本クリニックを開設する医療法人社団静産会は、既に静岡県中部にある静岡市で産婦人科クリニックを開設しており、10年間でおよそ5000件もの出産に携わってきました。静岡県西部に位置する袋井市は、県内でも屈指の出生率の高さを誇る市であるにもかかわらず、出産施設がないため、市内の妊産婦は他の市町村での健診受診、出産を余儀なくされていました。この状況を変えるべく、同法人は分院開設を決意し、会計事務所を通じて不動産・建設会社に開業用地探しを打診しましたところ、ミサワホームから今回計画地の紹介を受けました。当初は建て貸し方式を希望していましたが、賃貸と購入の収支差や補助金の利用条件などを精査し、購入の上での計画となりました。
建築DATA | ||||
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敷地面積 |
1826m2 (552坪) | 延床面積 |
1392m2 (421坪) | |
構造・規模 | 重量鉄骨造 2階建 | 開設 | 2016年 |
「ブックカフェ」をメインテーマとして各所のデザインがなされています。スクエアでシンメトリーなファサードと落ち着いた色調が、街並みに調和しながらも品よく目立っています。受診時のストレスを軽減させる為に、緊張を和らげる工夫が、デザインからもみてとれます。駐車スペースは身重の体での運転に配慮し、余裕のあるレイアウトとし、車室を示す白線は二重線にすることで車室の中央への駐車をサポートしています。また、送迎車の動線を確保することで敷地のスムーズな入退場を可能にしています。さらに、出入り口の視野も十分確保し、敷地内での事故の発生をデザインで抑制しています。
院内は病院らしさを払拭するインテリアで、来院患者の緊張を和らげています。受付カウンターや造作家具のデザインにも心配りが感じ取れます。身重の患者さまの負担を軽くする為、受付カウンターは一部コンシェルジュタイプに。待合室の一角には、付き添いの男性用のスペースも。気まずさや手持ち無沙汰を軽減させるためにカウンター上に電源コンセントを設置。モバイル機器を充電しながら待ち時間を過ごせる配慮を施しています。子ども連れの患者さま向けに託児スペースも完備。専門のシッターを配置して、安心して受診できる環境を整えています。
診療スペースは、診察室から内診室・処置室・検査室とバックヤードでつながっており、スタッフ動線が効率的に計画されています。また、診察後の患者さまが中待合に出ずに内診室へ移動ができるよう引戸を設置。内診後は身支度を整えた後、診察室を通らずに待合室へ移動できる為、次の患者さまを待たせることなく診察することができます。外来用のトイレは待合室から少し離れたところにレイアウトすることで、プライバシーに配慮されています。個室内は温もりのあるインテリアで落ち着いた雰囲気です。尿検査用トイレは、診察前検査がスムーズに行なえるよう、中待合室までの動線上に2箇所設置。引戸の使い勝手で開閉できる折戸ドアは、開閉時の患者さまの負担を軽減しつつ、省スペース化を実現しています。
分娩室には最新の分娩支援システムが導入されています。陣痛発作時、間欠時、誕生時、産後の休息時など、それぞれの場面でより高いリラクゼーション効果が得られるよう考えられた、「音楽・呼吸法支援音・照明・映像」が、分娩監視装置と連動し、スムーズで感動的なお産を支援するシステムです。患者さまに、よりリラックスした状態でお産に臨んでいただけるだけでなく、その手を取るご家族の方の負担も軽減されます。帝王切開や分娩中の緊急対応を可能にする手術室は、分娩室の近くに設置。2室をつなぐ動線上に消毒準備室をレイアウトすることで、迅速な対応ができるようになっています。分娩室と手術室をつなぐホールは、陣痛室、回復室にも面していて、ストレッチャーが回転できるよう余裕のある空間となっています。
ナースステーションではフロアへの入退出が管理できるように、エレベーターホールに面してレイアウト。死角になるスペースはモニターを使って常時管理ができるようになっています。隣接に新生児室を配置することで、新生児の様子も同時に管理しています。取り違えや連れ去りがないよう、新生児室および授乳・沐浴室はナースステーションを経由する動線となっています。