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interview

生きぬく姿が美しい
サボテン・多肉植物

叢(Qusamura)店主
小田 康平さん

たくましく生きている
個体としてのサボテン・多肉植物に
美しさを見出している。
そんな小田さんに、力強さが満ちている
サボテン・多肉植物の魅力を聞いた

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  • 時を帯びた植物に惹かれました
    人もそうですけど、植物も時間が経つほどに表情が出てきます。たとえば、生まれたばかりの2、3年生の桜はまだどれを取っても同じ顔ですが、100年も経つとすごい存在感です。時を帯びた植物はかっこいい‥‥でも100年の桜は扱いづらいじゃないですか。サボテン・多肉植物は、1年に1センチくらいとゆっくりと生長します。20年で20センチくらい‥‥時が凝縮されているんです。そこに僕は惹かれました。

    個体としての植物を世に出していきたい
    世のなかを見渡したときに、植物は種類やサイズ、花がきれいだとかばかりに注目されていて、その植物のひとつひとつの個体というか、個性を見ている人がいなくて‥‥。でも僕は、そこに魅力を感じていたので、その個性を世に出したいと思ったんです。どこまで受け入れられるかは、わからなかったですけど‥‥。でも始めてみたんですね(笑)。
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  • 生きる姿が美しいんです
    骨董品は時としてヒビや色褪せがあるから、味わいが深くなることがあります。器が欠けて、金継ぎして、魅力が増すみたいな‥‥。植物も順調に育てばいいんですけど、傷がついたり裂けたりして、がんばって生きている個性があるんです。そんな姿に美しさを感じます。

    必死に生きてきた植物
    品評会に出るようなサボテンは、ノーダメージで本当にきれいなんです。「だけど、なんか出来すぎているなぁ‥‥」。それだったら、最初はおじいさんの寵愛を受けて、丁寧に育てられてきたけど、そのうちに愛情を失って棚の下に置かれてしまい、それでも必死に生きてきた植物に魅力を感じます。

    「いい顔をしてる」がコンセプトです
    愛好家のおじいさんたちのところを巡って、何万、何十万の膨大なサボテン数のなかから、数点を譲ってもらいます。それぞれ、なにかしらの物語が宿っている植物です。それは、いい顔をしてるんです。しわだらけでしみだらけで、鍬を持って畑を耕す。そんながんばってきた、おじいさんたちの顔のように。だから、叢のコンセプトはリスペクトを込めて「いい顔をしてる」としたんです。
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  • この亀甲瑠璃兜で説明すると‥‥
    この亀甲瑠璃兜(きっこうるりかぶと)は、接ぎ木していて上と下で植物が違っています。通常は台木の上で穂木だけが大きくなるのが当たり前ですが、この個体はなんと台木が、上の穂木を突き破って出てきているんですね。こういうのはあまりなくて、おじいさんたちは穂木が大事なので最悪なんです(笑)。だけど、「台木が俺も生きるんだ!」という感じがいいでしょ。檻の中でかわいく生きるのではなくて、「ここまでやっちゃうぜ」という強さがいいんです。

    生きる力に、ぞわぞわします
    アスファルトから出てくる雑草とかを見ると「こいつら、ほおっておくと世界征服するんじゃない」と思ったりします。そういう怖さを感じる植物が、僕のなかでは興奮するんです。サボテン・多肉植物は、こんなふうに育ってほしいと思っても、片方が肥大したり、枝が出てほしくないと思っても、ガンガンに枝が出たりとか‥‥。そういう人間の枠に囚われない生きる力に、ぞわぞわしますね。
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  • 過去・現在・未来を楽しめます
    サボテン・多肉植物は、過去・現在・未来を楽しめます。まず、過去から積み重なった時間。そして現在は、極地の植物ゆえの造形です。そして未来‥‥。僕は、現代アートなんかと勝負していると思っているんですけど、そこには変化はありません。変化したら困りますね(笑)。でも、植物は、光と水を与えると、それが花や生長として返ってきます。

    ものすごくゆっくり変化します
    ここにあるのは、だいたい20~30年、古い植物だと50年は普通ですね。ゆっくり生長するからこそ、その変化が、とてもうれしいんです。初夏になったら花が咲きます。大きな花です。朝顔みたいに、ポンポンと咲くものとは違いますね。「花が咲いた日は、会社を休もう」というお客さんが、かなりいますよ(笑)。
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  • 美術品のように見てほしいんです
    ここには地下室があるんですが、人と植物とが一対一で向き合える空間にしました。植物を美術品のように見てほしかったんです。「正面からは表紙しか見えないんだけど、横から見たり持ってみたりすると、すごくぶあつい本だった」というように、植物にはたくさんの見どころやおもしろさがありますから‥‥。

    ひと鉢、住まいにあれば
    みんなが、せわしく生きているなかで、ものすごくゆっくりと生長しているサボテン・多肉植物を見て「心を休める時間があってもいいんじゃないかな」と思います。まぁ、そう僕は言っていますが、頭でっかちにならずに、「純粋にいいな」と思うかどうかで見てもらえれば、とても楽しいと思いますね。
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小田 康平さん
1976年、広島生まれ。2012年、独自の視点で植物を捉え、美しさを見出した一点物の植物を扱うことを決心し、「叢- Qusamura」をオープンした。その後、「銀座メゾンエルメス」のウィンドウディスプレイや陶芸家の器とコラボレーションした展示会、アートイベントなど、活動が広がっている。ちなみに、頭文字をKではなくQに変えたのは、情報の渦に押し流されてしまう世のなかに「クエスチョン」を投げかけて、植物とのいい出合いを生み出したいという思いから。

関連サイト
叢(Qusamura)

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見たことないサボテン・多肉植物
小田康平 (著)、中谷航太郎 (写真) 小田さんがこれはと思って拾いあげた何千、何万の植物のうち特におもしろいものを集めた写真集。特別な生育環境の結果、奇異な形に育っているもの。個性的な進化や生長をとげたもの。農家がズボラだったために、放置され野生化したもの。2013年(二見書房)



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