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家族で考えたい相続贈与 Part1

あたりまえの法律・税金

相続の民法が改正に。新しい内容を知っておきましょう。

この記事は資産活用情報誌「GOOD OWNER」2020年5月号掲載記事をWeb用に再編集した内容となっています。掲載内容は本誌発刊当時のものとなります。

民法の相続が改正に。新しい内容を知っておきましょう

相続法で変わる7つのポイント

この数年で、相続に関する税制が大きく変化しています。2015年1月1日に相続税の基礎控除などが大幅に改正。その後も毎年のように税制が改正され、2018年7月に民法が改正されました。相続に関する民法改正は約40年ぶりで、内容も大きな変化だと言えます。この改正で2019年1月から2020年7月にかけて、相続の法制度が順次施行されていきます。
相続トラブルを防止するため、民法では、誰が相続人なのか、何が遺産なのかなど、相続の基本的なルールが定められています。この民法の相続について規定されているのが「相続法」。改正の主な理由としては、超高齢化の社会環境に対応するためです。
この改正は、相続をよりスムーズにしたり、配偶者の暮らしを保証するなどメリットが多いものになっています。
まずは基本的な知識を持ち、何がどのように変わるのかを把握しておくことが大切です。

配偶者居住権の新設と配偶者への自宅贈与

従来の相続法では、亡くなった方の持ち家に同居していた配偶者が、そのまま自宅に住み続けるためには、配偶者が自宅を相続する方法が一般的でした。
しかし、自宅の評価額が高額になるケースでは、自宅を相続したことで今後の生活資金となる預貯金の相続が少なくなってしまい、最終的に自宅を手放さざるを得ないケースが発生していました。そこで、配偶者が自宅に住み続けることができ、さらに預貯金なども相続しやすくなる新しい制度が、配偶者居住権の新設です(下記図参照)。
また婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与等に関する優遇も、相続人となった配偶者の住まいを守るための制度です。今までは、妻が夫から住宅を生前贈与された時、その住宅は「遺産の先渡し(相続の先渡し)」となり、夫が死亡した際、遺産分割で妻が取得する額は生前贈与分を差し引かれていました。改正後は、結婚して20年以上経つ夫婦間において、配偶者に自宅が贈与(または遺贈)された場合、その自宅は特別受益の対象外、つまり「遺産分割の計算対象に含めない」ことになります。

預貯金の取り扱い関連

従来の相続法では、亡くなった後のお葬式費用や、残された家族の生活費などの必要なお金についても、遺産分割協議が終了するまでは金融機関から引き出しができないという問題がありました。そこで遺産分割前の払い戻し制度を新設。遺産分割協議が終わっていない時点でも、比較的容易に預貯金の引き出しができるようになりました。
ただし上限があり、相続人1人につき、「法定相続分の1/3」となっています。
また、相続人の一人が勝手に相続資産を売却したり、預貯金を使い込んだりした場合は、従来は訴訟により損害請求をする必要がありましたが、訴訟が終了するまでの長い期間が必要などの問題がありました。改正後は遺産分割前に処分された遺産についても、遺産とみなして(「みなし遺産」)、遺産分割の対象とすることができるので相続がスムーズになります。

遺言関連の改正

遺言にまつわる改正内容のひとつとして、「自筆証書遺言方式の緩和」があります。改正前は、遺言書は遺言者の手書きであることが条件であり、パソコンのソフトで入力して印刷したものは認められませんでした。それだけに財産目録は項目が多くなると書くだけでも大変でした。
改正後は、自筆証書遺言のうち、財産目録はパソコンで作成できるようになりました。印刷したものに署名押印するだけで、自筆証書遺言の一部として認められます。ただし遺言書の本文の部分は手書きでなければなりません。
また遺留分制度の見直しも行われています。相続発生時、被相続人が有効な遺言書を残していた場合、遺言書どおりに分割するのが原則です。
例えば、被相続人が遺言書に「すべての財産を妻(配偶者)に相続させる」と書いていたとします。しかし子供が存在する場合、子供には最低限保証される遺留分があるので、その分は請求できることになります。

特別寄与の特例

特別寄与とは、簡単に言うと生前の被相続人への「お世話」のことです。
例えば、被相続人が寝たきりなどで、家族が無償で相当な負担のある介護・看護をしていた場合、その介護・看護は特別な寄与となり、遺産から寄与料を請求できるケースがあります。

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