単身者の住まいへのニーズは、大きく変化している
単身世帯は今後も増え続けていく
日本では少子高齢化が進み、2008年をピークに人口が減少し続けています。この傾向は今後も進み、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2050年には日本の総人口は1億人を下回ることが予測されています。
しかし賃貸住宅市場を分析する場合、大切なのは人口の増減ではなく、世帯数の動向です。住宅は世帯単位で必要とされるものですから、どのような家族構成の世帯が増減していくかを考える必要があります。
下のグラフを見ると、単身世帯と、ひとり親と子の世帯が上向き傾向で、夫婦のみ世帯が横ばい、ファミリー世帯が減少することがわかります。つまり賃貸住宅市場の中心である、単身者〜二人暮らしの世帯は増えていくと考えられます。
単身者向け賃貸住宅は、市場への供給量が多いですが、築20年以上の住宅も多く、現在の単身者ニーズに合わない物件が増えているので空室が目立っているのが現状です。
今後は、大きく変化していくと言われている単身者のライフスタイルに応えることが、20年後、30年後も入居者に選ばれる賃貸住宅経営につながります。
今回はそんなこれからの単身者ニーズについて特集します。
自己実現欲求を満たしたい時代に
下の図は、「マズローの欲求5段階説」を元にしたものです。これは心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と考え、人間の欲求を5段階に理論化したものです。
日本は経済的にも成熟し、商品やサービスに対してのニーズがより高次なものへと変化しています。そんな中で、より良い住まいに暮らすことは一つの自己実現だと言えます。それは単純に住まいの広さや家賃だけの判断ではなく、他の賃貸住宅とは違う空間の魅力をつくり、「なりたい姿が実現できる」住まいの提供をすることが、「選ばれる」賃貸住宅に繋がるのです。
働き方のスタイルも大きく変化している
単身者のニーズを考える時、「働き方の変化」は大きなポイントになります。インターネットの普及により、会社以外の場所でも仕事ができる「テレワーク」の導入も進んでいます。「テレワーク」とは「tele
(離れた所)」と「work(働く)」を合わせた造語で、在宅勤務も含まれます。
また、複数の仕事を持ち、副業を自宅で行うケースも多くなりました。他にもフリーランスで働く単身者も多くなり、自宅で働くというライフスタイルは、もはや当たり前になっています。
自宅で仕事をする場合、問題になるのはそのスペース。当然、居住空間と仕事をするスペースを分けたいというニーズは高くなります。家賃が少し高くても、入居者が住みたくなる空間を提供できるかを考える必要があります。
意識の高い単身者をターゲットにするメリット
賃貸住宅経営で入居者を募集する際、より良い入居者に住んでもらいたいという思いは、どのオーナーさまにもあることです。実際に入居者をご自分で面接するというオーナーさまもいらっしゃいます。そして良い入居者に住んでもらえるかどうかは、賃貸住宅の「質」で決まります。
質の高い入居者が、質の高い賃貸住宅を求めるのは当然のことで、意識が高く自己実現を求めている単身者ほどその傾向が高くなります。より良い仕事を求めるため収入も高い分、高い賃料でも価値を認められれば入居が期待できます。
さらに意識の高い入居者は、マナーの面でも良い傾向があります。家賃支払いが安定していることはもちろん、ゴミ出しや騒音などの入居者トラブルが少ないこと、設備などを大切に使ってもらえることなどが期待できます。こういった入居者をターゲットに想定することが、長期安定経営につながります。