加えて、不動産の取得費用、事業拡大のための不動産物件の視察出張、役員の生命保険料なども必要経費として認められています。
また福利厚生費や交際費なども個人より経費の範囲が広くなります。このように必要経費の範囲が広くなることで、結果的に所得を抑えることにつながります。

法人化により相続時にもメリットがある

法人化することにより、相続時における節税対策にもなる場合があります。それは個人から法人に不動産の所有権を移転することで、相続税の対象となる財産が減ることです。
また個人所有の賃貸住宅を複数の相続人に相続する場合、遺産分割において争いが起こるケースがありますが、法人にしておけば、相続資産は株式として相続することができ、収入を相続人で分けることができます。また、法人設立時に株主を相続人にしておくことで、相続時の不動産登記における面倒な手続きなども必要がなくなります。

デメリットもあります。専門家に相談しましょう

すでに経営している物件を所有する上での法人化において、個人から法人へ不動産の所有権を移転する必要があります。この際の移転方法によっては、多額の税金が発生してしまったり、不要な費用がかかってしまうといったことも考えられます。さらには相続対策にならないという事態に陥ってしまうケースも考えられます。
また法人の設立や経営には、専門的な知識も必要です。法人化を行う際は事前にデメリットも考慮したうえで、詳しい専門家をパートナーに加え、検討するとよいでしょう。

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