自然素材は、触れた感触がよいだけでなく、座る、寝転がるといった日本人の生活習慣によく馴染むものです。木や畳の香りや感触に、落ち着いたりほっとしたりするのは、そのためなのでしょう。自然素材は健康面で安心なだけでなく、役割が終わると土に戻せたり、焼却時にも有害ガスを発生させないなど、環境負荷の低減にもつながります。また、時を経るごとに深まる味わいを楽しめるのも自然素材ならではの魅力です。
壁を、湿気を吸収しないビニルクロスから、調湿性の高い漆喰や珪藻土の塗り壁に、また、床材を、合板フローリングから無垢材フローリングに変更するだけでも、室内の湿度をコントロールすることが可能になります。適材適所に自然素材を活かせるよう、それぞれの特徴を知っておきましょう。
合板に使われる接着剤には化学物質による有毒性が、少なからず心配されます。一枚板の無垢材は、純粋な天然木材なので、ホルムアルデヒドを放散する心配がありません。強度も高く、長持ちもします。香りに含まれるフィトンチッド(※)は、ダニの繁殖などを抑えます。また、高い断熱性や吸湿性も健康な住まいには欠かせません。
【使用例】サワラ、檜、杉、松がよく使われます。壁やフローリングのほか、強度のある檜は柱や土台に、強くて軽い松は梁などに用いられます。水に強いサワラは浴室にも使えます。
(※)フィトンチッド 植物が虫を寄せつけないために出す揮発性の物質ですが、人にとっては心地よくリラックスさせてくれる香りです。
使用済みの紙や古新聞・古雑誌などをすき直して作った再生紙をはじめ、紙を素材とするクロスは、有害物質をほとんど含みません。また、焼却時にも有害ガスを発生させないため、地球環境への配慮という点でも優れています。
【使用例】調湿効果と吸音性がある紙は、天井や壁への使用が向いています。紙を天井に用いることで、照明の光をやわらかい雰囲気にする効果も。
植物のプランクトンが堆積してできた珪藻土は、無数の穴があいている超多孔質のため、通気性に優れ、脱臭効果も発揮します。さらに、調湿機能によりダニやカビ、結露を防ぐ効果もあります。天然素材100%なので、土に戻すことができ、環境負荷の低減につながります。
【使用例】主に塗り壁に用いられます。
健康に影響する物質を含んでいないほか、独特の調湿効果でカビやダニなどを防ぐため、健康を考えたリフォームには最適です。またウールは土中の微生物で容易に分解されるため、環境負荷を抑える性質も備えています。
【使用例】断熱性に優れているので、壁内部の素材として用いられます。天井や床の断熱材としても。
石膏は、海底の沈殿物が化学反応を起こして生まれます。リサイクル可能な素材で、原料生成の過程でも地球環境への害を最小限に抑えます。防火・耐熱・耐久性がある石膏ボードは、焼き石膏にノコギリくずなどを混ぜて水で練り厚紙にはさんで板にしているため、接着剤を使用しておらず、有害物質を発生させません。
【使用例】石膏ボードとして壁材、天井材、床材などに活用されています。
火山国・日本で無限大にある火山灰は、資源の有効利用の典型とも言えます。また多孔質の火山灰が持つ調湿機能は、結露の防止やカビ・ダニ対策に効果的です。
【使用例】可視光型光触媒効果により、ホルムアルデヒドやアンモニア臭などを吸着分解する性能を付加し、壁や天井の仕上げ材として活用されています。
炭には、室内を快適にする作用があります。化学物質から出る有毒なガスや悪臭、あるいは電磁波を吸着・吸収したり、有害な酸化粒子を中和します。このほか、遠赤外線が室温度・湿度を調整するなど、空気を快適に整えます。