interview
美しい佇まいの
家具たちの世界
デザイナー
小林幹也さん
暮らしに自然と溶け込み、
美しい佇まいを感じさせる家具たち。
それは、住まいにハーモニーをもたらし、
豊かな世界を生みだしていく。
そんな家具をデザインしている小林幹也さんに
美しい家具と暮らす魅力を伺った。
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- 幼い頃から書道が好きでした
- 幼い頃から書道や絵を描くことが好きでした。書道を始めたばかりの頃は、一文字書いては納得ができないとすぐ書き直しという繰り返しでしたが、慣れてくると、一文字うまくいかなくても書全体のバランスで考えられるようになりました。パズルを組み合わせるように整えたり、墨の濃淡で立体感を出したりするのが楽しくて、書道にのめり込んでいました。
突然、美しい椅子に魅せられて
高校3年生までは、デザインの仕事に就くとは考えていませんでした。たまたま本屋で手にした雑誌で、椅子の記事を読んだのが転機。その椅子の美しい佇まいに、心が揺さぶられました。そして椅子に座っている時間は、実はとても長い。日常で必要とされる道具をつくる職業があると知って、デザインの道へ進みたいと思いました。
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- 自分が使いたい家具をつくる
- 僕の家具デザインのテーマは、少しでも気持ちのいい暮らしをしてほしいということです。デザインするときは一人の使い手として、自分が欲しいと思うもの、使い心地がいいと感じる家具を考えます。欲しいものを考えるために、使う人の目線や暮らしに近いところからものづくりをすれば、いい家具がもっと増えるのではないかと考えるようになりました。
ショップでコミュニケーション
だから、使う人の生の声を大事にしています。私が経営するショップで直に接客したり、家具を選ぶプロセスを眺めたり、時には納入に行ったりすることで、欲しい家具のイメージを明確にしています。ショップで僕を見かけたら、気軽に声をかけてください。
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- くつろぎを生むやさしいカタチ
- この椅子はyamanamiシリーズのYC2という作品ですが、ダイニングでは自然体でくつろいだ時間を過ごしてほしいという思いでデザインしました。なので、アームはちょっと肘を預けられるようにしています。また、背の部分は、もたれたときに身体をやさしく受け止める丸みのあるカタチにしました。
後ろ姿を美しく
椅子の背中は人の背中と同じで、目立つことのない部分。しかし、普段の生活の中で目にする椅子は後ろ姿です。コンマ数ミリの世界にこだわり、目に映るカタチが美しく見えるようにデザインしています。また、フレームを細くすっきりと見えるようにしたり、構造そのものをシンプルにすることで、単体としての美しさだけでなく、住まい全体がバランスのよい美しい佇まいになります。
暮らしに溶け込む家具
今でもソファなどは、壁に背をつけて置くというイメージが強くて、後ろ姿まできれいだと思えるものが実は少なかったりします。けれども暮らし方が変わってきて、リビング・ダイニングでの過ごし方も見直され、アップデートされています。ダイニングを暮らしの中心に考えるのであれば、リラックスできる椅子に。空間を自由に使いたいのなら、どこに置いても自然に調和するような家具がいいですね。
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- 本物と一緒に暮らす
- 最近は加工技術が進化して、たとえば壁のクロスのように身近にあるものでも、それが本物の木やレンガなのか、プリントなのか気がつきません。学校などの教育現場でも図工の時間が減るなどしていて、木を知る機会はどんどん少なくなっています。だからこそ、子育てという観点からしても、自然本来のあたたかみを身近に感じる家具が必要だと感じています。
好きな家具ひとつから始めてみては
好きな家具に囲まれる暮らしは、心地がいいもの。しかし、最初から空間に美しく収まった家具を揃えるのは、すぐれた目利きでも難しい。まずは一つ、好きな家具を買うことから始めてみてはどうでしょうか。そして少しずつ増やしていけば、居心地のいい空間が広がっていきます。家具は一生モノです。何十年と使い続けることができるので、そばに置きたいと思える家具を選んで、毎日を楽しんでいくといいでしょう。
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profile
- 小林幹也さん
- デザイナー / ディレクター。1981年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業後、インテリアデザイン会社を経て、小林幹也スタジオを設立。家具・プロダクトからインテリアデザインまで幅広く手がける。2010年ドイツのIF PRODUCT DESIGN AWARDにて金賞、ドイツred dot design award、グッドデザイン賞、adc賞など受賞歴多数。2011年にはショップ「TAIYOU no SHITA」をオープン(6月末で閉店※現在アウトレットセールを実施中)。2018年7月からは、東京都目黒にオリジナル家具・日用品・キッチンを扱う新ブランド「IMPLEMENTS」をスタートさせる。
関連サイト
TAIYOU no SHITA
IMPLEMENTS by mikiya kobayashi