Frontier Story

最初のプロジェクトは
完売御礼

海外事業
2005年入社/東京都立大学卒

金田 優Kaneda Yutaka

ミサワホームオーストラリア
宅地建物取引士

Frontier Storyフロンティアストーリー

海外事業プロジェクトのコアメンバーに

ミサワホームとしてフィンランドと中国に木材の製造工場を持っていましたが、本格的な事業として海外に進出するのはこの海外事業プロジェクトが初めてだったんです。当初は課として成立しておらず、いわゆる調査段階の組織でした。私が参加する前から3名のメンバーいて、彼らが「オーストラリアの進出がいいのではないか」という仮説を立てていました。

オーストラリアを選んだのはさまざまな理由があります。まずは先進国であり親日国であること。そして法整備が整っており、ビジネスをするにはクリーンな環境であったこと。総合してビジネス上の参入障壁が低かったことが上げられます。さらには、オーストラリアと日本を比べると、住宅事業の形態が非常に似ていることもわかりました。このような多くの理由から、オーストラリアが適していると判断したのです。

プロジェクトに参加してからの業務は、「オーストラリアで事業を始めていいのか」という裏付け調査でした。JETROや外務省などの政府機関と連携したり、すでに現地で事業をおこなっている日系企業の情報を収集して調査した結果、「オーストラリアでの事業は成立する」という答えを出したのです。

事業モデルの模索 本格的な営業活動の開始

綿密な調査によってオーストラリアでの事業の可能性を見極めたわけですが、「どのような事業を展開するのか」という課題は残っていました。そのため最初のミッションは、オーストラリアでの営業活動に適した事業モデルを探すことでした。例えば現地の建設会社と共同で新しい事業をおこすのか、現地企業に出資をして収益の基盤を作るのか、という調査をおこないました。

この調査のために、現地の建設会社に駐在させてもらい、小規模なプロジェクトを通じて商品の企画から設計、広告、販売そしてアフターメンテナンスまでの一連の流れを勉強させてもらいました。そして丸一年かかった調査によって出た答えがM&Aです。M&Aが最も安定して収益をあげられるだろうと考えました。

M&A先を決めるには、さらに2年間かかりました。その過程では、ある会社との交渉決裂もありながら、ホームコープという会社に決めたのです。ホームコープは投資家を対象に住宅を提供している会社なのですが、実需向けの住宅の開発も検討していました。それはまさにミサワホームが得意としている領域です。ホームコープからミサワホームには収益の基盤を、ミサワホームからホームコープには住宅メーカーとしての技術と営業ノウハウを提供するということで、お互いの利害が一致しM&Aの合意にいたったのです。

ホームコープでの最初のプロジェクト

ホームコープでの最初のプロジェクトは、「会社の顔」となる商品を開発し、総合住宅展示場へ出展することでした。私は営業時代にコンセプトプランを描いていましたので、その経験を活かせる場面でした。ホームコープは商品開発を外部に委託していましたので、いわゆる「会社の顔」つくる部門を持っていなかったのです。そのため、看板商品のコンセプトスケッチとその運用の作り込みを私が担当して、現地社員と打ち合わせしながら「会社の顔」を作っていくことになりました。

展示場を作るにあたっては、現地の設計士や営業担当とミーティングをして、「どうすれば他社と差別化できるか」「どうすれば売りやすい商品ができるか」といった販売に関する内容や、「どうすれば設計しやすい家ができるか」「施工しやすい家が作れるか」といった設計に関する内容を議論しました。

こちらは複雑な図面の家が多いのですが、私のプランでは図面を構成する一つ一つのラインを整え、シンプルな間取りを追求しました。結果、展示場の建物自体の大きさはどこの会社も同じですが、一つ一つの部屋が大きく見えるような建物を設計させていただきました。

次に携わったのが全25棟のタウンハウスの開発でした。オーストラリアの開発地では、一戸建住宅の他に、アパートやタウンハウス区画を加えて計画する事が一般的です。そうする事で街並みに多様性と変化を作り出します。殊、タウンハウスはメインストリート沿いに計画されることが多く、その意味でタウンハウスは美しい街並みを構成する重要なアクセントとなるのです。まさに「コミュニティの顔」を作るこのプロジェクトに大きなプレッシャーとやり甲斐を感じました。

通常オーストラリアの戸建住宅は250~300㎡くらいで、日本の平均的な戸建住宅の倍近くの広さがあります。今回手掛けたのは130㎡程度の2階建て。これは日本の戸建てと非常に近い規模なんです。ここにミサワホームのノウハウが活かせると思いました。できるだけ無駄な空間を作らず1つ1つの部屋を大きく設計し、外観はシンプル且つ重厚感を感じられるように意匠を整えました。設計書作りのために現地の建築基準法を勉強して、現地の建築スタッフから指導を受けながら、何度も書き直して形にしていきました。結果としては好調な売れ行きで、第一期の販売は2週間で完売しました。

日本とは異なる環境と価値観に苦労

一番大変なのは、オーストラリアのビジネスの常識や商習慣を日本に伝えること、そしてその反対もしかりです。私の業務の半分は日本への報告なので、オーストラリアで家を売る流れや問題、業績の推移とその理由などを報告しています。あとはオーストラリアで土地を購入したり新しいプロジェクトを手がけたりするときには日本の承認が必要になるので、プロジェクトの内容やリスクを伝えるのですが、これを日本側に理解してもらうのが大変です。例えば住宅ローンの仕組み一つ取っても2国間で基本的な考え方が異なります。日本から見た時に非常識に思われるその仕組みを理論建て丁寧に説明していく必要があるのです。

スピード感も非常に大事なので、会社で起こっていることや考えていることを、本社に向けて正確に伝え、承認をもらって現地で実行するのも一苦労です。日本とオーストラリアの間に入っておこなう仕事なので、このあたりの業務が一番大変ですね。

オーストラリア人は非常に合理主義なんです。日本サイドで結論を出すのに時間がかかるケース多々あるのですが、そこに理由があれば納得してくれますが、理由がないとものすごくストレスを抱えるんですよ。特に注意しているのは、ホームコープの人たちにとってネガティブな結論を出さなくてはいけない時です。例えば100棟のプロジェクトをやりたくても「70棟でないといけない」と伝えるとき、「なぜ70棟なのか」という理由をきっちり論理的に説明する必要があります。「本社の命令だから」という説明では彼らは一切納得しないんです。

海外で家をつくるということ

建築の仕事としてのやりがいは、自分の手で書いたものが形になって出来上がることです。それは日本にいた時と変わらないですが、やはりそれが1番の楽しみですね。

あとは、ホームコープには15カ国からスタッフが集まっているんです。ほとんどの人が第二外国語として英語を話しているので、各国のなまりが入っているのが当たり前です。また、考え方もユニークで価値観も大きく違います。そういう人たちと1つの作品を作っていくというのは、日本では味わえない感覚です。仲間と意見をすり合わせながら1棟の建物を作るというのは、非常に楽しい経験ですね。

※所属部署は取材当時の部署を記載 

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