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interview

子どもも大人も
楽しい防災を

NPO法人プラス・アーツ 理事長
永田 宏和さん

楽しみながら学べる防災訓練
「イザ!カエルキャラバン!」を開発した
プラス・アーツの理事長・永田さん。
楽しい防災について、詳しくインタビューした。

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  • 阪神・淡路大震災から10年後
    私が防災教育を始めるきっかけになったのは、1995年の阪神・淡路大震災でした。中学3年生まで暮らしていた西宮の街が、被災して壊滅状態になったとき、私は社会人2年目でした。「なんとか震災復興に関わりたい」と思っていましたが、当時の仕事の都合で、その思いは叶いませんでした。それから10年経った2005年、兵庫県と神戸市が実施した震災記念事業の一環として新しい防災プログラムを開発することになりました。「やっと自分の番がきた」と思いました。

    被災者50人にインタビューしました
    そこでまず、50人の被災者へのインタビューに取り掛かりました。被災した時の状況や被災後にどのような活動をしていたかなど、幅広く情報を集める必要があったので、その50人に関してもさまざまな立場や属性の方にお願いしました。被災者しか知りえない話も多く、世の中に流布している一般的な情報ではなく、実体験に基づくリアルな“本当の”情報の強さを実感しました。インタビュー時間が大幅に延びることも多かったですね。そしてインタビュー後には、お話を聞いたみなさんから「伝えてください」と言われたのが、今でも心に刻まれています。
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  • 「イザ!カエルキャラバン!」を開発しました
    大きな震災を経験してきた日本でも、多くの人が防災訓練に対して「つまらなそう」「仕方なく参加する」そんな感覚でいます。防災のために正しいことをやっているのに、人が集まらない。そこで、防災教育の輪を広げていくために、「思いきり楽しくすること、楽しみの中に学びがあること」を考え方のベースに据えました。そして、インタビューの内容をもとに、あえて被災体験のない、防災の専門家でもない大学生やアーティストの協力を得て、新しい形の防災訓練「イザ!カエルキャラバン!」を開発しました。

    楽しくて、実際に使える防災に
    「イザ!カエルキャラバン!」は、親子が遊びの中で楽しみながら実践することで、防災の知識や経験を身につける防災フェスです。通常10~14のプログラムが実施され、各ブースには何度でも参加することができます。たとえば、防災の技に関する手順を覚える「シャッフルゲーム」で消火器の使い方の手順を覚えたら、訓練用の水が出る消火器で的当てゲームを体験できる隣のブースに参加。スタンプラリーのようなスタイルで自由にブースを回り、体験していきます。複数のプログラムを体験することで、実際に使える防災の知識や技が身につくのです。

    海外にも、活動の輪は広がっています
    「イザ!カエルキャラバン!」は、日本をはじめインドネシア、フィリピン、ネパール、チリなど国内外で500回以上開催しています。訪問した先で防災教育を支援していくことで、同志と呼べる人たちと濃い人間関係を築くことができて、ネットワークが広がっていきました。出会った当初に所属していた防災の部署を離れても、人のためになるというリアリティが原動力になって、私たちの防災プロジェクトのボランティアとして関わり続け、ずっとつながっている自治体や企業の人たちもいます。

    地域に根差したお祭りに
    地域のコミュニティや社会のつながりが失われつつある昨今では、「イザ!カエルキャラバン!」のような防災フェスは、コミュニティの醸成や再生の有効な手段になります。地震だけでなく、台風や豪雨など自然災害リスクが増すなか、多くの方の防災意識は高まっています。防災が人をつなぎ、地域に根差したお祭りへ育っていってほしいと考えています。
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    「イザ!カエルキャラバン!」での防災体験プログラムの様子

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  • 防災を意識した時に、防災対策のアクションができるように
    日常生活を送るうえで、人の意識には正常化バイアスがかかります。たとえばどこかで災害があっても、身近に経験しなければ、自分は大丈夫だと考えてしまうものです。そうした意識が「いつ、どんなきっかけで、自分事として受け止められるか」は、人それぞれ。私たちは、防災意識が高まったときに、その人が気づいてアクションできるように、防災講座やキャラバン、書籍など、いろいろなチャンネルから防災教育普及のアプローチを続けています。

    レッドベア・サバイバルキャンプ
    「レッドベア・サバイバルキャンプ」も、いろいろなアプローチを続ける中で私たちが開発した防災プログラムのひとつ。親子でいっしょに被災時を想定した避難生活体験ができます。キャンプという形で、楽しみながら避難生活を疑似体験することで、防災に関する知識や技はもちろん、どんな状況でもたくましく生き抜く知恵や判断力、2つのソウゾウリョク(創造力と想像力)などの生きる力を育むことができます。
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  • 過去から学んでいくことが必要です
    人間の力を超えた自然の猛威には、正直、太刀打ちできません。防災がすべてを解決してくれるわけではありませんが、生き抜くために過去の経験から学べる教訓は活かすべきです。日常の常識ではイメージできないこと、被災者にしかわからないことがたくさんあります。一般的に流通している防災に関する情報が正しいとは限りません。だからこそ、私たちの防災プログラムは被災者の方々の実体験から学び、常にアップデートしています。

    備蓄は最低限一週間分を
    「モシモ」を想定した「イツモ」の備えとして、一週間分ほどの水と食料の備蓄をしておくといいでしょう。ふだん食べている食料品を一定量保管しておくだけでいいのです。食べたら買い足す、新しい非常食の備蓄法「ローリングストック法」をおすすめします。定期的に食べるのをついつい忘れて賞味期限が近づいたら、おうちキャンプ感覚で備蓄しておいた食品を食べてみるのも、ちょっとしたシミュレーションになります。

    家族で備えることを楽しんでほしい
    肩の力を抜いて、暮らしを楽しむ延長に防災があるといいですね。たとえば、もしもの時の安否確認に役立つSNSの家族グループをつくって、ふだんの家族間のコミュニケーションを活発にする。あるいは、子どもが自分用の防災リュックを準備するのを手伝ってあげたり、みんなで美味しいレトルト食品やフリーズドライ食品のショッピングに出かけたり。家族のイベントとして楽しんでみてください。親が本気で子どものことを考える気持ちは必ず伝わります。ふだんの生活の中に「楽しい防災」を取り入れてみてください。そうやって、家族の絆も深めてほしいと思います。
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永田宏和さん
永田宏和さん
NPO法人プラス・アーツ理事長。兵庫県西宮市生まれ。大学で建築を学び、大学院ではまちづくりを専攻。大手ゼネコンに勤務した後、企画プロデュース会社「iop都市文化創造研究所」を設立。「イザ!カエルキャラバン!」の開発をきっかけにNPO法人プラス・アーツを設立。2012年からデザイン・クリエイティブセンター神戸の副センター長も務める。

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+arts

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地震イツモマニュアル
地震イツモマニュアル
10万部越えのベストセラー「地震イツモノート」の実践版、「地震イツモマニュアル」がリニューアルした文庫版。「いますぐできる防災」の知識が身につく防災マニュアル。オビの裏にはいざという時に使える防災の技が書かれた“いつも持ち歩ける 防災マニュアルBOOK”付き。2019年8月(ポプラ社)



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