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トップ - HomeClub特集 / ライフスタイルを考える - 睡眠は健康を維持する大切な要素住まいの工夫でより良い睡眠を

Special Interview

睡眠は健康を維持する大切な要素
住まいの工夫でより良い睡眠を

#健康・リラクゼーション#暮らしや趣味を楽しむ

寝不足の弊害や、より良い睡眠をとるための住まいづくりの工夫について、
睡眠学の世界的な権威である柳沢教授にお話を伺いました。

睡眠不足にはさまざまな弊害が

睡眠はヒトが健康に生きていくための大切な要素。誰もが経験的にわかっているはずなのに、実は日本は、先進国の中でも群を抜いて平均睡眠時間が少ない。成人の5人に1人が睡眠に悩みを抱えているというデータもあるという。

「必要な睡眠時間には個人差がありますが、成人なら7時間以上は必要です。8時間以上という方も少なくありません。ところが日本人の平均睡眠時間は6時間18分。国のガイドラインでは6時間以上とされていますが、それでは全然足りません。睡眠を十分とっているつもりの方でも、正確に測定すると実は不足しているというケースも多いですね。睡眠は自分が眠っている間のことですから、客観的に判断するのが、とても難しいんですね」

そう語るのは筑波大学の柳沢正史教授。睡眠を制御する仕組みを解明する上で極めて重要な神経伝達物質「オレキシン」を発見するなど、数多くの功績によってノーベル賞候補の呼び声も高い、睡眠の世界的な権威だ。

「寝不足にはさまざまな弊害があります。一つは脳や運動能力のパフォーマンスの低下。実際、国民1人当たりのGDPが高い国ほど、平均睡眠時間が長いという調査結果もあります。また、長期的な睡眠不足は、メンタルの不調やメタボリック症候群の原因になり、がんや認知症のリスクも高まります。実は子どもの成長にとっても睡眠は重要です。というのも、成長ホルモンは深い睡眠時に分泌されるんです。小学生では10時間、高校生で8時間半以上の平均睡眠時間が必要ですが、日本は子どもたちも圧倒的に睡眠不足です」

睡眠環境を整える4つの要素

睡眠不足の原因は、働き方などの社会構造をはじめ、個人ではどうすることもできないものも少なくない。それだけに、眠る場所である「住まい」に、より良い睡眠がとれる環境を整えておくことは、とても重要だ。
「そこで大切な要素は、光、音、室温、換気の4つです。なかでも『光』環境は最も大切な要素です」

寝室については、雨戸や遮光カーテンで「真っ暗」な状態にできることが理想と語る柳沢教授。
「睡眠の観点からいえば、日本の住まいは夜間明る過ぎます。これには根拠があって、その一つがメラトニンというホルモンです」

メラトニンは、深部体温を下げるなど、自然な眠りを誘う作用があることから、一般に「睡眠ホルモン」とも呼ばれている。
「ヒトの体には約24時間周期で体温やホルモンの分泌を調整する『体内時計』が備わっており、メラトニンも体内時計によってドライブされ、晩遅くから朝にかけて分泌されます。ですが、強い光が目に入ると、分泌が抑制されてしまいます。つまり眠りに入る状態が妨げられてしまうんですね。また、夕方以降に強い光が目に入ることで、体内時計も遅れてしまいます。体内時計が『まだ昼間だよ』と判断してしまう、いわゆるフェイズシフトが起こるんです。それもメラトニンを抑制する原因になります」

明るい夜では分泌が抑制されてしまうメラトニンだが、逆に日中は光をたくさん浴びておいた方が夜の分泌が増強されるという。
「メリハリのある光環境が大事です。たとえば調光機能付きの照明で、昼は明るく、夕刻以降は暗くするといった工夫も有効です」

廊下やトイレの明るさも、実は重要なポイント。明る過ぎる照明だと、トイレに起きたときに目が冴えて、なかなか睡眠状態に戻れなくなってしまうからだ。

続いては「音」環境。
「睡眠を妨げない静けさを確保すること。ただし、完全な無音状態は避けた方が良いです。無音状態だと、ちょっとしたノイズが逆に気になります。むしろ換気やエアコンの静かな風音などがある部屋の方が、他のノイズに対して耳を鈍感にしてくれて、睡眠の質が良くなるという話もあるんです」

「室温」環境についても伺った。
「どの程度の室温を快適に感じるかは個人差がありますが、冬なら20度以上、夏は25度前後に保ちたいですね。ポイントは快適な室温を朝まで保つこと。眠った頃にエアコンが切れるようタイマーをセットする方がいらっしゃいますが、これは良い睡眠を妨げる原因になります」

そして最後は「換気」だ。
「閉め切った寝室で眠っていると、室内の二酸化炭素濃度が上がり、睡眠の質が悪くなるという論文がたくさん発表されいます。換気は本当に重要。できるなら24時間の全館空調システムが理想です。費用はかかりますが、一生に関わる健康を保つうえで、私個人としては、すごく価値のあるシステムだと思っています」

ご自宅のリビング
 

ご自宅のリビングも、照明の明るさをぐっと抑えた光環境にしている

  

リラックスできる環境を

光、音、室温、換気。これらはすべて、住まいの新築の際に考えれば、より効果的な工夫ができる要素だ。住まいづくりは、睡眠環境を整える絶好の機会と語る柳沢教授。「他に一つ加えるなら、『緑』ですね。寝室も含め、住まいの中や外に植物が見えるようにしておくことです。人間は何十万年も森の中で育ってきた動物。『緑』は本質的にリラックスできるものなんですね。簡単な鉢植えでもいいから、生きた植物を置いておくことをおすすめします」

自宅のリビング(緑1)

自宅のリビング(緑2)
 

「緑」も大切にしている要素の一つ。
寝室はもちろん、住まいの中や外に植物が見えるようにしている。

  

人生100年時代だからこそ

こうして住まいの環境を整えることで、睡眠の「質」の大前提となる「量」を確保することができる。とはいえ先述したように、自分の睡眠状態を客観的に把握するのは意外と難しい。スマートウォッチのアプリが人気だが、それはあくまでも簡易的な計測。正確な計測には、病院で体にいくつものセンサーを取り付けて眠る、入院による終夜検査が必要だ。「専門医の不足や、正確に計測できる機会が少ないことも、日本人の深刻な睡眠障害の原因になっていると思います」 そんな状況を改善するため、柳沢教授は筑波大発のスタートアップベンチャー企業「S'UIMIN」を起業し、誰でも自宅で簡単に睡眠を測定できる「インソムノグラフ」を開発。これは睡眠時の脳波と血中酸素を測定し、結果をもとにした詳細な分析レポートが送られてくるというサービス。 利用者の中には、足りていると思っていた睡眠が足りていなかったと判明したり、逆に眠れないと悩む方が、実は健やかに眠れていることがわかり、その安心から不眠の訴えがなくなったというケースもあったそうだ。今は人生100年といわれる時代。長く健康でいるためにも、睡眠について改めて考えることが大切といえるだろう。

インソムノグラフ
 

音声ガイドに従うだけで、睡眠状態の病院レベルの計測が自宅でできる「インソムノグラフ」

  
脳波解析
 

眠っている間に計測した脳波状態は、IoTによる自動送信が可能。
AI技術で解析される。