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トップ - THINK LIFE / ライフスタイルを考える - 使い続けたくなる生活道具としての器

interview

使い続けたくなる
生活道具としての器

陶作家
安藤雅信さん

現代美術作家を経て、
陶作家となった安藤雅信さん。
美しく、使い続けるほどに心地よく、
生活道具としての器をつくってきた。
その器の魅力を伺った。

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  • モノをつくる動機を問う
    20代は現代美術作家として活動していました。しかし、行き詰まりを感じて30歳過ぎにインドに滞在してチベット仏教を学びました。そこで日々行ったのは、生きる動機を問い続けること。そして、それはモノをつくる動機を問うことでした。モノづくりの動機は、流行に左右されるのではなく、自分の内側から湧き起こる欲求に拠るべきだと気づきました。

    使いたいモノがない
    日本に帰国したのは、バブル経済の後期です。その頃、日本の食生活は急激に多様化していました。しかし、それに相応しい器は多くありませんでした。新生活で用いる器を探したのですが、「使いたい」と思える器が見つからない。味気ない工業製品と自己表現の工芸品との間が、すっぽりと抜け落ちていました。
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  • 自分たちの生活に必要なモノをつくる
    結婚当初につくったのが、陶製の「石鹸置」です。そういうものはプラスチックの工業製品が当たり前の時代でした。日用品である以上、つくるのに手間がかかっても、高値がつけられないような道具をつくる作家は少なかったのです。僕は生活に必要なモノには、それにふさわしい機能と美しさが必要だと感じました。

    アートとは、新しい価値を見出すこと
    アートの根底にあるのは、必要とされている価値を見出すことだと思います。これまで見向きもされなかったモノに光を当てて、本当は価値があるのだと問題提起することです。暮らしという視点からすべてを見つめ直して、生活道具となる器をつくりたいと思いました。
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  • 使い続けたくなる生活の器
    美しく、使い続けるほどに心地よく、使い尽くすことができる器をつくりたい。理想は、骨董を研究し始めて出合った17世紀のオランダの軟陶器。なにを盛り付けても似合う余白があり、多用途に使えるシンプルなカタチがそこにありました。少ない要素なのに満ち足りていて、それ以上に何も必要としないデザイン。それが目指すべきデザインとなりました。

    3年かけて実現した理想のカタチ
    色は白、形は楕円のオーバル。それは決めていたのですが、つくってみると何か足りない。装飾を施すと煩くなってしまう。そんなとき、17世紀のオランダ白釉陶器に出合い、彫刻的な造形をとり入れて器に余白をもたせたところ、目指していたデザインが生まれました。オランダの食器を見てから3年後。その原型をベースにオランダ皿のシリーズを展開したのです。

    100余色から選んだ白
    白というのは、シンプルで飽きがこない色です。だから、おもしろい。鉱物を混ぜると、同じ白であっても色に深みが出ます。イギリスには何℃で焼くとこの色になるといった科学的なレシピ本があって、それを日本で手に入る材料ならこうだろうと試行錯誤して、白だけでも100種類以上つくって、選びました。オランダ皿のシリーズは、そのマットな白を使っています。

    手仕事へのこだわり
    手づくりにこだわっているのは、自然に生まれる美しさがあるから。同じ大きさや形につくっても、焼きあがると、それぞれに自然な反りや歪みが生まれます。それが個性となり、手仕事ゆえの不思議な温もりが伝わってきます。
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  • 使うほどに器が育つ
    柳宗悦の言葉を借りれば、モノには前半生と後半生があると言います。つくるまでが前半生。そして後半生は、使われることでモノが育つという考え方です。同じ器でも、貫入であったり、釉薬の艶であったり、使い続けることで器が育っていきます。日本には伝統的に、そういう変化を好む美意識があるのです。

    海外の若い世代が支持
    最近はミレニアル世代を中心に、モノにこだわる傾向が見られます。豪邸や高級車を必要としないけれど、身の回りに置くのは本当に気に入ったモノだけに。そして、その経年変化を楽しんでいく。そういう人たちが世界的に増えています。彼らはとても情報感度が高く、私たちの活動にもアメリカやアジアなど海外からの問い合わせが多くなってきています。

    ボブ・ディランのように
    数年前、ボブ・ディランのライブに行ったのですが、かつての名曲は一曲のみ。70歳を過ぎても新しい世界へ挑戦していました。僕としても、常に社会に対して問題提起をし、自分なりの答えを提案し続けていく。そうやって、世の中の暮らしに寄り添っていきたいと思います。
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profile

安藤雅信さん
安藤雅信さん
陶作家、現代美術作家。武蔵野美術大学卒業後、多治見で焼き物を学ぶ。和洋中を問わずに盛り付けられる定番となる食器を1000種類以上、ほか茶道具や彫刻を作り続けている。生活に根付いた美術を模索するために、安藤明子氏と共にギャルリ百草を主宰。茶道やJAZZ・ロックなどの音楽にも造詣が深い。

関連サイト
ギャルリももぐさ

information

どっちつかずのものつくり
どっちつかずのものつくり
陶作家・安藤雅信さんの陶歴36年の歩みを巡る作品論とエッセイ。代表作のオランダ皿誕生のストーリーをはじめ、日々の暮らし方への問題提起や、人生への深い思索に満ちた一冊。2018年11月発行(河出書房新社)