interview
急須で淹れる煎茶の世界へ
日本茶ソムリエ
和多田 喜さん
最近、日本茶の注目が高まっている。
各地で質の高い茶葉が作られるようになり
その繊細な味に魅せられる人が多くなっている。
日本茶ソムリエの和多田さんに
その奥深い世界を語ってもらった。
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- 本当に美味しいお茶とは?
- 最近では、お茶はペットボトルで飲むのが一般的になっています。コーヒー豆やドリッパーなどの道具はあっても、急須や茶葉は置いてないという家庭が多くなっているようです。その一方で、日本茶カフェ・茶茶の間を開店してから15年になりますが、今では来店する方たちも若い方からシニアの方、外国の方と幅広くなりました。日本の文化の見直しとともに、本当に美味しいお茶を知りたいという欲求が高まっているのです。
日本独自のお茶の文化
喫茶は中国から伝わった舶来文化ですが、日本で独自の進化を遂げました。しかし、楽しみ方やお茶の情報などは、日本ではあまり知られていません。時折、店を訪れた外国の方が日本のお茶の産地や淹れ方について詳しかったりして、驚かされます。
質の高い茶葉が増えています
生産の技法や封入の技術が進化して、質の高い茶葉が全国に行き渡るようになったのは、平成に入ってからです。そしてこの10年ほどの間に、単一農園・同一品種に絞った質の高いシングルオリジンのお茶が楽しまれるようになりました。今は、日本全国のいろんな産地から良質な茶葉を幅広く選べるようになって、お茶もワインと同じように、その深い世界を楽しむようになっています。
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- 煎茶の世界
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日本茶には様々な種類があります。大きく分けただけでも番茶、緑茶、ほうじ茶とあり、製法や品種、産地などでお茶の種類は千差万別です。そのなかでも煎茶は、ふだんから口にすることも多い、日本人にとって一番馴染み深いお茶と言えます。茎の形によりあわせた茶葉は、お湯を使って開いていくことで味わいを変化させるので、何回にも分けて淹れることで異なる風味を楽しむことができます。
繊細な風味を楽しむ飲み物です
煎茶は、日本人の感覚にマッチした繊細な飲み物です。茶葉にはほどよい渋みと苦みに加えて、山の滋味とでも言うような芳醇な甘みや香りが備わっています。味が繊細な食べものほど相性がよいので、「お酒の代わりにコース料理に合うお茶を教えてほしい」という飲食店からの問い合わせが増えています。
繰り返すたび、違った味が楽しめます
煎茶は、一煎ごとに風味を楽しむことができます。一煎目は強い旨味を。二煎目は葉っぱの奥にある清々しい香りを。三煎目はスッキリした味わいを楽しむことができます。また、同じ一つのスイーツでも何度も味の変化を楽しめるのが煎茶の醍醐味。一煎ごとにお菓子の味わいが強調されます。オススメは、季節のフルーツでつくったお菓子との組み合わせです。
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- 煎茶を楽しむために
- 煎茶は水と葉っぱ、急須を使って、自分の楽しみたいようにつくれます。家庭で楽しむのに、これほど手軽に始められるものはありません。一度でいいので、美味しい茶葉を、少しの美味しい水で浸して、そのエッセンスを飲んでみてください。その爽やかな味わいに驚かれると思います。
急須で煎茶を淹れてみよう
煎茶は浸出次第で味わいが変わってきます。時間を目安にするのもいいのですが、茶葉の見やすい急須を使うのがいいですね。蓋はせずに、お茶と対話するように葉っぱの開き加減を眺めながら淹れるようにすると、上手になります。
初めのころは、セカンドボトルを使うといい
最初からベストな煎茶を淹れるのは難しいので、急須で入れたお茶をセカンドボトルに移して、味見をするといいでしょう。風味が薄いと感じたら、急須に戻して濃くする。逆に濃く感じたら、お湯を足して調節するのです。そうやって、チャレンジするといいですね。
煎茶の楽しみ方はさまざまです
抹茶文化である茶道と大きく違って、煎茶には決まった楽しみ方はありません。さまざまな楽しみ方があります。香りを手軽に楽しむなら、水出し冷茶がオススメです。そのままいただいても良いですし、温かいお茶がほしいときはレンジで温めてください。夏には、濃い目に淹れたお茶を同じ量の炭酸割で試してみてほしいと思います。
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- その時の気分や心模様を表現する
- 煎茶には、淹れ方や道具を使って、その時々の気分や心模様を表現する楽しさがあります。今にふさわしいお茶をその瞬間に作り上げるのは、格別の喜びです。春らしい味わいなら、80℃くらいのお湯で渋くならないように淹れると、若葉の新鮮な香りが立ちます。夏のスッキリした味わいなら、熱湯で少なめの茶葉で急須をしっかりと振って、キレのある渋みを出すといいでしょう。
家族の時間を楽しんでほしい
家族と急須で淹れたお茶を味わいながら、ひと時を過ごす時間があるのはとても素敵なことだと思います。子どもにとっても、煎茶を通じて言葉だけではない世界が広がっていくと思います。外の心地よさを感じる場所やお気に入りのインテリアを揃えたダイニングルームなど、心が落ち着く空間でお茶を楽しんでほしいと思います。
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profile
- 和多田 喜さん
- 日本茶ソムリエ。2005年に日本茶インストラクターの資格を取得し、表参道に日本茶カフェ「茶茶の間」をオープン。自ら店頭に立ってお茶を淹れるだけでなく、各種メディア出演、イベントでの実演や執筆活動を通じて、国内外を問わず日本茶の魅力を発信している。
関連サイト
表参道 茶茶の間