interview
手仕事のガラスの器で
ゆっくりとした時間を
ガラス作家
新田 佳子さん
ガラスの器があると
食卓が涼しげな雰囲気に。
これからの季節に活躍する
ガラスの器の魅力を
ガラス作家の新田さんに伺った
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- 透明と白が美しいガラスの器を
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私がつくる器は、透明なガラスに白を描いているのが特徴で、白く見えている部分はすりガラスです。サンドブラストという手法で、本体のガラスを吹いて形をつくった後に、ボンドでマスキングして砂を吹きつけると、カバーした部分は透明なままで、そうでない部分は砂が当たって白いすりガラスになるという単純なことなんですけど‥‥。学生のころに、ガラスに模様を描き加えることで、その見え方が変わることが楽しくなって‥‥その後も、ひたすら描き続けています。
すべてのプロセスが手仕事です
ガラスをひとつずつ吹いて、形を整えて、ひとつひとつにフリーハンドで模様を描いています。1メートル以上の吹き棒を振り回すので、すべての形に差異がありますし、すべての模様に揺らぎがあります。手を動かしてつくっているので、意識せずとも温かみが出ます。展示会でつくり方を聞かれるんですけど、その手仕事のプロセスを話すと、みなさん「へぇー」と驚かれますね(笑)。
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- 冷茶がきれいに見えるグラス
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たとえば「senのグラス」は、奈良の器屋さんから「冷茶グラスが欲しい」とオーダーをいただいて、とても長い間つくり続けています。透明なところと白のところがあいまって霞む感じで、お茶がきれいに見えるんです。これは、何度もつくって使ってみて、持った時の触り心地や口当たりがいい立ち上がりを考えました。
ひとつひとつの形もさまざま
実は「senのグラス」は形がさまざまです。これは、ガラスの柔らかい表情を出したくて、ピンブローという手法を使っています。蒸気でふくらますので形が揺らぐんです。その揺らいだ形がやさしくて、自由で、やさしい佇まいになっています。展示会で選ばれている方には「形はそれぞれ違うので、手になじむグラスを探してくださいね」とお伝えしています。
氷が当たる音もやさしい
この形だからだと思うんですけど「氷が当たる音もいい」と言われたりします。風鈴を逆さにしたような形で、グラスのなかで音が響きます。このグラスで、日本酒やワインを飲む方もいて、グラスのなかに香りが残るので、さらにおいしく感じるのだと思います。
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- きっと目でも食べるんです
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ガラスは境界があいまいで、見えることで楽しくなります。先ほどお話しした「senのグラス」をデザートカップとして使う方もいらっしゃって、果物やヨーグルト、アイスクリームを入れて食べてくださっています。上からだけでなく、横から見ても楽しい。みなさん、きっと目でも食べているんだと思います。
もっとガラスの器を暮らしのなかに
ガラスの器を食器棚の最前列に置いていただいて、いつも使っていただいている状態が理想です。食卓だけではなくて、もっとガラスを暮らしのなかで使ってほしい。豆皿にアクセサリーをディスプレイする方もいますし、ガラスのペーパーウェイトも人気です。私もたまに机の上にあるペーパーウェイトを触って癒されています。
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- 淡々とした日常から
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毎日が手作業の繰り返しなので、日常は淡々としています。ちょっと先に楽しみをつくって、それまでは集中の繰り返しです。9時から仕事を始めて、お昼になったらご飯を食べて13時から仕事再開、15時になったらコーヒータイム。そして仕事再開。コーヒーはいつも豆から挽いているんですけど、そうしたゆっくりとした時間を挟むと気持ちが静まって、また仕事に集中できます。
ちゃんと寝て、ちゃんと起きて
若いころは、夜中まで作業したりもしていましたが、無理をすると確実に自分に返ってくることを知ったので、淡々と過ごすほうが、気持ちも身体も楽だということが身に染みました。無理はしないです。ちゃんと寝て、ちゃんと起きて‥‥。そんな日常から、私のガラスの器は生まれています。
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profile
- 新田 佳子さん
- 1976年、大阪生まれ。倉敷芸術科学大学 芸術学部工芸学科ガラスコース卒業、TAIZOGLASS STUDIO勤務、Studio Re-Light勤務を経て、ガラス作家として独立。雪や氷を連想させる繊細な白いガラスが人気。2023年9月12日から銀座松屋の手仕事直売所に出品予定。
関連サイト
新田佳子ホームページ