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住まいとお金 コラムニスト
「親や祖父母から住宅資金の贈与を受ける場合は最大4,000万円※まで贈与税がゼロ」といったことを耳にすることがあります。これは住宅取得等資金の贈与税の非課税制度に加えて、相続時精算課税という制度を使った場合のことです。この相続時精算課税とはどのような制度なのか、注意点なども含めて見ていきます。
※ 2020年4月から2021年3月までの請負契約による贈与の場合
相続時精算課税制度は贈与税の原則である暦年課税制度との選択となります。この制度を選択すると、60歳以上の親又は祖父母から20歳以上の子や孫へ贈与した財産の額には、2,500万円までは贈与税が課税されず、2,500万円を超えた部分の額についても一律20%の税率となります。その贈与される財産が住宅取得用資金であるなら、贈与者である親又は祖父母が60歳未満であっても適用を受けることができます。ただし、一度この相続時精算課税制度を選択すると、以後、その贈与者との間の贈与については暦年課税制度に戻すことはできません。
相続時精算課税は、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度と一緒に使うことができます。 2020年4月から2021年3月までの請負契約による贈与であれば、最大1,500万円までの住宅取得用資金の非課税限度額が使え、それを超える金額の贈与ではさらに2,500万円まで相続時精算課税制度により贈与税がかからないことになります。つまり合計で最大4,000万円までの住宅取得用資金に対する贈与税がゼロということになるのです。
住宅取得用資金の非課税制度は、贈与された金額のうち非課税限度額内の贈与については以後税金の対象となることはありません。相続税とは関係なくなるので、贈与によって節税につながります。これに対し、相続時精算課税により贈与された金額は、贈与税がかからない2,500万円までの贈与額でも、相続時に相続財産として計算されるので、節税になるとは言えません。他の財産の額によっては相続税がかかることもあります。また、相続時精算課税は住宅取得用資金の非課税制度とは別の制度なので、非課税の添付書類とは別に、届出書や一定の書類の提出といった手続きが必要となります。さらに一度選択すると、暦年課税の110万円の基礎控除が使えません。つまり、選択した贈与者とのそれ以後の贈与については、毎年110万円以下の贈与でも申告が必要となります。
相続時精算課税は、相続人となるであろう子や孫に、先に財産を渡せるというメリットがあります。また、住宅取得用資金の非課税制度とも併用できるので、大きな出費となる住宅取得の時に、まとまった資金を援助できます。しかし、非課税制度とは違う制度なのでその延長のようには考えず、相続時精算課税のしくみや特徴を理解した上で、使うか使わないかを慎重に検討するようにしましょう。
文/ 池田 里美