トップ - HomeClub特集 / 住まいのイメージをふくらませる - 分譲住宅ならではの魅力や選び方のポイント
2025.05.30
── 近年の分譲住宅は、以前に比べてバリエーションが多彩になった印象です。その歴史的な背景を教えていただけますか。
池本 分譲住宅が生まれたのは戦後のことです。当時は圧倒的な住宅不足で、一定以上の性能を有した住まいをできるだけ早く数多く供給することが、国をあげて取り組むべき課題となっていました。そこで登場したのが分譲住宅です。当初の分譲住宅の代表格は、百棟以上の住宅が並ぶ郊外の大規模ニュータウンのようなスタイルでした。ですが1990年前後のバブル崩壊で住宅価格が大きく下落、また1985年の男女雇用機会均等法以降で共働きも増加基調となったことで、東京23区内といった都市部にも分譲住宅のニーズが増えていきます。そこでは狭小の土地に建てた三階建の"ペンシル住宅" といった、コストパフォーマンスを重視した分譲住宅も数多く建てられました。
── 土地面積を小さくすることで、価格帯を抑えたわけですね。
池本 それまで分譲住宅を供給していたのは、郊外を中心に大手デベロッパーやハウスメーカーが主でしたが、この頃から、地場の工務店や仲介会社も分譲事業に参入し、大手デベロッパーやハウスメーカーも郊外大規模から都市型小型にシフト。開発規模も4~5棟程度の小規模なタイプも増えるなど、バリエーションも豊富になっていきます。現在ではコストパフォーマンス重視から、「億」という価格帯の高級分譲住宅まで、実に幅広いタイプが販売されています。
── 世の中の指向が「量」から「質」へとシフトしたことや、ライフスタイルの広がりが、分譲住宅にバリエーションの広がりをもたらしてきたのですね。
中路 加えて、国土交通省によって2000年に施行された「住宅性能表示制度」も、分譲住宅にとっての大きな転機になりましたね。
── より性能を意識した分譲住宅も増えたということですね。
── 分譲住宅ならではの魅力とは何でしょうか。
池本 複数棟の住宅が並ぶことで美しいまちなみが形成されることですね。また、住宅の配置や間取りを工夫することで、お互いの視を気にせず暮らせる分譲住宅を提供しているメーカーもあります。これらは、土地を買って住まいを建てる方法や、一棟現場の建売住宅では得られないメリットです。中路 注文住宅のように、間取りや仕様の打ち合わせを何度も行う必要がないという、〝タイパ〟や〝コスパ〟にすぐれている点も魅力ですね。近年は消費者の審美眼が成熟し、自分にとって大切なコト、必要なモノをしっかり見極めている方が増えていますが、分譲住宅は、そうしたユーザー層にも人気です。
── 最後に選ぶためのポイントを教えていただけますか。
池本 ひとつは省エネ性能です。2025年4月に新築住宅の「省エネ基準適合」が義務化されました。2030年にはZEH水準の基準も引き上げられる見込みです。それ以降は、ZEH水準に満たな住まいが「既存不適格建築物」という扱いになる可能性が高くなります。当然、住まいの資産価値にも影響します。断熱性能の低いローコストな分譲住宅を否定するつもりはありませんが、買う際には、この点をしっかり理解して判断することをおすすめします。
中路 消費者のニーズの広がりとともに、そこに応える性能や工夫が、これからの分譲住宅には、さらに織り込まれていくでしょう。たとえば、家事の効率を向上させる動線や収納計画、防犯にも役立つ外構などもそのひとつですね。動線のよさなどは、実物を見ることで実感できます。住宅性能もメーカーによって違いがありますから、できれば物件を3件程度は比較して、自分たちに合った分譲住宅を選んでいただきたいですね。
── 本日はありがとうございました。