interview
郊外暮らしで
アウトドア活動を楽しむ!
そっか共同代表
小野寺 愛さん
小野寺さんは、仲間と共に保育園「うみのこ」で
子どものなかにある生きる力を育む。
子育てを中心とした地域コミュニティーが広がり
子どもも大人もアウトドア活動を楽しんでいる。
そんな郊外暮らしの魅力を聞いた
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- 11年前に逗子へ移住
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「子育てを自然に近いところでしたいな」と思って、11年前に逗子に移住しました。そこで出会った「黒門とびうおクラブ」が素晴らしくて‥‥。小学校の放課後に海や森で遊ぶ活動なのですけど、子どもたちのやりたいことに寄り添いながら、大人も本気で遊ぶ場なんです。私も、長女が活動に参加するなかで、一緒にお手伝いしたり遊んだりしていて、どんどん仲間が増えていきました。
海と森で子どもたちを遊ばせたい
そのうち、「妹や弟たちも海で遊ばせたいね」と水曜の午後に集まる母たちが出てきました。最初は8人くらいだったかな。自主的に集まっていた活動が3年目を迎えたときに、親子50組になっていました。「もうここまできたら小学校まで、海と森で子育てしたい!」という母たちの想いから、2年前に認可外保育園施設「うみのこ」が始まりました。
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- 行き先は子どもたちと話しあっています
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「うみのこ」は、子どもが自由に遊ぶなかで、「生きる力」を育もうと思っている場所です。その日にどこに行くかを大人だけで決めず、子どもたちのなかにある想いを大事にしています。だから、朝の集いの時間には、園内から「海がいい!」「山がいい!」と元気な声が聞こえてきます。
みんな、健脚ぞろいです
週に一度、お弁当の日にはちょっと遠くまで出かけています。えび組かに組(年少・年中)のみんなは4キロくらい先の公園まで歩いて行って、さんざん鬼ごっことかをして、お山を経由して帰ってくるんです。年長のたこ組さんになると、逗子から海沿いに隣町の葉山まで歩き、標高200~300m前後の山を2つ3つ越えて、ときには藪をかき分けて、道なき道も選びながら帰ってきます。9時~15時まで、冒険しっぱなし。大人が限界を決めなければ、どこまでも行けそうです。
明日は筏で海に出ます
明日、たこ組さんは自分たちで作った筏で海に出るんです。本物の道具を使うことをテーマに、何を作ろうか子どもたちと話すなかで「筏で冒険したい!」という声が出て、制作がはじまりました。のこぎりやトンカチ、ロープワークを駆使して作った、自慢の筏です。みんなで近所の竹林から材料を取ってきて、筏もパドルも自作しました。持ち手も木や竹などそれぞれです。ちゃんと浮かぶかどうかは、浮かべてみないとわかりません(笑)。
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- 自分で考えて、柔軟に動く
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自然のなかにいると、状況が常に変化します。潮の満ち引きでも、風の様子でも、海の表情は変わります。予定通りにいかないことだらけなんですね。自分で考えて、みんなで話して、柔軟に動きながら、楽しむ。幼い時期の「生きる力」を育むのに、アウトドアは最高だと思っています。
6歳までは吸収スイッチがオン
6歳くらいまでの子どもたちは「吸収スイッチがいつでもオン」で、環境にあるものをすべて吸収します。だから、きっかけとなる場を用意してあげることは大事だけれど、大人が先回りして教える必要はそんなにないと思っています。幼いころに自然のなかで遊ぶのは生き物としての本能です。海や森は圧倒的に大きくて美しくて、命を生み出す場所。自然より偉大な学びの場はありませんね。
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- ママさんカヌー部を設立
- 6人乗りのアウトリガーカヌーを子どもたちが漕ぐのを見ていたら、母たちもやりたくなってきてしまって‥‥。ママさんカヌー部が生まれたんです。発足して5年くらいかな、今は母たちが子どもたちに教えられるようにもなってきました。大人も子どもにつられながら自然のなかに入って、この海、この土地のことを学ばせてもらっています。
味噌や醤油づくり、野菜の販売も
遊ぶことはもちろん、作ること、食べることも大切にしています。醤油や塩、味噌づくりやワカメの養殖、野菜栽培、町じゅうから夏みかんを集めて、クラフトビールにしてもらったり.‥‥。園の外にある小屋で野菜の販売もしています。
もったいない野菜基金
規格外が理由で捨てられてしまう野菜の買い取り運動をしていて、「もったいない野菜基金」と名づけて、みんなで支えています。捨てられてしまうはずだった野菜を、この4年間で5トンもレスキューしたんですよ。そんなふうに作ったり食べたりする活動のほとんどが、雑談から始まったもので、ここで子育てしている父や母やその関係から、自然と広がったものです。
みんなで楽しく活動しよう
衣食住も子育ても、サービスとして買える時代になりました。すべてをお金で得ることができるのは便利だけど、その分、関係性のなかで手作りしていた頃の幸せが削がれていく気がして‥‥。とはいえ、衣食住をできるだけ手作りするって、自分だけでやっていると苦しいじゃないですか。だから、「楽しくできるところから、みんなで遊びながらやろう」と。それに、みんなだと動きやすくていいですね。
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- 庭の一部は、トレラン部の畑
- 「子どもは3つの間、『時間』、『空間』、『仲間』で育つ」という言葉があります。時間がたっぷりあったコロナ禍では、「庭という "空間" があってよかった」と思いました。海にも公園にも行けなかった去年の春、小5の次女が友だち5人くらいと「トレラン部」を作ったんです。集合場所はうちの庭。「全員で走ると、良くないから」って自分たちで話し合って、走りに行く子どもと庭の畑を耕す子どもに分かれるという交代制にしていましたね。工夫して遊びながら、春に植えたさつまいもは、秋には、たっぷりの量を収穫できて、みんなで焚火して焼き芋を楽しみました。
サスティナブルネイティヴ
時間と空間と仲間が揃えば、どんな状況でも楽しく過ごすことができる。「子どもたちは自分で育つし、自分で動くんだな」ということを、再認識しましたね。コロナ禍で考える時間ができて、子どもたちはさらに熟した気がします。トレラン部以外にも、ビーチクリーンや笹ストローづくり、天然ゴムでできた消しゴムの路上販売など、近所にいる子どもたちの間では、いくつもの活動が始まっています。幼いころから海や森の近くで育って、自らが考えて動くサスティナブルネイティヴが生まれているのかな。
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