interview
スパイスカレーで
ホームパーティのすすめ
カレー研究家/AIR SPICE代表
水野 仁輔さん
最近、カレーの人気が高まっている。
その理由は、スパイスカレーファンの増加だ。
50冊以上のカレーやスパイスに関する本の著者であり
カレーの学校の校長を務める水野仁輔さんに
スパイスカレーの楽しみ方をインタビューした。
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- 20年、カレーの道を歩いてきました
- 僕がカレーを好きになったのは、浜松市のインドカレー専門店「ボンベイ」(カレー店「デリー」の流れをくむ店)の影響です。大人になってからも食べ歩いたり、カレーイベントを開いたりしながらカレーの世界と向き合ってきました。当時は情報もなく、まずスパイスの配合や調理手順からして、何もわからない。僕は納得できないと前に進めないタイプ。正解のないものは自分で確かめていくうちに20年が経ちました。
最近は、スパイスカレーが人気です
カレーは日本人にとって、国民食です。ルーツは150年ほど前、明治維新の頃にイギリスから渡った欧風カレーがルーツです。日本人は、いろいろなものをアレンジして独自に進化させるのが上手い。今では高級ホテルのレストランから街場の食堂まで、カレーがメニューに名を連ねています。最近では、バーなどの空き時間を利用する「間借りカレー」がブーム。家庭では、これまではルウを使ったカレーが主流でしたが、この頃はスパイスカレーの人気が高まっています。
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- スパイスカレーで旬を楽しもう
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カレールウは、煮込んだ鍋に入れるだけで簡単にコクとうま味が生まれます。スパイスを使って作るカレーは、スパイスが食材の持ち味を引き立てるので、ストレートでシンプルな味わい。旬の野菜の豊かな風味に、すっきりとしたスパイスの香りが絡んで、味覚と嗅覚を心地よく刺激してくれます。スパイスの組み合わせ方は無限。無数にある正解の中から何を選ぶかは、その人の哲学によって変わってきます。
キッチンを満たす香りに癒される
香辛料の香りは、カレーの醍醐味です。中でもスパイスカレーは、それぞれのスパイスが持つ香りをしっかりと楽しむことができます。ニンニク、生姜、スパイスと調理が進むごとにキッチンを満たす香りが変化していきます。火を入れた時にさっと引き立ったスパイスの香りは、作る人だけの楽しみです。そしてスパイスそのものが植物ですし、玉ねぎ、ニンニク、生姜や鶏肉など由来のはっきりした食材しか入らないので、安心して味わうことができます。
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- スパイスカレーは難しくない
- それに、スパイスカレーには特別なプロセスは一つもありません。たとえば肉じゃがを作るようなもの。食材を煮たり炒めたりするプロセスの中で、スパイスを加えていくだけです。今回、調理している"基本のチキンカレー"は30分弱で完成。ポイントを挙げるとするなら、スパイスを油で炒めて香りを立たせることが大切ですね。
鍋と木べらがあれば作れます
道具は鍋と木べらがあれば十分です。一つのカレーで使うスパイスは多くても5~7種類。スパイスの配合そのものも、それほど難しいものではありません。僕が仲間とともに発案したパズルはスパイスカレーを気軽に楽しんでもらうためのアイデアです。どのようにピースを組み合わせても、いい香りに仕上がるようにスパイスが調合できます。300万通りもの組み合わせ方があり、子どもでもプロ並みの配合ができます。
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- みんなで作って楽しむホームパーティ
- カレーは一つの鍋で何人分も作れます。みんなで香りを嗅いでみたり、鍋を覗き込んだり、そうやって作る時間が楽しいですね。僕は、サラダ代わりに簡単なお惣菜を用意して、ワンプレートでカジュアルに盛り付けて、カレーパーティを催しています。2種類3種類のカレーを合いがけして、混ぜたりしながら味の変化を楽しむのがおすすめ。チキンカレーとほうれん草カレーといったように肉と野菜を組み合わせたり、スープ系と汁気の少ないものなど、バリエーションがあるといいですね。
飲み物には、炭酸系がおすすめです
スパイスカレーには、炭酸系の飲み物を合わせています。一週間くらい前に、ウイスキーにカルダモン、クローブ、シナモンなど2~3種類のホールスパイスを入れておく。そのスパイスウイスキーを炭酸で割ってハイボールにすると、カレーに合いますね。
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- カレーの世界を広げたい
- 僕は、「カレーの学校」や「AIR SPICE」といったプロジェクトを主催しています。その中では、レシピはもちろんスパイスの配合もグラム単位でオープンにしています。ネットの世界のようにオープンソース化することで、カレーをモチーフにして、みんながいろんなことを考え始め、つながっていきます。そうやってカレーの世界に新しい価値を提供して、もっと進化させたいと考えています。
LOVE INDIA
ここ8年ほど「LOVE INDIA」と命名して、10数人のインド料理シェフが集まり、定期的に研究会を開いています。たとえば玉ねぎの炒め方について、それだけで3~4時間と意見を交わしたり、サンバル(野菜カレー)を持ち寄って食べ比べをしながら、お互いの技術向上のヒントにしようと取り組んでいます。プロ・アマを問わずバラエティー豊かにカレーを楽しむ人が増えているので、これからもっとカレーの世界が広がっていくと思います。
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profile
- 水野 仁輔さん
- 「AIR SPICE」代表、「カレーの学校」主宰。出張料理集団「東京カリ~番長」の結成(1999年)をはじめ、さまざまな実験や考察を加えながら、新しいカレーの世界を開拓。カレーに関する著書を多数執筆。さらにカレー専門の出版社まで立ち上げ、イベントでの実演やワークショップを開催するほか、毎年インドを訪れてはインド料理の研究を重ねている。
関連サイト
AIR SPICE