interview
最高の自分でいるための
眠りとお風呂時間の話
眠りとお風呂の専門家
小林 麻利子さん
毎日の良質な睡眠が
体と心と行動を変えていく。
熟睡のスイッチとなる
お風呂時間の過ごし方について
小林さんに教えてもらおう
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- 睡眠不足でマイナスのループに
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20代の頃、営業の仕事をバリバリやっていました。いつも忙しくて、シャワー浴でしたし、睡眠時間を削る生活でした。そんな生活をしていたら、肌荒れは激しくなるし、電車の乗り間違いも多くて、すっかりマイナスのループに陥っていました。そして、お医者さんからは「自律神経失調症」と診断されました。
4日目の朝に大きな変化
3日間のお休みをいただいて「何か変えよう」と思って、アロマを嗅いでみたり、お風呂にゆっくり入ってみたりして、よく眠ってみたら、4日目の朝に世界が変わったように心地よく感じたんです。私のなかでは大きな事件でした。正直「なにが良かったのか」がわからなかったんです。それで大阪大学の自律神経を研究されている名誉教授に師事し、研究情報をお聞きしたり、論文をたくさん読んだりしました。そうしていくうちに睡眠の重要性に辿り着きました。
体と心と行動が変わっていきます
睡眠を改善することで、たくさんあった吹き出物がなくなり、肌の調子がよくなり、体重が8㎏減りました。眠りによって脳が修復されることで、イライラすることもなくなり、集中力が増して、仕事のパフォーマンスが上がりました。これはマンツーマンで生活指導している方にも、同様の変化を感じます。睡眠の質が良くなることで、体と心と行動が変わっていくんです。
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- 入浴が熟睡のスイッチに
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熟睡のために重要なアクションのひとつがお風呂時間です。入浴が熟睡のスイッチになります。入浴することで、体の内側の深部体温を上げていくと、脳が驚いて体温を下げていきます。その深部体温が急降下していくタイミングで、眠りにつくと良質な睡眠につながります。急降下と言っても、1時間くらいは空けても大丈夫です。
40℃のお風呂に15分浸かる
大事なポイントは深部体温の高低差を大きくすることです。40℃のお風呂に10分浸かれば、だいたい0.3℃、15分浸かれば0.5℃上がります。39℃以下だと深部体温が上がりませんし、42℃以上だと交感神経が刺激されてしまいます。但し、40℃ぴったりの湯温は難しいんです。特に冬は誤差が出やすいので、水温計を用意するといいですね。
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- スマホを見てもいいから15分
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リビンクでスマホを見てると、すぐに時間が過ぎてしまいますよね。スマホはお風呂に浸かって見てください(笑)。そうして、15分浸かることで、体温が勝手にコントロールされて眠くなります。スマホを見るデメリットよりも、眠くなるメリットの方が大きいんです。
お風呂時間を楽しんで
私にとって、お風呂は心地のいい場所です。熟睡のためのスイッチというのは、大前提です。そのうえでお仕事のアイデア出しやマインドフルネス(瞑想法)をしてみたり、好きなドラマを見たりもします。マインドフルネス入浴法で、ゆっくり深い呼吸を続けるとリラックスする副交感神経が優位になって、さらに睡眠の質が向上します。見たことのない世界に行けますね(笑)。
就寝するまでの時間も大切に
そして、就寝するまでの時間は交感神経を鎮めて、リラックスする時間にしています。あらかじめエアコンや加湿器などで寝室の環境を整えて、行動は優雅にゆったりと‥‥。頭皮マッサージしたり、アロマを楽しんだり‥‥。そうすることで副交感神経が刺激されるので、体表面の血流が良くなって、内側から保湿していくんです。今からの季節は保湿も大事ですね。
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- お子さまがいる方は分浴を
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3歳と6歳の子どもがいるんですけど、我が家は「分浴」にしています。子どもたちは早い時間にお風呂に入っています。私は裾をまくって足湯に浸かりながら、子どもの頭や体を洗ったり、その日の出来事を聞いたりしていますね。私は、子どもたちのお風呂時間に集中です。
速やかに寝室へ連れていきます
子どもは大人より、体重に対しての体表面積が大きいので、入浴時間は短くていいんです。5分程度の半身浴で十分ですね。子どもにとって照明の光は負担なので、お風呂のなかにいるときは脱衣所の灯りだけ、脱衣所にいるときはお風呂の灯りだけです。そうしてお風呂時間からリラックスモードにして、お風呂から出たらすぐに身支度。そして速やかに寝室へ連れていくと、すぐに眠ってくれます。
就寝時刻を習慣化
子どもにとっては就寝時刻が重要です。大学の研究では、就寝時刻と国語と算数の正答率に関係があり、規則正しい就寝時刻だと正解率が上がることがわかってます。未就学児は、遅くとも9時前には就寝。だから8時半には入浴。うまくいかない日もあるとは思うんですけど、目標として毎日チャレンジして基準をつくっていくことが大事です。
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- 最高の自分でいるために
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親にとっても子どもにとっても、眠りはとても大切です。良質な睡眠があれば、毎日の暮らしのパフォーマンスが上がります。心身ともに健やかになって、最高の自分でいられます。子どもで言えば、学力の向上やメンタルの安定‥‥行き渋りがなくなります。行き渋りの子どもは、就寝が遅くなって朝は起きられない、朝ごはんも食べたくない、行きたくない。これは子どもの性質ではなくて、眠りが問題なんです。
ニュートラルでストレスのない住まいに
眠りはすべてにつながっています。その眠りの質を底上げしてくれるのは、住まいです。そのためには快適な温度と湿度が重要です。ニュートラルでストレスがない状態がいいですね。お風呂時間の前後も寝室も、暑い寒いという刺激は不要にしたい‥‥具体的には、断熱性や気密性の優れた住まいが望ましいです。住まいという暮らしの土台が整っていると、毎日を楽しく過ごすことができますね。
撮影:ミサワホーム「CENTURY」瀬田展示場(東京都世田谷区)
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profile
- 小林 麻利子さん
- 眠りとお風呂の専門家、公認心理師、睡眠改善インストラクター。SleepLIVE(株)代表取締役。第32回日本睡眠環境学会奨励賞受賞。睡眠×メンタルケアのためのJCSP日本睡眠改善カウンセリングをオンラインで行う。マンションやホテルの睡眠空間コンサルティングや、SleepLIVE睡眠研究所にて睡眠環境の終夜睡眠研究も行う。近著には「小林式マインドフルネス入浴法(エムディエヌコーポレーション)」など。
関連サイト
SleepLIVEホームページ