高齢社会が進展する日本、今後もより介護ニーズが高まることが見込まれています。また、介護人材の課題とあわせて高齢期の住まい不足も指摘されるところ。ミサワホームグループで介護・福祉関連のウエルネス事業を担う㈱マザアスで、昨年4月から新たに社長に就任した伊藤和宏社長に現状の取り組みや今後の方針、介護事業への思いなどお聞きしました。

代表取締役 社長執行役員
伊藤和宏
――伊藤社長は今までどんな仕事に取り組んでこられたのですか。
平成2年(1990)にミサワホームに新卒で入社しました。採用面接で介護の仕事がやりたいと言ったら採用担当者はびっくりしていました。丁度、介護付き有料老人ホーム「マザアス南柏」の企画が立ち上っていた頃で、それがなければ入社していなかったでしょう。入社から今まで介護畑一筋です。それこそ〝マザアス〟という社名を決めるところから関わってきました。
マザアスは、ミサワホームグループで介護サービス事業を担う会社として設立され、介護保険制度がはじまる前から「マザアス南柏」を運営してきました。
〝住まいを通じて生涯のおつきあい〟をコーポレートスローガンにしていたミサワホームにとって、「施設」ではなく高齢期の「住まい」として開設したものです。住宅メーカーが直営で介護事業に乗り出すのは初の試みでした。
当時から超高齢社会の到来が予想されていたとはいえ、介護事業会社をM&Aするでもなく、軽度の介護者を対象にするのでもない、まったくのゼロベースから看取りまで行う終の棲家として開設するわけですから、会社としてもその覚悟は並々ならぬものがあったと思います。現在と違って高齢者施設への社会の風あたりも強かった。近隣住民の説明に3年ほどかかり、やっとオープンしたものの入居者より職員の数が多いくらい。当時は個室で一時金4000万円+月額30万円と高額設定でしたから、払える方もなかなかいなかった。それでも東京からの入居者が少しずつ増え始め、稼働が安定するまでに5~6年はかかったと思います。今ではほぼ満室の状況で推移しています。
――昨年4月にマザアスの社長に就任されて1年ですが、現状はいかがですか。
マザアス南柏開設時から30年以上、マザアスの代表を務められた吉田肇前社長から非常に重責たるバトンを引き継いだと思っています。
現在、千葉・南柏を本部として、札幌、東京、愛知、三重で有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、ホスピス等、21施設の運営とデイサービスや訪問介護など在宅介護等、多種多様な事業を行っています。民間事業者としてできるサービスはほぼカバーできるまでになっています。
大事にしてきたのがサービス品質です。お客様はどんなことを望まれているのか、どんな環境なら安心して過ごしていただけるのか、試行錯誤を重ねながらたどり着いたのが「ノーと言わない」「100人いたら100通りの介護」でした。これをモットーに、お客様が実現したいことや夢などあらゆるご要望にもお応えしていきたい。ホーム内での音楽ライブはその一環で好評です。
多くの企業が介護事業に乗り出し、高齢期の住まいも多種多様です。そのなかで評価され高齢期の住まいとして選ばれ続けていくためにも、これまで培ってきたサービス品質に磨きをかけていくことが重要であり、私の使命であると思っています。
――介護現場の人材不足などが取りざたされていますが、課題についてはどうお考えですか。
人材不足はどの業界でも抱える課題ですが、こと介護職についても本当に深刻な状況です。人がなかなか集まらない採用難な状況は頭の痛いところです。
介護事業所には適正配置数が決まっていますから、それを満たすためにも採用強化とともに離職する人をいかに減らせるかが最重要課題です。そのためには働く人たちのやりがいや働きやすさ、満足度を高めることが大切だと思っています。
介護職というのは入居者をずっと見守りながら気づきを行動に移していくわけですから、頭は常にフル回転し、休む暇がありません。いかに現場でサポートし合えるかが大事で、「困った時に誰かが助けてくれる」「助けなければ」という仲間意識の醸成が大切です。そのためにも管理部門や介護部門といった垣根もなくしていきたいですし、マザアスという大きな組織の一員として、グループ内の各拠点の垣根もとりはずしていく構えです。
先日、札幌の事業所で人手が不足していた際には愛知・名古屋から職員が短期間ヘルプに飛びました。時には私も現場に入ることもあります。マザアス代表に着任する前に10年ほど名古屋の拠点のテコ入れでトップを務めましたが、時には介護服に着替えて現場に入っていました。
こうした姿がお客様やご家族の評価につながり、職員みんなで力を合わせようという気持ちでひとつになれたのではないかと思っています。収益の面で大幅に改善できたのもこのチームワークが肝だったと確信しています。
――ミサワホームグループ間の「共創」も始まりました。
はい。長年の事業展開で培った実績とノウハウを活かして、ミサワホームのストック事業など他事業にも活かしていく取り組みが始まっています。将来に備えた早めのリフォームを含むソリューション提案「ミサワウエルネスPLAN」や、名古屋と西五反田の拠点での介護研修は少人数で介護現場での体験と座学を組み合わせたプログラムとなっています。短期集中型にはなりますが、介護現場で触れて得た知識は思っている以上に仕事の武器になると思います。住宅やリフォームの接客でのトークや提案などにうまく活用していってほしいと思います。
――今後の抱負がありましたら。
経営面からいえば人件費や食費などコスト上昇のなかで、どうコストを抑え収益を上げていくかが課題です。例えば外注している食事や建物管理を内製化することも考えていかねばなりません。
また、職員がいきいきできる環境づくりを最重点課題に取り組みたい。将来なりたい職業で「介護士」が上位にランクインするような世界にしていきたい。介護総合産業のなかでリーディングカンパニーになっていくのが夢です。
