interview
愛犬を受け入れて、
純粋な心とつきあっていく
ドッグトレーナー
中西 典子さん
ミニチュア・シュナウザー「ロック」との出会いをきっかけに、
中西さんは、これまでに2000頭の犬と飼い主の関係をサポートしてきた。
一般的には、人の思いどおりに "犬をしつける"という方が多いが、
中西さんのスタイルは"愛犬を受け入れて、お願いする"。
そうすることで、人と愛犬に友情が生まれ、純粋な心に触れあえる。
その関係性は、とてもとても温かいもの。
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- 「ロック」と出会い、ドッグトレーナーに
- 30代の頃に、ミニチュア・シュナウザー「ロック」を飼うことにしました。ロックという相棒の存在で、生活はがらりと変わりました。ソファに座ってぼんやりしていると、そばにやってきて寄りそってくれる。その温もりは、毎日の癒しになりました。食事を準備したり、一緒に遊んだり、自分以外の命のために生きているという感覚は、私に自己肯定感といった心の変化を与えてくれました。
ロックをセラピー犬にしよう
愛犬との暮らしがどれほど素晴らしいものかを知って、ロックの賢さに感心し、トレーニングのおもしろさにハマってしまった私は、ロックをセラピー犬にしようと思うようになりました。ただ、高額な訓練費用にびっくり。「だったら自分が訓練士になって、ロックを育てよう!」と、ドッグトレーナーを目指したことから、飼い主さんと愛犬をサポートするようになりました。
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- 愛犬の言葉に耳を傾ける
- 一般的には、"犬はしつける"という考え方です。人間の都合のよいようにしつけるべきと、多くのドッグトレーナーの学校で、そう教えています。私が学んだオーストラリアの学校でも、西洋的な思想が根源にあり、人間が動物を支配するという考え方がベースでした。インターネットにもマニュアル化された情報があふれていて、 "犬の飼い方はこうあるべき"という固定概念に、がんじがらめになっている気がします。
犬の視点で考えてみてください
多くの飼い主が、「スリッパや靴を、かじらないようにさせなければならない」「吠えさせないようにしないといけない」と考えています。でも、犬にとって、かじるのは自然な行為。犬は大好きな臭いがついたものを、かじると幸せを感じます。もしも、あなたのスリッパをかじっていたら、あなたのことが大好きということなのです。犬はうれしいときや警戒したときに、吠えます。それは、自分たちのやり方でコミュニケーションしようとしているのです。その犬の言葉に耳を傾けてあげてください。
否定ばかりされたとしたら...
大好きという行為を頭ごなしに叱られてしまうと、愛犬は混乱します。子どもの教育と同じで、「○○しちゃ、ダメ!」と、愛犬の気持ちを否定していると、お互いにストレスが溜まっていきます。本能的な行動を押さえつけてしまうと、愛犬が混乱してどうしたらいいかわからなくなり、飼い主との関係がこじれたものになっていきます。
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- 受け入れて、お願いをすれば、もっと幸せな関係に
- "受け入れて、お願いをする"。これは、「ダンス・ウィズ・ウルブス」のモデルになったアメリカンインディアンのラコタ族の教えです。犬の心は素朴で、無垢で、シンプル。人間本位ではなく、犬の習性や性格を理解したうえで、つきあっていくのがいいでしょう。
「犬は犬らしく」を尊重する
愛犬の問題行動を何とかして欲しいと相談を受け、レッスンをしていると、私は飼い主が愛犬との関係を築き上げるお手伝いをしているのだと気づかされます。ほとんどのケースで、変わるのは犬ではなく、飼い主です。飼い主に、「犬は犬らしくしていてよい」と気づいてもらい、愛犬を受け入れて、接し方を変えることで互いの関係性が健全になり、愛犬の問題行動が見られなくなるのです。
愛犬があなたのことを大好きになる
飛びつきや甘噛みは、"大好き" "遊ぼうよ"という意思表示。愛犬のいろいろなボディランゲージを聞いてあげてください。犬の行動を受け入れることで、人と犬はもっと仲良くなれます。愛犬があなたのことを大好きになる。そこに打算も嘘もありません。ただ、あなたを受け入れてくれますし、純粋な心との触れあいには、かけがえのない温もりがあります。太古から続いてきた、人と犬との友情を楽しむことができるのです。
子どもにとっての愛犬の存在
愛犬と暮らすことで、人は人とのつきあい方を学んでいる気がします。幼いお子様がいたら、ぜひ愛犬を迎えるといいと思います。言葉を覚える前の子どもには、動物と通じる特殊な力が備わっていると言われます。幼い頃から一緒に育った犬と子どもは、兄弟みたいな関係。その純粋なコミュニ―ションは、子どもたちの貴重な財産になっていると思います。
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- 犬らしく暮らせる住まい
- 外国の方をホームステイで受け入れるとしたら、その方のライフスタイルや宗教などを考慮して迎えますが、それと同じように、住まいを考えるといいでしょう。吠えたり、かじったり、走り回ったりするのが、犬です。愛犬が吠えてもいいような遮音性の高い住まいや、走りやすいカーペットの床など、できるだけ犬らしく暮らせるようにしてあげてください。
飼い主も愛犬も幸せに
「愛犬と暮らすのは、いろいろと大変だなぁ」と思うかもしれませんが、犬は犬らしいのが、いいのです。その無垢で愛らしい姿に飼い主は癒され、幸せな気持ちになります。飼い主も自然体でいることができて、やさしい気持ちでいられます。愛犬は、"大変さ"を、大きく上回る"幸せ"をもたらせてくれる存在なのです。
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profile
- 中西 典子さん
- Doggy Labo代表、ドッグトレーナー。家庭犬訓練所で認定ライセンスを取得した後、オーストラリアでドッグトレーニングアカデミーを修了。帰国後、愛犬の出張指導を行うDoggy Laboを立ち上げ、これまでに2000頭におよぶ愛犬の指導を行う。『愛犬の悩み解決BOOK』『犬のモンダイ行動の処方箋』など、ペットとの関係に悩む飼い主さんに向けた書籍を執筆するほか、定期的にセミナーを開講している。
関連サイト
doggylabo