資産活用のために時代の変化を掴むことが大切です。
相続税増税で資産の考え方は大きく変わった。
平成27年1月1日からの相続税増税の影響で、これまで相続税とは無縁だった人が課税対象者になっています。国税庁が発表している相続税申告状況を見ても、対象者の増加は想像を大きく超えています。
もうご存知のことだと思いますが、おさらいをしておくと、増税前の基礎控除は「5000万円+法定相続人の数×1000万円」。これが「3000万円+法定相続人の数×600万円」に引き下げられました。例えば、配偶者である妻と子ども2人のケースでは、増税前では基礎控除が8000万円でしたが、増税後では4800万円まで減額されてしまいました。
この結果、従来であれば相続税がかからなかったケースでも、相続税が発生する場合が増えたのです。この相続税増税の対策として注目されたのが、賃貸住宅経営です。相続財産の評価は、現金で保有しているより、土地・建物にした方が2〜3割ほど低くなるうえに、賃貸住宅を建築すれば、そこからさらに3割程度下げることが可能になるからです。
賃貸住宅の着工戸数は、相続税増税が決まった後から大きく増えており、この傾向はまだ続いています。今までのように不動産を含めた資産を所有しているだけではメリットが少なくなり、相続を考えて活用する必要があることを、多くの方が考えるようになりました。積極的に、そして計画的に資産を活用すること。そのためには常に新しい税制を理解しておくことが大切です。
所有するだけの資産から活用を考える時代へ。
従来、土地を多く所有されている方の相続対策として、所有する土地の一部を、将来売却しやすくするために、駐車場などの更地に近い形で保有するケースが多くありました。しかし現在は、収益が見込める中古賃貸物件の売買事例が数多く存在し、相続税評価額を下げることを考えても、更地にしておくよりメリットが高くなるケースがあります。
また事業用ローンの金利も低く、綿密かつ緻密な計画を立てた収益物件であれば融資を受けやすいという現状もあり、積極的な不動産の活用に有利な条件が揃っています。相続が発生するまでは収入源として活用し、相続時には納税資金として活用できる可能性が高まっているのです。
収益物件が売買しやすい環境になっている要因のひとつは、株価上昇など、金融市場の活性化もあり、現金資産を収益不動産に変えたいという富裕層が増えたことや、海外から収益不動産に投資されていることがあげられます。近年、相続税増税による相続の相談が落ち着いてきた頃から、収益物件の売買に関わる相談件数が増加している傾向にあります。
これからは、『将来売却しやすい』賃貸住宅を建てることも考えておく必要があるでしょう。賃貸住宅の市場ニーズに合った間取り設定や、デザインの品質、そして当然、省エネ性、耐震性、耐久性といった住宅の性能を高めることで、常に満室経営を目指す。
それが将来の不動産の価値を決めると言えます。
生産緑地の法改正や広大地評価などの税制改正。
他にも考えておきたい問題がいつくかあります。ひとつは生産緑地の問題。生産緑地の指定を受けている土地が、2022年にその指定が解除され、多くが宅地として売りに出されるのではないかという問題です。土地の大量供給が一時期に行われると、需給バランスが崩れ、地価が大幅に下がるのではないか、と懸念されています。さらに広大地評価も改正されます。
平成30年度税制改正大綱において、現行の面積に応じて比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すことになりました。この改正によって、特に形状の良い広大地の評価額が大きく上がると見込まれ、増税につながるケースが多くなると考えられます。このように土地に関する法改正などで常に状況が変わっていきます。
その状況に合わせて、相続税がどれくらい発生するのか、そのために対策はどのようにすればいいのかを、税理士などに相談しながら、適切な対応方法を常に考え直す必要があるでしょう。まずはプロに相談しながら、ご家族で話し合うことが大切です。
消費税アップが間近。早めの検討が必要です。
今、日本は増税への流れが強くなっています。 相続税増税を皮切りに、消費税が8%から10%、その翌年には所得税の増税が予定されています。所得税に関しては、収入が多い方に関して増税される傾向にあります。そんな中、法人税については減税される傾向にありますので、賃貸経営の法人化なども検討する必要があるでしょう。消費税増税は、賃貸住宅経営に大きく影響します。次ページで詳しく説明します。